校内暴力や登校拒否が増加する一方で高校進学率は９割を超え、義務教育の仕上げの場であった中学校は、高校進学選別の機関になりつつある。公立中学を取り巻く状況とこれからのあり方を３回シリーズで取り上げる。（１９９１年１１月１６日終了）◆第１回は各地の公立中学を取材し、義務教育の現状をリポートする。私立中学に進学する生徒が増加したため、平均学力が低下した東京の区立中学、「丸刈り」やクラブ活動の見直しが進められている愛知の中学など、私立志向に揺れる中学校の姿を伝える。

百万都市、花のお江戸。武家と町人が相半ばする町。発展を陰で支えた町方の女たちのファッションを、浮世絵や川柳を絡めながら跡付ける。かつての十二単の下着だった小そでを表着として着こなし、粋に自由に生きた江戸の女。明暦大火（１６５７年）後、着物の需要に応じて生まれた友禅、そでを長くした華麗な振りそで、渋くて地味で気品のある小紋など。◆江戸期の着物文化を通し、歌舞伎や遊女の流行に合わせ美を競った江戸の女の心意気を描く。◆江戸図屏風〔国立歴史民俗博物館〕、両国橋上橋下（歌麿筆）〔東京国立博物館〕、目黒行人坂火事絵巻〔東京消防庁〕、東都両国橋夕涼図（英泉筆）〔名古屋市博物館〕

大岡越前守という名奉行は公平な裁判で有名であるが、落語にも登場する。拾得物の争いを大岡越前が粋に裁く。江戸の職人は宵越しの金は持たないのが粋とされた。左官の金太郎が財布を拾い、返そうとするが、落した方は、金は拾った人のものと受け取ろうとしない。とうとう喧嘩になり、大家が仲に入って大岡越前守の出番となる。咄が大げさになるところがいかにも落語らしく、また話しがカラリとしていて、気持がよい。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆飯沢匡：劇作家。１９０９年和歌山生まれ。１９３３年朝日新聞に入社、「婦人朝日」「アサヒグラフ」編集長を経て１９５４年に退社、文筆に専念する。ラジオ・テレビ・新派・歌舞伎・狂言・大衆劇・児童劇など幅広い分野で活躍。主な作品に「もう一人のヒト」（１９７０）、狂言「濯ぎ川」など。

アメリカの栄光、ウエストポイントで士官候補生だったホイッスラー。スケッチに秀でていた彼は、軍人を諦めパリに出る。１９世紀半ば、ヨーロッパではジャポニズムが印象派の画家たちに影響を与えたが、同じように日本美術を収集・敬愛した風変わりなアメリカ人画家がホイッスラーだった。派手な人生を送ったわりには、絵は静かである。晩年、ロンドンで水墨画の画境を学び、油絵に墨絵のような簡素な構成とぼかしの技法をとり入れ、「青と銀バターシーの古橋・屏風」で自身の画風を完成した。◆ジェームズ・マクニエル・ホイッスラー（１８３４〜１９０３）「バラ色と銀磁器の国の姫君」１８６４、「ピアノの前で」１８５９、「白のシンフォニー?１白服の女」１８６２、「青と銀のノクターン」

ダ・ビンチやミケランジェロを生んだ小さな町フィレンツェを何が世界史の表舞台に引き上げたのか、イタリアの名映画俳優の案内で解明するシリーズ。◆第１回は、５００年前のルネサンス時代の町がそのまま残るフィレンツェの現代から、歴史をさかのぼる。中世ヨーロッパの暗黒時代を背景に、ルネサンスの代名詞といわれるメディチ家が肥大化していく過程や史上まれな自由都市が誕生する様子を描く。◆メディチ・リカルデ宮殿、ヴィーナスの誕生、春（ボッティチェリ作）、大地の精（エレナ作）、春の女神（プリマヴ・エーラ作）、三賢王の旅（ゴッツォリ作）、メディチ家の紋章

卓越した理論と、構造的、抽象的で大胆な作品によって、後の画家たちから「近代絵画の父」と言われた静物画の巨匠セザンヌ。私生活に立ち入られることを極端に嫌い、人生の大半を故郷エクスで過ごして一生を終えた。中学の同級生で親友だった大小説家エミール・ゾラとは、４７歳の時に訣別する。岩肌むき出しの大地、サント・ヴィクトワール山と対決するかのようにその風景を描きつづけ、死の直前まで新しい絵画を模索しつづけた大画家であった。◆ポール・セザンヌ（１８３９〜１９０６）「リンゴとオレンジ」１８９５−１９００、「ポール・アレクシスとゾラ」１８６９−７０、「カードをする二人の男」１８９０−９５、「サント・ヴィクトワール山」１８８８−９０

本年の４月の長崎市長選挙には、天皇の戦争責任発言で、右翼の銃撃を受けた現職の本島市長が出馬した。選挙戦の争点は言論の自由と天皇の戦争責任発言、そして地域経済の活性化だった。結果は本島市長が４選を果たしたが、対立候補との票差はわずか７７５５票だった。市長選を通じて、天皇、言論の自由、地域経済を取り巻く日本の現状を浮彫りにすると共に、３２万人の有権者がどんな思いで一票を投じたかを取材する。