希薄になりがちな父と息子の関係、遠のいてゆく故郷との繋がり、そして日常生活に埋もれがちな夫婦の絆を、コミカルに描き出す。脚本：松原敏春。◆東京で働く３５歳の小栗直一（中井貴一）には、２人の「父親」がいる。疎遠になっている生まれ故郷の瀬戸内海の小島で漁業を営む実父・喜八（藤岡琢也）と、直一を片腕として信頼する勤務先の社長の河合辰造（杉浦直樹）である。ある夜、直一は父が漁に出たままもどらないとの連絡を受け、妻とともに急遽帰省する。母や島の人々と父・喜八の思い出話に花を咲かせる葬儀の夜、死んだはずの当人が、ひょっこり帰ってくる。無人島に流されたというのだ。この事件の後、喜八が突然町長選挙に立候補すると言い出す。直一は悩んだ末に、これまでの恩を返そうと選挙の間故郷で父を支えることを決意する。一方、辰造はなかなか東京に戻ってこない直一にやきもきし、娘を島に送り出して様子を探らせる。娘婿以上に自分を頼っていた辰造の気持ちを直一は痛いほどわかっていた。

清和源氏の流れを汲み、十代二百三十年のあいだ続いた武家の名門・今川氏。しかしその姿は徳川三百年の下に埋もれてしまっている。戦乱が渦巻いた時代に長く栄えた今川一族の謎を探る。（１０月８日〜１２月２４日放送、全１２回）◆桶狭間の窪地で小休止していた今川軍の本陣へ織田勢が奇襲を仕掛け、公卿姿の義元の首を取った、というのが一般的な認識。これは江戸時代の作家・小瀬甫庵の「信長記」に描かれたもので、戦時中のテキストにも載り広く知られることになった。しかし、東海一の弓取りといわれた２万５千の大軍が、そう簡単に敗れるだろうか。そして義元が桶狭間に向かったのはなぜか。

在日韓国人を祖父や父にもつ中学生が、朝鮮民族の文化や歴史をテーマに、文化祭の演目に挑む姿を描くドキュメンタリー。◆横浜市鶴見区の潮田地区には、多くの在日韓国・朝鮮人が定住している。この地区の市立潮田中学校の文化祭で、朝鮮民族の伝統楽器チャンゴの演奏や、戦前から戦後にかけての在日韓国人・朝鮮人の歴史を描く演劇が披露された。これらは祖父や父親が在日韓国人であることを知った生徒たちが中心となって企画されたもので、民族の文化や歴史に誇りを持とうという強い気持ちの現れだった。文化祭に参加した生徒たちや、その家族を中心に、どのように企画され、作られていったのか、文化祭の当日までの姿を追う。

チベット高原から流れ出し南シナ海に注ぐメコン川。全長４０００キロに及ぶ大河を、人々は「母なる川」と呼ぶ。番組では、冷戦が終わり新しい時代が到来しつつあるこの川を、中国の雲南省から河口の大デルタ地帯まで訪問。その流域の素顔を２回シリーズで紹介する。◆後編。メコン川を下りながら流域の人々の暮らしを描くシリーズの後編。ラオスの首都ビエンチャンから今なお緊張の続くカンボジアを経て、ドイモイ（開放）政策で活気づくベトナムのメコンデルタを旅する。

京都の愛宕念仏寺の住職であり、仏師であり、幾多の国宝の仏像修復技術者でもある西村公朝さんが仏像鑑賞法を検証する。鎌倉時代の快慶ですら得られなかった天台大仏師法印の称号を受けたほどの西村さんが、仏像への敬虔な祈りの造形とは何かを問う。電灯で上方から照らすのではなく、昔のようにろうそくや灯明のほのかな明かりで下方から照らされ、仰ぎ見る仏像の表情。ほんの百年前の人々が見ていたもの。美しさと共に人々の心に映じていた真の仏の姿を現代人に説く。◆【国宝】五大虚空蔵菩薩諸像（神護寺）、阿弥陀三尊立像（浄土寺）、弥勒菩薩像（広隆寺）、阿弥陀如来立像（平等院）、風神・雷神像（蓮華王院）、沙羯羅竜王（延暦寺）、本尊釈迦如来像（清凉寺）

観阿弥・世阿弥の父子は能楽の祖。観阿弥が「猿楽能」の座を起こした福田神社跡（名張市上小波田）では、毎年１１月３日に「観阿弥まつり」が盛大に行われる。

静岡県清水市で開かれた無声映画の上映会で、昔取った杵柄を鮮やかにふるってみせたかつての活動弁士・渡邊錦聲さんの半生を綴る。◆映画１００年の年「無声映画を体験する会」で上映されたのは「瞼の母」。渡邊錦聲さんは９１歳、大正から昭和にかけての無声映画全盛の時代に活動弁士として大活躍、人気芸能人の３位に入ったこともあるほどだった。しかし間もなくトーキーが出現、絶頂期は短かった。渡邊さんは活弁をやめ、京染店を始める。このたび清水映画サークルに頼まれて、６０年ぶりに弁士を務めた。声も出る、台詞がつかえることもない。生演奏をつける楽士は静岡在住の音楽家、増田義孝さんが家族４人で引き受ける。

名もない庶民から天下人に上りつめた豊臣秀吉の波瀾の生涯を描く１２時間ワイド時代劇。◆日吉の父は、「天下を獲れ」という言葉を遺して世を去った。母の再婚相手と反りの合わない日吉は家を飛び出し、矢作川で強そうな大将を品定めしていた。そんな日吉を、蜂須賀小六が面白がって取り立てる。小六の元でさらに強い大将を探していた日吉は、ある日清洲城下で美しい女を見初める。それは信長の妹・市だった。