野辺にあって人々に語りかける「微笑仏」。民芸家・柳宗悦によって見出され、そう呼称された木喰上人の仏像である。木喰行とは木の実を食し修行すること。◆木喰上人・五行（１７１８〜１８１０）は行を終え、貧しい民衆救済を志して全国を行脚した。北海道で円空仏と出合い、６３歳から仏像制作を始める。本願成就の後も精力的に全国行脚を続け、笑いこそ衆生を救う道と９３歳で死ぬまで微笑仏を彫り続ける。残された多くの仏像からその軌跡をたどる。◆如意輪観音、大黒天、行基菩薩〔小栗山観音堂〕、地蔵菩薩、木喰自刻像〔日本民藝館〕、薬師如来、子育地蔵、子安地蔵〔太田山霊場〕

世界動乱下、日本でひとり強く生きた英国人女性の波乱の生涯を描く。◆関東大震災が起こり、家も店も失ったメアリーは帝国ホテルで店を開いていた。賢太郎は妻を病で失い、改めてメアリーに結婚を申し込むが断られる。やがて２．２６事件が起き日本は急速に軍国化してゆく。第２次世界大戦が始まりメアリーの身を案じた賢太郎は英国に強制送還させ、途中寄港したシンガポールで養子に出した太郎をメアリーに会わせる。（１９９０年３月２１日開始、全３回）

４回に渡って、ヨーロッパの食文化にスポットをあてる「食べものと人間」シリーズ。◆第３回「チーズの旅」。農耕にも適さず、資源も豊富でない土地の人々が生み出した知恵の結晶、チーズを取り上げる。チーズ文化が花開いたフランスでは１つの村に１つのチーズといわれるほど種類も豊富。エメンタール、ロックフォール、カマンベールが誕生した背景を描く。またチーズ発祥の地であるトルコや西アジア地域からは家畜と暮らす人々のチーズ作りを紹介する。

写真で「家族の役割」の変遷を追うシリーズ。この回は「老人」をテーマに撮り続ける写真家・田辺順一氏の写真でつづる。◆田辺氏は昭和３０年代半ばに、取材先の東北で開拓農民の老人の自殺が相次いでいることを知って老人問題に強い関心を持つようになった。高齢化と家族形態の変化の中で、地域や家庭での役割を失った老人たちの悲しみと苦悩を切り取った写真が多い。聞き手は作家の吉永みち子氏。

紺野美沙子が案内役をつとめる科学教養番組。３００回記念の夏休み特集として４回にわたって「尾瀬」を紹介する。◆シリーズ第４回。番組の放送３００回。紺野美沙子が尾瀬を訪ねる。尾瀬は貧栄養という環境から生物が住みにくい場所とされている。しかし、そんな環境にもめげず力強く生きる生物のひとつが「ナガバノモウゼンゴケ」。尾瀬と北海道の一部にしか見られない食虫植物で、高さは１０センチほどの愛らしい植物で根はほとんど発達していない。尾瀬の土壌には吸収すべき有機物が存在していないからである。尾瀬ならではのこの珍しい植物を紹介する。

良寛（１２１７〜１３０３）が書を始めたのは、諸国行脚の末、ふるさと越後の口上山中腹の『五合庵』に落ち着いた５９歳から。１日５合の米があればよいという生活の中で、書と歌の日が続く。万葉のかな文字に憧れ、『秋萩帖』を手本とした。１つの点や線のわずかなずれが文字の生命を奪うといい、もみじの書はもみじが舞うごとく心がそのように動いたから筆をとる。ただそれだけのことに７４年を生き、子らと手まりに興じ清廉な姿を世に残した僧だった。◆【重要文化財】歌切（もみじの歌）〔個人〕◆【その他】五合庵〔国上寺〕、原田家茶室〔個人〕、秋萩帖〔国上寺〕、鍋蓋刻字の心月輪、愛語〔個人〕

親友でありながら全く異なった道を歩いた二人の男とその妻たちが生き抜いた人生を通して激動の戦後史を描く。◆百合子と愛子は空襲下の有楽町で、忠太郎と静一という大学生に出会う。百合子は戦後政治家を志す忠太郎と再会、結婚する。一方、愛子も復員した静一と結婚、静一は弁護士になる。忠太郎は大臣にまでのぼりつめるが、思わぬ落し穴が待っていた。

大手企業の２代目で、背も高く、ルックスもよく、一流大学出で仕事もできて趣味も楽しむ、というまさに「理想の男性」から求婚された主人公が結婚したものの２人の新生活に両方の親が割り込んでくる。（１９９０年２月２４日〜３月１０日放送、全３回）◆美恵と弘志の結婚式の当日、美恵の父・勇造は弘志の招待客が３００人、美恵の方が６０人なのが納得できず一騒動。母・華子がなんとか勇造をなだめて出席させる。新婚旅行から帰ると新居には弘志の母・公子が世話をやこうと待ち構えていた。