海上自衛隊のペルシャ湾掃海派遣部隊は中東に向けて出発、ペルシャ湾に到着した。途中、部隊はフィリピン、シンガポール、マレーシアなど第二次大戦中、日本軍が惨禍をおよぼした国々に寄港しながら航海した。部隊のシンガポール寄港を通してアジアの人々と日本人との歴史認識について考える。◆大戦中、日本軍が各地で行った残虐行為のため、アジアの人々は日本の軍事大国化への警戒感が今も強い。

ベルギー北東部に広がるフランドル地方で農民たちを描きつづけた１６世紀最大の画家、ピーテル・ブリューゲル。怪奇と農村風景を描いた、謎と伝説の画家である。中世と近世の狭間で、列強近隣諸国の侵略と支配によって、ベルギーの農民は悩まされていた。彼は農民社会を克明に観察し、人々の絶望の表情と苦しみの姿を、恐怖とユーモアを渾然と同居させて描いた。農民画家ブリューゲルと呼ばれ、親しまれた彼は、時代の目撃者であり真実の記録者でもあった。◆ピーテル・ブリューゲル（１５２５／３０〜１５６９）「農民の踊り」１５６８、「子供の遊戯」１５６０、「謝肉祭と四旬節の戦い」１５５９、「反逆天使の転落」１５６２、「イカロスの堕落」１５５８〜６６、美術史美術館（ウィーン）、

人間国宝を中心に第一線で活躍中のベテラン出演者で構成された、初春らしい舞踊と長唄の演奏を紹介する。◆「常磐の老松」は、能の「老松」から題材を借り、四季の移り変わりを花や行事でつづった祝いの曲。◆「梅の栄」は、梅を中心にのどかな初春をうたった上品な曲。◆「連獅子」は、能の「石橋」をもとにした、親子の獅子が舞う勇壮な曲。天竺清凉山のありさまを描き、千丈の断崖絶壁から子獅子を突き落とす親獅子の試練を語る。

山口高女生１５０人は学徒特攻隊として昼夜２交替の労働を強いられ、１６歳の青春を「風船爆弾」の製造に明け暮れた。戦争の悲劇、愚かしさを訴える。◆「風船爆弾」は和紙をこんにゃく糊で張りあわせた直径１０メートルの気球に爆弾を吊し、およそ１万個を風に乗せて飛ばしアメリカ本土の直撃を図るというもので「ふ号」と呼ばれる秘密兵器だった。戦後４０年が過ぎて、爆弾を作った女性たちはこの風船爆弾がアメリカ本土に到達し、オレゴンの牧師夫人と子供６人が犠牲となり“オレゴンの悲劇”として語り継がれていると知った。

主人公はイタリアの文化人類学者・写真家・登山家であるフォスコ・マライーニさんと作家・脚本家である長女ダーチャ・マライーニさんの父娘。写真家として戦前戦後の日本の様子を記録したフォスコさんは、１９４３年（昭１８）ムッソリーニ政権が倒れ、イタリアが敵国となったために、名古屋市内の強制収容所に入れられた。ここで彼は警官の食料横流しにより飢えに苦しみ、抗議のため斧で左小指を切断した。５０年ぶりに訪日した父娘を軸に、戦争の愚かさ、自由の尊さを訴える。

１８００年代も終わりに近づいたオーストリア。ウィーン１３区の貧しい家に生まれた天才画家グスタフ・クリムトは、若くしてブルク劇場新築の装飾画を描き、一躍富と名声を得て将来を嘱望された。しかし、やがて彼は美術界に反発して分離派を結成する。以来、金箔を多用した独自の画法で、自分の信ずる道を歩きつづけた。世紀末の華やかで混沌とした空ろな時代そのものをキャンバスに閉じ込めようとした、異色の画家クリムトを描く。◆グスタフ・クリムト（１８６２〜１９１８）「愛」１８９５、「エミリー・フレーゲの肖像」１９０２、ウィーン１３区最後のアトリエ、ウンターアッハ湖畔の避暑地

「かぎろいの丘」と呼ばれている奈良の大宇陀を散策し、薬草園をはじめ歴史の足跡を見て歩く。◆大宇陀は奈良県の東北部、山と高原の南端にあり、宇陀川沿いの小盆地に開けた高原の町である。四方を山に囲まれた大宇陀は、古くから薬草や山菜の宝庫であった。江戸時代には織田信長の次男・信雄がこの地に入り、以後８０年にわたって織田松山藩２万８０００石の城下町として栄えた。◆森野旧薬園は２５０年ほど前に開かれた薬草園で、１９代目当主・森野藤助さんの手によって、現在も２５０種あまりの薬草が守り育てられている。

「智恵子抄」などで知られる芸術家・高村光太郎と智恵子の運命的な出会い、智恵子が求めた新しい女の生き方、光太郎との美しくも壮絶な愛を描く。◆パリ帰りの光太郎は女子大を出て画家をめざす智恵子と恋に落ち、同棲生活を始める。光太郎は塑像・木彫、智恵子は絵に取り組むが生活は苦しい。智恵子の文展出品作は落選、福島の生家も破産する。彼女は自分の才能への不安や古い家族制度に押しつぶされ正気を失っていき、心身ともに疲れ果てて睡眠薬自殺を図る。一命はとりとめたが精神に異常をきたした智恵子はそれまでとは異質の絵を描き始める。