老いた作家と認知症の症状を示す妻との３年間の心の軌跡をたどったドキュメンタリー。私小説など一連の作品を朗読でつづる。◆最後の白樺派作家といわれた耕治人さんと妻のヨシさん。詩や小説を書くことしか知らなかった耕さんを支え続けたヨシさんだったが、３年前から認知症の症状をあらわしはじめた。症状が進むにつれて耕さんが家事一切を引き受けざるを得なくなる。この生活を綴った私小説「天井から降る哀しい音」は人々に衝撃を与えた。

戦後期の関西（和歌山、大阪、兵庫）を舞台に、弟思いで野球の大好きな明るく元気なお姉さん・小野純子が、甲子園球場近くに旅館を開き「高校救児の母」と呼ばれるようになる、その半生を描く。作：布勢博一。ＮＨＫ連続テレビ小説第４１作。（１９８８年１０月３日〜１９８９年４月１日、全１５１回）◆昭和２２年６月。小野純子（山口智子）は、疎開先の和歌山・美山村で母・あき、妹・恭子、弟・昭の４人で、父・陽一郎の復員を待ちわびていた。村をあげての大運動会の日。純子は村一番の山林地主・興園寺つやの長男・正太夫と二人三脚に出場した。騎馬戦がはじまった時、進駐軍らしい２人の乗ったジープが止った。

日本経済新聞紙上で１９５７年（昭和３２）３月に始まった「私の履歴書」のテレビ版。一時代を築いた人物が出演、自らについて語る。（１９８７年４月８日〜１９８８年９月２８日、全７８回。出演者の肩書・年齢は放送当時のもの）◆第５６回は比叡山長臈の葉上照澄さん（８４歳）。

１９５０年代のポピュラー・ソングを特集。当時を彩った歌の数々をメドレーを交えておくる。司会は本多俊夫とアンリ菅野。◆曲は「チェンジング・パートナー」「ボタンとリボン」「トゥー・ヤング」「想い出のワルツ」「青いカナリヤ」「オー・マイ・パパ」「第三の男」「ヴェニスの夏の日」「黄色いリボン」「家へおいでよ」「ガイ・イズ・ア・ガイ」「裏町のおてんば娘」「ウェディング・ベルが盗まれた」「ウスクダラ」「アンナ」「ヴァイア・コン・ディオス」「ジャンバラヤ」「ドミノ」「ケ・セラ・セラ」「わが心に歌えば」「テネシー・ワルツ」。

現代の中学生に取材し、抱えている問題をドラマ化して伝える長寿番組。関心の高いテーマをいち早く取り上げることにも定評があり、１９８８年は「校則」をテーマに２回連続シリーズとして放送した。◆抜き打ちの服装検査で、純子は苦労して見つけた目立たないリボンを没収され、昌子はカバンを開けろといわれて反発する。制服のない私立から転校してきて、制服が嬉しかったはずの昌子だが、校則を振りかざし、生徒のいうことを信じない先生たちには息がつまる思いだった。翌日、昌子は思い切って私服登校に踏み切るが、周囲の目は冷たい。

昭和２０年８月６日、県立広島第一高等女学校では広島市内で作業をしていた一年生・２２０人全員が亡くなった。少女たちは建物の取り壊し作業に動員されて被爆したのである。生徒たちが残した日記をもとに、彼女たちの束の間の青春をアニメーションで描き、今なお娘の死を悲しむ親たちの日常を取材する。◆１９８８年（昭和６３）の夏、広島市原爆資料館にボロボロに焦げた女学生の夏服が届けられた。敗戦間近、憧れの“第一県女”に入学しながら儚く散った少女たち。その多くが入学のときから被爆する日の直前まで日記を綴っていた。

カメラを通して戦争を見つめてきた女性写真家・大石芳野さんの写真とインタビューをもとに、ナチスによる強制収容の恐怖と、生き残った人々の心の軌跡を描く。◆大石さんは３年前からポーランドに入り、強制収容所からの生還者たちを追い続けている。”囚人”たちがどのようにして九死に一生を得たか、また彼らの９０％以上を今も襲う心の傷あと”強制収容所症候群”の問題に、写真とビデオを融合した新演出で迫る。

１９４０年（昭和１５）東京神宮で開催される予定だった幻の東京オリンピック。その計画から返上までの軌跡を追い、「日本が強行開催」という仮想設定で出場予定者の証言やフィルム、記録を交えながら検証する。◆第１２回オリンピックは皇紀二千六百年の東京で奉祝行事の意味を含めて華々しく行われるはずであった。第１１回はドイツ・ベルリンで開かれており、ヒトラーは次回の東京開催を強力にバックアップしていた。発案から決定までの関係者の努力も喜びも、戦争泥沼化、国民総動員令のなかで物資不足などから中止と決まり露と消える。そして落胆した選手たちもまた、戦場の露と散っていった。