三河生まれの甚兵衛が辛苦の末に貯めた大金を親孝行のためにきれいに使い果たす美談。村の長だった父親が、凶作続きで苦しむ村民のため、借金をしてまで尽くし村を救う。その借金を返すのが死んだ親への孝養と働いてきた甚兵衛は、貯まった三千両の金を借金の返済にしたいと言う。妻のお直は「お金は働きさえすれば」と協力する。話が広まって三河屋の評判はますます上がり、三河長者と言われるまでになった。◆作：高山俊春

アメリカ、イギリス、ポルトガル、イタリア、ドイツ、スペイン、日本の７か国８放送局が、コロンブスの大航海５００周年を記念して共同制作した大型番組。（１９９２年５月４日〜６月１６日放送、全６回）◆１４９２年のアメリカ到達から１０年、コロンブスは最後となる第４次航海に乗り出した。しかしイスパニョーラ島上陸の許可がもらえずキューバに座礁、彼と７０人の乗組員はそこで１年以上を過ごす。「新大陸」の大きさもその西側の太平洋も知らず、１５０６年に失意のうちに生涯を閉じた。ヨーロッパの英雄・コロンブスの「遺産」をアメリカ大陸各地に探り、現在の歴史的評価を紹介する。

シルクロード東西交易の舞台として繁栄した中国・タクラマカン砂漠の都市に眠るミイラを追跡。文献や考古学では解明できない歴史を貴重な文化遺産から学ぶ。◆タクラマカン砂漠の真夏の地表温度は７０〜８０度にもなるため、埋葬された遺体の多くは乾燥して“自然ミイラ”になる。日本と中国の学者が共同で発掘調査し、二つの古墓から白骨体、ミイラ、毛織物、彩陶などを収集した。これらは約３０００年前のものと推定され、このころ既に半農半牧の定住生活を営み、高度な染色・織物などの技術をもっていたことを示している。

１７世紀大航海時代のスペインの窓口セビリアは、聖母マリア信仰が特に篤かった。それまでのマリア像を一変させた２人の画家が、スルバラン（１５９８〜１６６４）とムリーリョ（１６１７〜１６８２）である。穏やかで人間的で慈悲に満ちたマリアの表情を描いた。◆コロンブスの新大陸発見で海上交通の守り神はマリアだった。ペストの流行で没落するスペインの国情に厳しい祈りの世界を描いたスルバラン、優しさに満ちた絵を描いたムリーリョ各々の生涯を重ねて、時代を映す。◆聖ペテロ・ノラスコに現われた使徒聖ベドロ、聖女カシルダ、ボデゴン（スルバラン作）、無原罪の御宿り、小鳥のいる聖家族、よき羊飼い、ロザリオの聖母（ムリーリョ作）

モダン・ダンスのダンサー、振付師としてアメリカのニューヨークに暮らす女性の体験と、彼女の夫となった写真家の活動を通して、アメリカの現在、日本を見るアメリカの目、そして両国の関係を見つめる。◆広島出身の女性は１９８２年アメリカの大学に留学、日本の価値観や発想とは大きく異なる「アメリカ」と向き合ってきた。戸惑いつつ自分の道を探し、ダンサーとして立つ。そして社会の底辺に生きるアメリカの人々の姿を追う写真家と知り合い、結婚した。

ベトナムからトルコまで、アジアを東西に横断するアジア・ハイウェイ。ベトナム戦争、カンボジア内戦など多くの戦いの舞台となったこの道には、苛酷なアジアの現代史が刻みこまれている。カンボジア和平で４６年ぶりに交易路として復活した道をたどる。またカンボジア・ポルポト時代の映像の入手に成功、暗黒時代の実像に迫る。

北海道の洋画界を支えてきた国松登の画風、人となりをたどりながら、北海道の洋画壇の歴史も描く。◆国松登は１９０７年（明治４０）函館に生まれた。函館の大火で小樽に移る。現・武蔵野美術大学を卒業、小樽太地社、道展、独立美術展などへの出品を重ね、北の詩情をたたえた「眼のない魚」「氷人」などの作品で知られる。

彫刻の名人、左甚五郎が旅の途中の掛川城下で、名物猫餅の本家争いに負けたという茶屋に立ち寄る。その経緯を聞いて、甚五郎は猫餅の名の由来となった猫を彫ってやる。この猫は客が餅代を猫の足元に置くと、猫が代金箱にその金を入れる仕掛けになっており、これが評判となって茶店は勢いを取り戻す。名も告げずに旅立った彫刻師が実は甚五郎だったとまた評判になり、話を聞いた殿様がその猫を買い上げたという人情ばなし。