大自然と生きものたちがもつ不思議・驚き・美しさなどを、感動的に楽しく伝える自然番組。◆第１回「花と虫の１億年物語」。地球上のいたるところで美しく咲き競う花々のさまざまな色や形は、植物が種の生き残りをかけてこらしてきた工夫の結晶である。受粉のために昆虫をひきつけようとする花と、蜜や花粉をエサとする昆虫との双方が、最小の働きで最大の効果を上げようとしている。

江戸時代の画家・円山応挙は、日本画の世界に写実主義の新風を巻き起こした。国宝の雪松図は、その画業のひとつの頂点である。この写実的技法がいかにして獲得されてきたかを、細密なイラストで知られる舞台美術家・妹尾河童さんが探訪する。◆松は古くから不老、繁栄などの象徴とされ、絵の題材となることも多かったが、それらは様式的・平面的な表現にとどまっていた。応挙は若年の頃に西洋渡来の遠近法を学び、さらに真剣な写生を繰り返して写実の技法を身につけた。雪松図は、当時新興の豪商であった三井家のために描かれたもので、厳寒の中に力強く立つ豪快な雄松と、雪の中で優雅にたたずむ雌松が生き生きと描かれている。

１９７２年～１９７３年に連続時代劇として放送され、人気を博した田村正和主演「眠狂四郎」のスペシャル。よりニヒルな円月殺法が冴えわたる。原作：柴田錬三郎。◆旗本大番頭である長岡の子、守一が「家を滅ぼしとうはない」と口走る。聞きとがめた狂四郎（田村正和）が、長岡の屋敷を訪ねた。屋敷内では長岡が、今まさに妻の志津（多岐川裕美）をやりで突き殺そうとしていた。狂四郎は長岡を斬り捨て、志津を救う。志津の話では、江戸城西の丸へ出向いた折、将軍の世子・家慶（船越栄一郎）に力づくで辱めを受け、そのことで夫が怒り狂ったのだという。狂四郎は、半年前に京から帰った直後から、家慶は急に酒色にふけるようになったことを確かめる。その家慶を操っているのは若年寄の佐野肥後守（佐藤慶）。大奥に潜入している文弥が、今の家慶は偽者だと知らせてきた。狂四郎は謎を探るため、金八（柳沢慎吾）と２人で京へ向かう。そんな狂四郎たちに肥後守の差し向けた刺客が次々に襲いかかる。

１９８８年（昭和６３）４月、三重県藤原岳のふもとの小学校に、都会から５人の５年生が山村留学のためにやってきた。山が迫り川も流れる豊かな自然環境の中、先生や友達との関係も都会とは違う。学校教育の理想のあり方ともいえる姿をつづるドキュメンタリー。◆テレビのニュースで見て自分から申し込んだ女の子、父親に勧められた男の子、きっかけはさまざま。契約は１年間、里親の家から小学校に通う、費用は月６万円というもので、５月１０日までは両親が会いに来てはいけないという約束も盛り込まれている。預ける親、預かる親双方の思いもまたさまざま。１年間で子どもたちはなにを得るのか。

日本アルプスを背景に威容を見せる松本城。その造形美、建築の特色、守りの様々な工夫を紹介する。作家の綱淵謙錠さんが松本城を訪ね、１６世紀末築城に当たった石川数正・康長親子の人物像などを語り、歴史のロマンを探っていく。◆松本城は東と北に山を背負い、南と西に平坦地を展望する好ましい立地にある。さらに城の南を流れる女鳥羽川は、天然の堀の役割を果たしている。寄せ手が天主に近づこうとすると、三つの門と内外の堀によって阻まれることになる。あくまでも松本城の守りは固い。◆この城を建てた石川親子は、一度徳川から豊臣へと主を替え、関ヶ原の際に再び徳川についた。その複雑な立場がしのばれる堅固な作りである。

長唄の名曲「岸の柳」「菖蒲浴衣」を人間国宝の杵屋佐登代さんらが演奏。また長唄で使われる浴衣について、演劇評論家・渡辺保さんが解説する。◆「岸の柳」は、柳橋の近江屋という芸者屋の娘の恋物語をもとにして、東京の柳橋から両国へかけての夏景色を唄う粋な曲である。◆「菖蒲浴衣」は、江戸時代に歌舞伎役者が自分の好みの浴衣を売り出すために作られたといわれる長唄。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆ワダエミ：衣装デザイナー。１９３７年京都生まれ。舞台装置と衣装を手がけ、のち映画・ミュージカル等でも衣装を担当。１９８５年映画「乱」でアカデミー賞衣装デザイン部門賞受賞。夫は演出家の和田勉。

天井画の修復作業が深く進行するにつれ、５００年前、巨匠ミケランジェロが描いた壮麗な画面が鮮やかに浮かび上がり、全世界に大きな感動の渦を巻き起こした。中世の暗黒を脱し、ルネッサンスから現代の芸術につながる人間回復の時代への幕開きであった。修行時代のミケランジェロが足繁くジヨットの模写に通ったという聖フランチェスコ教会、フィレンツェのサンタクローチェ教会など、巨匠が拓いた時代の曙の背景をたどり、２０世紀最後の文化事業である壁画修復の意味合いを考える。。◆副音声は英語