「食」をめぐる営みは、最も根源的な「文化」であり、それぞれの民族がそれぞれの風土の中で何千年にもわたって練り上げた知恵の結晶である。このシリーズは、人間が有史以来“何をどのように食べてきたか”を世界各地の食生活と風土の中に探り、食べものがいかに民族の精神を形づくり、文明の質を規定してきたかを明らかにし、飽食の日本人に「食」のあり方を問いかける。◆第２集は「パン」。オーストリアの山村を舞台に、今もつづく自家製ライ麦パンづくりを取材し、ヨーロッパ人の精神を支えるパンの文化を考える。

第四高等学校物理化学教室は、西洋技術の導入を急務とする明治政府の意気込みを背景に、明治２３年、金沢に竣工した。教室は階段式という斬新な構造だった。また、同じく移築保存されている武術道場「無声堂」は、明治にはじまる洋風道場建築の貴重なもので、道場内には剣道場と柔道場が併置され、弓道場もある。６３年間の歳月に、１万２千人をこえる四高健児を世に送り出した。旧制学校生の青春を、二つの建物から回想する。◆第四高等学校物理化学教室・無声堂

日本社会のなかで自らの生き方を求める韓国人高校生、年老いた在日１世と３世の間の溝、指紋押捺にゆれる彼らの複雑な心理の葛藤を浮き彫りにしていくドキュメンタリー。◆１６歳になって、初めて外国人登録を迎えた在日３世の高校生。韓国語は話せない。「日本に生れ育った僕が、なぜ犯罪者のように指紋をとられるのか。差別の糸を僕らの世代でたち切りたい」と彼はいう。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８０年１０月７日・１１日、全５回）◆第５回は「鮭」。ふらりと家を出たまま戻らず、４年ぶりに帰って来た男を、妻は「ごはんは済んだのですか」とだけ云って迎えた。男の留守中に飼っていた、男と同じ名の犬をそっと逃がす妻に「また飼えばいいさ」と男は云うが、妻は何も分かっていないと怒りだす。言葉を失った男は、庭の花を一輪妻の襟にさしてやり、倒れる。男が死んで妻は「鮭みたいに一生懸命帰って来たのね」と呟く。

四国の小さな田舎町から眺めた庶民の昭和史を温かくつづったドラマシリーズ、第一章・全７回の第４回。（１９８５年４月１３日〜５月２５日放送）◆ハミルトン（リチャード・キャリー）と結婚してアメリカに行くという文子（佐藤友美）を、井原（小林亜星）は必死に説得。ウメ（沢村貞子）も彼女を引き止める。結局、文子はふたりの言葉ではなく赤ん坊ふびんさにひかれてハミルトンと別れ、井原と結婚するのだった。その夏、第１回中等野球大会の最中に昭一（中条静夫）とフサ子（藤村志保）の長男・英太郎（小倉一郎）が東京から帰ってくる。しかも突飛な格好のモダンガール・ミチ（渡辺えり子）を連れてきたため、静子（桃井かおり）をはじめ一同は目を見張る。

南のカミタン島からやってきた半人前神様・カミタマンが、根本伸介少年とともに様々な事件を解決する不思議コメディ。原作：石ノ森章太郎。（１９８５年４月７日～１９８６年３月３０日放送、全５１回）◆伸介は海でカップ麺を拾った。喜び勇んでお湯を注ぐと、中から不思議なものが現れた。神様失格で南の島から流されてきたカミタマンだ。半人前ながらも不思議な力を持つカミタマンは、伸介をヒーロー“ネモトマン”に変身させる。

四国の小さな田舎町から眺めた庶民の昭和史を温かくつづったドラマシリーズ、第一章・全７回の最終回。（１９８５年４月１３日〜５月２５日放送）◆静子（桃井かおり）の初恋の人、清沢中尉が妻とともに現れた。静子と結婚できなかった理由を釈明、わびに来たのだった。その夜、静子は勝二（河原崎長一郎）に事情を詳しく説明した。優しい勝二はそんなことより静子と結婚したのは自分だということの方が大切と考え、巡子（内田也哉子）と生まれてくる子の将来を楽しみにしていた。ところが蝶子（磯野洋子）が産気づき、幸三（森本レオ）とおこう（永島暎子）が駆け落ちする騒ぎにキリキリ舞いの静子は流産してしまう。

生涯、幾度となく転居を重ねた幸田露伴は、自宅をすべて蝸牛庵と称した。現存するのは、１１年を過ごした向島蝸牛庵のみである。代表作「五重塔」をはじめ東洋の理想を著わし、明治文壇に地位を確立した彼は、新しい物に対する探究心も旺盛であった。物置を改造した写真の暗室も残っている。女流作家幸田文をはじめ、３人の子供はここで生まれた。今も家屋の隅々までつややかに光る蝸牛庵。それは掃除ひとつにも厳格な明治人の住んだ証しである。◆幸田露伴住宅・蝸牛庵