中国大陸１万２千キロを横断する世界最大の建造物、萬里の長城。紀元前から１７世紀に至るまでの２５００年にわたって造り続けられた。山嶺を延々と連なる高さ７～１０メートルの巨大城壁は、北方の遊牧騎馬民族に対して、漢民族が領土の防衛と皇帝の権威を誇示するために築いたものである。等間隔に敵樓をつくり侵略を防いだ。北京から張家口を経て大同まで、寒風ふきすさぶ中を緒形拳の実地踏査の旅が続く。

広隆寺に次いで京都で２番目に古い、清水寺。あらゆる宗派を受容し、善男善女が集う。音羽の滝や清水の舞台として有名だが、本堂内内陣をはじめ多くの堂塔には仏像がひしめく。◆「清水型観音」や仏像としては珍しい『大随求菩薩坐像』など、清水寺の隠れた側面を見る。歴史の深さもさることながら時代を超えて絶えることのない人気。庶民の憩いの場として、またお堂での「おこもり」の場として一夜、仏と夢を交わす観音霊場でもある◆【国宝】清水寺本堂◆【重要文化財】清水寺馬駐、三重塔、釈迦堂、阿弥陀堂、奥院、子安塔◆【その他】音羽の滝〔清水寺〕、大随求菩薩坐像

幼いころ才能を認められたミケランジェロ（１４７５〜１５６４）は、メディチ家で養育される。共和制に賛同する彼はメディチ家の独裁化に反発、その板挟みに苦しみローマ逃避など変転多い人生を歩む。先輩レオナルド・ダ・ヴィンチや後輩ラファエロとの芸術性を比較しつつ、社会体制の激変による共和制の危機から終えんまで身を置いたミケランジェロの伝説的足跡をたどり、神業といわれた彼の美の真髄、自由と人間性に満ちた都市の軌跡を探る。◆サン・マルコ修道院、ダヴィデ、ケンタウロスの戦い、ピエタ（ミケランジェロ作）、受胎告知（フラ・アンジェリコ作）、サヴォナローラ像（フラ・バルトロメオ作）

「鉄は国家なり」といわれた時代、鉄鋼業は国の根幹を支えていた。第２次世界大戦前、日本は製鉄原料の半分を鉄くずに頼っており、その８０パーセントをアメリカに依存していた。太平洋戦争・日米開戦の前年、アメリカは鉄くずの禁輸に踏み切り、日本を封じ込めた。“鉄”にかかわった日米人物群像と経済裏面史を描く。

山陽道第一の古社・吉備津神社は、岡山市と倉敷市のほぼ中間にある。本殿桧皮葺の屋根には、美しい２つの破風が並ぶ「比翼入母屋造り」で日本にここしかない神社建築の傑作といわれる。古代、吉備の王国は進んだ製鉄技術を持つ強国で、大和朝廷に対抗し華々しく戦いを挑んで滅んだ。これらについては今も『備中神楽』に伝承され、戦いの激しさを物語る。また釜鳴りの神事など古代からの奇妙な言い伝えを現代に受け止める里の風情を伝える。◆【国宝】吉備津神社本殿及拝殿◆【重要文化財】吉備津神社南随神門、北随神門◆【その他】備中神楽吉備津〔岡山県〕、鳴釜の神事〔吉備津神社〕

『蒙古襲来絵詞』は、当時領地を失っていた肥後の後家人・竹崎季長が、「元冦の役」に際しての自らの武勲を後世に残したいと絵師に描かせた自分史である。元冦については正確な史料がほとんど残されておらず、唯一写実的に往時を描写した貴重なもの。当時の蒙古（元）と東南アジアの情勢の中で日本の置かれた状況から、フビライは２度にわたって軍を派遣し博多を襲った。文永の役は交易を求めるためのどう喝が目的であったが、日本は断固戦う。◆【国宝】桃鳩図〔個人〕◆【その他】元の使者供養塔〔常立寺〕、蒙古襲来絵詞〔宮内庁〕、華厳縁起〔高山寺〕、蒙古国牒状写し〔東大寺〕

ＴＢＳ宇宙特派員の秋山豊寛が、イタリア人船乗り・クリストファー・コロンブスの新大陸発見を巡るナゾの解明に挑む２回目。彼が最後までジパングだと思っていた、西インド諸島の原住民に与えた影響と、論争が続く最初の上陸地点を、彼が残した日誌をもとに探る。◆コロンブスが最初に上陸した島はまだわかっていない。その候補となっている３つの島、南米・バハマ諸島のサン・サルバドル島、サマナ・ケイ島、グランド・ターク島を訪れる。またスペインの総督府が置かれていたドミニカ共和国を訪れ、コロンブス以前と以後について紹介する。

村のはずれのお地蔵さん。日本人の心の原風景として親しまれた地蔵菩薩の由来と、民間信仰として定着していく過程を追う。阿弥陀如来の脇侍として、天を守る虚空蔵菩薩と大地を守る地蔵菩薩が左右一対のものとして作られた。地蔵は六道の辻に立ち、道を教え、誰の願いも聞き入れてくれる。やがて錫杖を手にどこへでも人を救いにくる。◆地蔵信仰が全国津々浦々まで浸透していく歴史的背景と、今なお素朴で身近にある神・地蔵を考える◆【重要文化財】地蔵菩薩坐像〔広隆寺〕、地蔵菩薩立像〔法輪寺〕、六地蔵像〔上品蓮台寺〕◆【その他】めやみ地蔵尊〔仲源寺〕、とげぬき地蔵尊〔高岩寺〕、しばられ地蔵尊〔南蔵院〕