実年夫婦のマンネリ化した愛情の危機と回復を、軽妙でユーモアに富んだ含蓄の深いせりふに託し、シチュエーションドラマの新境地を開いた作品。（１９８６年２月１５日終了、全６回）◆東京下町。佃大橋のたもとで磯島周吉（鶴田浩二）はシャツ職人として半生をすごしてきた。１枚１枚、オーダーの手縫いで、日本一の職人というプライドがある。だがそのガンコさについに堪忍袋の緒が切れた女房・由子（八千草薫）と息子の秀一（佐藤浩市）は３カ月前に家を出た。以来、弟子の昭夫（平田満）が周吉の面倒を見てきたが、これまた息が詰まって近くのアパートを借りた。口には出さないが周吉は見捨てられた思いだ。そこへ秀一がさらに問題を持ち込んでくる。

近代化の中で消えつつある伝統技能、今も脈々と受け継がれている職人技術を横浜市内各地に訪ね、手作りの工程や職人さんたちへのインタビューを交え、年一番組という地道なペースで記録しているシリーズ。◆横浜・元町は昔から西洋家具の店が並び、家具職人たちは今も職人芸を伝える。１００年使える家具づくりを目指して伝統の中で磨かれ続けた見事な技術を紹介する。

川崎の店で働く人のいい風俗嬢・モモ子が巻き込まれる事件をコミカルに描くシリーズ第４作。この回は仕事を辞めたモモ子が、昔の仲間を訪ねた温泉街で騒ぎに巻き込まれる。◆今日も頑張って働くモモ子（竹下景子）のところへ小野刑事（蟹江敬三）が聞き込みにやってきた。羽振りのよかった学生社長・浦上（三浦浩一）が事業に失敗、借金の取り立て屋を殺して逃亡中だという。同業の幸子（かとうかずこ）が浦上の愛人だったことがあるので、モモ子に消息を尋ねに来たのだ。しかし幸子は足を洗って伊香保の温泉街で旅館の女将におさまっている。さてモモ子は１８歳未満の客に取ったことで店をクビになり、川崎を去ることに決めた。あてのないモモ子は幸子を訪ね、迷惑顔にも気づかず旅館に逗留する。

明治維新に出発した近代日本は、アジアの大国になりながら、昭和で敗戦の破局に至った。作家・司馬遼太郎氏がその昭和へ至る歴史を、明治・幕末まで遡って語るシリーズ。（全１２回）◆江戸期、日本のリアリズムは、独特の発達をとげる。また、儒学はアジアには珍しい清廉な官吏の伝統をつくっていく。しかし、儒教倫理の束縛の強い中国、朝鮮は停滞を続けた。アジアとは一体何か。第２回では、福沢諭吉の“脱亜論”の新しい読み取りを通し、私益と公益が複雑にからんだアジアの実像に迫る。

歌舞伎十八番のうち「鳴神」を例に、女方の演技がどのように練り上げられていくかを紹介する。◆「鳴神」で“雲の絶間姫”の役を演じている五代目中村時蔵さんは、人気若女方の一人。四代目時蔵を父に生まれ、４歳で初舞台。１６〜１７歳の頃から本格的に女方を演ずるようになったという。◆「女性を真似しても（女方の）色気は出ない。女性はなぜやさしいのか、なぜ美しいのかということの根本にあるものを考え、それを誇張して表現しないと色気のある女性を演じることはできない」と時蔵さんは語る。

　１９８７年４月１日に予定される国鉄民営化を前に問題点を分析する。国鉄再建管理委員会の加藤寛慶応大学教授と弁護士で国鉄の分割民営化に反対する牛久保秀樹氏の対談を軸に、国鉄職員間の先行き不安、地方ローカル線の廃業問題などその実情を探る。

幕末の動乱期、藩民挙げて討幕軍と戦った会津藩の人々を描く。会津の藩士やその家族の悲劇、志に燃えて若い命を散らした少年たちの青春群像。２夜連続。◆１８６２年（文久２）、会津藩主・松平容保（風間杜夫）に京都守護職の命が下った。国家老・西郷頼母（里見浩太朗）は、京都の動乱に巻き込まれることをおそれて辞退するように進言する。しかし、容保はこれを受けた。藩士千人を率いて上洛、尊皇攘夷派を排除して勢力を強める。しかし孝明天皇の死によって討幕が盛り返し、佐幕派の会津藩は追い詰められていく。

世界に４つしかない曜変天目茶碗は、偶然が生み出した炎の奇跡とも言える。作家・宮尾登美子氏が、大阪・京都・東京に三つの曜変天目茶碗を訪ね、その美を探る。◆曜変の「曜」には光り輝くという意味があり、窯の中の温度変化や炎の加減によって生じた星絞に光線が当たると神秘的に光り輝くことからそう呼ばれる。中国福建省で１３世紀頃に焼かれたもので、４つすべてが日本にあり、３つまでが国宝に指定されている。番組では特に自然光の射しこむ中で茶碗を写し、新しい角度からその美をとらえる。