ラジオのＤＪを担当している夏子（岸本加世子）は、脳血栓で倒れた父の見舞いに故郷へ帰り、不倫の恋を清算する決心をする。そのドラマの中で、向田邦子の９編の作品が朗読される。（１９８５年８月５日〜８月９日放送、全５回）◆最終回。朗読は「三角波」。波多野との結婚を控えた巻子は、波多野の部下・達夫の態度が変わったのに気づく。やがて二人は結婚し、巻子は達夫の執着が波多野に対するものと判って、愕然とする。朗読しながら、夏子は不倫を清算しようと決める。

奇跡の経済復興といわれる“日本の戦後４０年”は、一体どのようにして実現したのか。戦後日本を訪れたアメリカの経済視察団の報告は“この国は２度と再び工業国家に立ち戻ることはないだろう”と書き記している。いま世界中に洪水のように工業生産物を輸出する日本。国家近代化の実験室と呼ばれた日本。その４０年の歩みを振り返り、これからの日本の進むべき方向を示唆する。◆第２部「いま、豊かさの中で…」では、１９６５年（昭和４０）以降の記録をみていく。

１９４５年（昭２０）８月６日、広島市の上空で原子爆弾がさく裂。爆心地からわずか７５０メートルの地点を走っていた満員の電車の中で奇跡的に生き残った８人がいた。４０年目の１９８５年（昭６０）午前８時１５分、被爆地点で、この８人とほかの電車に乗り合わせ被爆した人たちの“再会”を通じて、生命の尊さと平和を願う姿を描くドキュメンタリー。◆なぜ満員電車の中で生き残ったかを、電車の模型を使って解明する。

明治１８年、山梨県東山梨郡日下部町に、５６０９円９８銭という民間の寄附金によって郡役所が建てられた。これは費用といい、様式といい、３１カ村が集まった当時の東山梨郡においては破格なものであった。しかしながら山里だった甲府盆地や山間部には、明治初期を代表するハイカラな洋風建築が２００余りを数えたという。背景には、文明開化を山国にもという進取の気性をもつ甲府人気質と、近江同様、行商によって富を得た甲府商人の財力があった。◆東山梨郡役所

国の繁栄は教育普及にあるという明治政府の方針に添い、師範教育の充実が図られた。明治２１年、津市に建てられた三重県尋常師範学校は、多くの教師を育て、のちに名張氏の蔵持小学校の校舎として使われた。新任の正教員の月給は５円。まさに聖職そのものであった。明治村には、大阪府南河内郡にあった千早赤坂小学校講堂も移築されている。明治の小学校教員養成を誇るかのように、玄関正面下には菊の紋章が飾られている。明治の教育にかけた意気込みをさぐる。◆三重県尋常師範学校蔵持小学校

心臓と肺の同時移植手術でしか助からない患者の闘病記録を中心に、患者サイドから心臓移植の是非を考える。◆心臓病を患う２９歳の女性。心肺移植手術を訴えた１９８３年（昭５８）４月から２年間にわたる彼女の病状の推移や心の動き、医師や家族の苦悩などを、月日の経過に合わせて描く。さらに、心臓移植をめぐる日本とアメリカの考え方の違い、日本の研究者たちの動きも紹介し、問題を提起していく。

ＮＨＫとフランス・テレビ１（ＴＦ１）との共同制作により、世界最大級の美術館・ルーブル美術館の全貌を紹介するシリーズ。（１９８５年４月２８日〜１９８６年４月２０日、全１３回）◆第９回は、ルネサンスのあとを受けて現れたバロック芸術を紹介する。激しい動きと感覚的な色彩、鋭い明暗の対比などを特徴とするバロック絵画の先駆者はカラバッジオ。その影響を受けながら、スペインは独特の風土・気質の中から多くの魅惑的な絵画を生み出した。

第９０回の直木賞を受賞した、神吉拓郎の短編集「私生活」から５編を原作とする２０分完結５日連続のドラマシリーズ。各回の主人公を田中邦衛が通して演じる。（１９８５年１０月７日～１１日、全５回）◆第２回は「警戒水位」。社長と私しか知らない３千万円を引き出しに行った私は、この３千万を持ち逃げするという考えをもてあそぶ。妻との手切れ金に２千万渡しても、あと１千万が残る。それで、海沿いの小さな町にある小料理屋のおかみと暮そう。名前を呼ばれてふとわれにかえり、支店長から３千万を受けとると、それを抱えて社に戻る。悪夢から醒めて安心感を覚えながら、私はやはりアクセルを踏み切れない人間だと痛感する。