死んだ子供と語り合えるという地蔵堂の住職を語り手に、参拝する親たちの一夜を記録。土俗信仰の力強さを表現する。◆青森県北津軽郡金木町川倉にある「賽の川原地蔵堂」には、子を亡くした親たちが寄進した手作りの地蔵仏約一千体がまつられている。この地蔵堂にお参りすることによって死んだ子どもと対面でき、巫女（イタコ）によって霊降された子どもの声が聞けるという。親たちは夜を徹して幼い仏を遊ばせ共通の意識で交流する。

２８年を経てアメリカから戻ってきた原爆被災資料。２万点をこえる資料が広島で一般公開され、１０日間に約８万人の人々が訪れた。原爆の災禍によって失ったものを見いだそうとする人々を追う。◆資料の写真の中に自分を見いだす人、写っている子供の後ろ姿をわが子と信じて、隣に写っている人を探し求め、見つけて消息を尋ねるがはかばかしい答えは得られなかった老夫婦など、あのいまわしい日が人々に影を落としている。

岩手県平泉町に伝わる民俗芸能を通して、藤原氏三代が遺した文化とそれらを継承する地元の人々との関わりを、四季の移り変わりとともに紹介する。毎年５月の初め、中尊寺と毛越寺で行われる「藤原まつり」には、多くの観光客が訪れる。呼び物のひとつである能『秀衡』は、中尊寺参内の能楽堂でしか演じられない。加えて、地唄いを地元町民が、舞いと囃子を中尊寺の僧が受け持つという、独特の上演形態を持っている。

形無く、声無く、始終なく、時空を超えて存在し、森羅万象の根源となる絶対の究極なるもの、その言い難い相を「玄」と呼ぶ。「玄」、その姿を具体化しようとするのが墨の心であり、墨の法だが、この作品は墨のもつ諸要素をモンタージュすることによって「玄」の視聴覚化を試みようというもの。名筆はじめ、水墨画、念仏講、各地の風物、また日本舞踊がオブジェ風に登場する。

東京・東北沢で鮮魚店を営む母娘を中心に商店街の人々が繰り広げる騒動を描く。「ありがとう」は設定を変えながら４部まで制作された人気ドラマシリーズ。（第３シリーズ／１９７３年４月２６日〜１９７４年４月２５日放送）◆第一回。老舗魚屋「魚平」の五代目・志村愛（水前寺清子）は、一人娘で元気に働くしっかり者。愛と母親・歌（山岡久乃）は親類を頼って、下町の深川から東北沢の四軒市場へ越して来た。母娘は引越し蕎麦を持ってご近所に挨拶まわりをするが、商店街は一癖ありそうな人たちばかり。向かいの「八百一」の長男・寺川元気（石坂浩二）は力仕事が苦手で、雑誌社で装丁デザインの仕事をしているという。

農薬公害が叫ばれて久しい。しかし、農薬を使わなければ農業生産は激減し、農民の生活が成り立たないという矛盾にぶつかる。はたして農薬を使わない農業が可能なのだろうか。番組では、化学肥料を使わない有機農法による米づくりに取り組んでいる奈良県五條市の井上秀信さんの、田植えから刈り入れまでの１年間を長期取材し、化学肥料と農薬に依存する近代化農業との比較の中で、この問題を考える。

時代を昭和４６年暮れから４９年３月までに設定し、ある庶民の家族５人がさまざまな試練に直面しつつ、それらを乗り越えて生きていく姿を、函館、金沢、横浜、宇和島を舞台に描く。この家族のさすらいを通して、現代において家族とは何かを問うオリジナル作品。作：楠田芳子。ＮＨＫ連続テレビ小説第１３作。（１９７３年４月２日～１９７４年３月３０日放送）

世界中の人々の暮らしぶりや自然を紹介する、海外取材ドキュメンタリーシリーズ。全米写真家協会プロフェッショナル最高賞を受賞し、国際的にも評価された。（１９６６年１０月９日～１９９０年９月１６日、全１０００回）◆６年来の大干ばつにより、一層凄滄としたサハラ砂漠で、１８０日間２万キロを走破し、干ばつとそこに住む人々の生活を取材した。ニジェール共和国で岩山のアイール山地に住むトアレグ族のテミアン集落では、ラクダを連れ、水を求めて南下した男達の留守を守り、女達と子ども達が羊や山羊の世話をする。娘の中に続発している精神病治療のため、タムタムの踊りが始まる。動物市場でラクダを売り、家路に着くキャラバンの実態も記録する。