太平洋戦争末期、上野動物園で３頭のゾウを含む多くの猛獣が薬殺・絶食などで処分された事件は有名である。「空襲が激化したため住民保護の目的で処分された」というのが理由であるが、本当にそれほど差し迫った状況にあったのだろうか。ＮＨＫ特集としては初めて子供向けの童話という形式を取りながら、当時の園長代理・福田三郎氏の日記をもとに、行政の圧力で次々と猛獣が殺されていった経過や、戦時下の人と動物の心の交流を描く。

現代を生きる昭和１ケタ生まれの男とその家族が、突如１９４４年（昭和１９）にタイムスリップし、太平洋戦争中の市民として生活するという異常な体験の物語。原作・脚本：山田太一。◆昭和５７年の現代。東京郊外に住む脚本家・清水要治（細川俊之）は、幼なじみの友人・宮島敏夫（なべおさみ）と３０数年ぶりに再会した。そして数日後の朝、起床した清水が自宅の雨戸を開けると、周囲の光景が一変していた。そこには出征兵士を見送る人の群れがあり、時局講演のポスターには「昭和１９年６月」と書かれていた。

聴覚障害児のかるた指導に情熱を傾ける若い教師を追ったドキュメンタリー。◆６年連続「小倉百人一首クイーン戦」に優勝し、永世クイーンになった堀沢久美子さん（２２歳）は、大学を卒業すると山口市の県立ろう学校に就職。教壇に立つ一方、耳の不自由な子どもたちにかるたの指導を始めた。“日本一の先生”に恵まれ、子どもたちの練習にも熱が入る。

管理・受験の体制に組み込まれた中学生。その“少年の日々”が抱えている問題や悩みを、貫八先生と生徒が共に切りひらいていく、卒業までの１年間を描いたドラマ。（１９８２年４月９日〜１９８３年３月２５日放送、全４４回）◆３年Ｂ組を担任することになった貫八。担任が替わって学校や教師への不信を募らせる生徒たちだったが、貫八が初めての授業で全員の顔と名前を覚えてきたのには驚く。最初の授業は無事終わった。その夜、貫八はクラスの中でもつっぱっている生徒が金を巻き上げられている現場にでくわす。

深刻化する老人問題を、ひとりの医師と老人を抱える主婦の目を通して描く。原作：早川一光「わらじ医者京日記」より。（１９８２年７月４日〜８月１日放送、全５回）◆第二回。京都・西陣の一角にある病院に勤務する医師・安川（田村高廣）は、地域の人たちを診察し続けて３０年。最近は老人ばかりが訪れる。安川は老人の痴呆は心が満されない不安が原因のことが多いのでその不安をとり除くよう家族に説く。石山のトクおばあさん（大路三千緒）の場合も、西陣の老舗の主婦の座を嫁に奪われると思っての不安が高じたものだった。

夫に先立たれたあと、姑に仕える一人の女性を主人公に、主婦の幸せ、本当の自由とは何かを問いかけるホーム・ドラマ。水木洋子の書き下ろし。（１９８１年１１月１０日～１９８２年４月２０日放送、全２４回）◆四国の離れ小島の少年施設を見学した権（小野寺昭）は、帰宅後、福山道場を四国の施設と同じようなものにつくり直したいといい出した。協力を求められたミツル（星野知子）は権の考えに賛同、早速、こま子（池内淳子）に警察官を辞める決心を告げた。

１９８２年（昭５７）夏、日本列島は記録的な集中豪雨にみまわれた。７月２３日長崎市を豪雨が襲い、さらに台風１３号が追い討ちをかけるように上陸。全国各地で大規模な山崩れが続発し、死者行方不明者は４２４人に達した。一体、何が生死を分けたのか、災害に隠された事実は何か。取材班は科学的な証明実験を基礎に、奈良県西吉野村の大崩壊、東海道本線富士川鉄橋流失事故を分析。防災上のさまざまな教訓を被災地の事実から積み上げていく。

東京郊外の個人病院を舞台に、理想主義の院長と現実主義の医師との対立を中心にした人間模様を描くヒューマンドラマ。（１９８２年１１月２日〜１９８３年５月３日放送）◆第一回。東京狛江の多摩川べりに程近い野々村病院。院長の野々村隆之（宇津井健）の帰国を前にして、あちこちでヒソヒソ話が交わされている。中には隆之の帰りを待ちわびる看護師長の四方直子（山岡久乃）の姿もあった。野々村病院は隆之の父が２０年前に開業した病院だったが、その父が３年前に急逝。アメリカの病院に勤務中だった隆之は、自分の帰国まで病院経営を副院長格の木井省三（津川雅彦）に託した。しかし木井は権力を手中にし、儲け優先の経営を行っていた。そうとは知らずに隆之は成田に向かうジャンボの機中。ところが、その機内で女性客が陣痛を訴えた。隆之は乗り合わせていたナースの倉片千恵（夏目雅子）と新米医師の月波恭一（大和田獏）の協力を得て、無事に未熟児を取り上げる。成田に着いた隆之は千恵たちと別れ、懐かしい野々村病院へと向かった。隆之のひとり娘・梨花（柏原芳恵）は、父に早く会おうと急いで帰宅する。