貧しい農村に生まれた少女が幾多の苦難を乗り超え、やがてスーパーマーケットのチェーン店を経営するようになるまでを、生まれ故郷を旅する彼女の回想という手法で描く。作：橋田寿賀子。ＮＨＫ連続テレビ小説第３１作。（１９８３年４月４日～１９８４年３月３１日放送、全２９７回）◆スーパーたのくらの１７号店は大手スーパーの進出で経営難に陥る。そのうえおしんの次男で今は社長の仁と妻・道子との間に離婚話が持ち上がる。仁は店を売るにも売れず、破産を覚悟して妻とも別れ、家も処分しようとする。おしんは家族の結束の大事な今こそ出ていこうとする道子を引き止めるよう仁に説く。

役者から裏方まですべて村人によって演じられる、大鹿村に伝わる伝統歌舞伎を長期取材したドキュメンタリー。長野県の伊那谷は、かつて芸能の里といわれ、各村々で歌舞伎が演じられてきたが、今では下伊那郡大鹿村に残るだけとなっている。

中国の高峰ミニヤコンカで遭難し、２０日後に奇跡の生還をとげた登山家松田宏也さんを長期取材。彼が再び登山に意欲を燃やすまでの過程を描く。◆松田隊員救出時の様子、中国四川医学院での治療と手術後のリハビリテーション、機能回復をめざす苦闘、中国への答礼の旅などで構成。単なるヒーロー像ではなく、両手両足切断という苛酷な現実を乗り越えた生の人間としての登山家を浮き彫りにしていく。

奥能登の輪島市より４８キロメートルの洋上に浮かぶ舳倉島。絶海の孤島といわれた昔と違い、ライフラインも整った。ひと昔前は、輪島に住む海女たちが漁の時期だけ通う島だった。石ころ屋根の素朴な造りも残り少なくなり、幸豊かな漁業基地となった。島の魚は一括して輪島の港に運ばれる。朝の港は行商や朝市の女たちで活気づく。古くからの朝市は観光客も加わって、奥能登の１つの風物詩となっている。◆舳倉島（石川県）

比叡山延暦寺の門前町風景や人々の暮らしを通し、信仰のふるさと、大津市を描く。◆琵琶湖を中心に幾多の歴史を刻んできた近江の里。特に平安時代には多くの寺が建立された。荘厳さあふれる天台宗総本山・比叡山延暦寺。同じ宗派で激しく争った園城寺（別名、三井寺）。夏に行われる鐘供養の行事。そして近江八景の一つ堅田の浮見堂。また門前町の大津は寺院仏教とは別に、地蔵尊を敬う庶民信仰も根強く残されている。◆【国宝】延暦寺根本中堂、園城寺金堂、浮見堂〔滋賀県〕

滋賀県神崎郡五箇荘町。かつての中山道に寄り添うように古い蔵屋敷が続く。ここは近江商人の里。商人といっても身分は農民だった。農民が大名に金を貸す。わずかな行商から巨額の財を得た秘密は、つましい暮らしであった。船板を利用した壁、行商では傘を使わず蓑で通した。明治を動かした豪商の多くは近江出身者だった。集落で３００年の歴史を持つ８代目の「でこ人形師」が、時を超えた造形の美を今に伝える。◆五箇荘町〔滋賀〕

夏目漱石の妻・鏡子の書いた「漱石の思い出」や、娘・筆子の手記からお金に関するエピソードを拾い出し、夏目家の家計簿や漱石の金銭感覚を通して、漱石の人生哲学をドラマ仕立てで描く。◆１９８４年１１月１日、２１年ぶりに紙幣のデザインが新しくなった。千円札の肖像は夏目漱石。一方、漱石単身赴任の地・英国ロンドンでは８月２５日「漱石博物館」がオープン。新たな漱石ブームの兆しがある。番組では、漱石を文豪としてではなく、転勤や単身赴任を繰り返したサラリーマン・夏目金之助としてとらえ、最後まで自分と他人との関係に苦悩し続けた彼の実像に迫る。

脳死を専門にする東龍一郎記者が脳死、臓器提供者の倫理と医術の狭間の心理的側面などについてリポートする。また、脳死シンポジウムの質疑を紹介しながら、日本人の脳死観に鋭く迫っていくドキュメント。１９８３年（昭和５８）、厚生省で脳死に関する研究班が発足した。翌８４年６月２２日、阪大が独自の脳死判定基準を公表。その翌日「脳死シンポジウム」が開かれ、医療関係者をはじめとする参加者による真剣な討議が続いた。