江戸時代中期の作品「風俗百人一衆」の人形作家、清水隆慶。この作品は彼が５９歳の時のもので、これ以前の作品は存在を確認されていなかった。仏教大学・杉山教授の協力を得て、江戸時代の仏教彫刻に名を残した宝山寺・湛海の作品の中に隆慶の作があるという説のもとにその検証を試みた。京都の清水家に残る文書や肖像の調査、さらに設計・開眼が湛海、手伝作者が隆慶という元興寺の不動明王像の調査、隆慶作の湛海風の軍荼利明王像の発見などから、隆慶は湛海の死まで名を秘していたことが明らかになった◆清水隆慶作・風俗百人一衆、関羽像、富士見西行立像、金剛力士像、軍荼利明王像、地蔵菩薩

『熊野』は平家物語海道下りのエピソードを能に仕立てた作品で、三番曲の鬘物として親しまれている情緒豊かな作品。◆平宗盛の愛人・熊野は年老いた母が病なので暇を願い出るが許されず、清水の花見に同行させられる。熊野が母の身を案ずる歌を詠むと宗盛もさすがに哀れを感じ暇を与える。現実の空間と時間の中で進行する現在能の傑作の一つ。◆副音声は英語

「昭和の爆笑王」と呼ばれた型破りの落語家・林家三平。彼が３０年間にわたって自宅で綴ってきたメモやネタ帳が、十三回忌を機会に家族の手で開かれた。長男・林家こぶ平や関係者の証言を交え、あまり知られていない林家三平像を浮彫りにする。◆「どーもすいません」「もお大変なんすから」など、おなじみのフレーズで観客を引き付けた林家三平。先代林家正蔵の長男として生まれ、昭和２２年に父のもとに入門、落語家になる。３３年に真打ち昇進、テレビ出演などでスターになるが寄席にも終生出演し、独自の芸を磨き上げていった。

北海道アイヌ民族の測量技術者・川村カネト（１８９３―１９７７）が手掛けた長野県の鉄道・飯田線の誕生物語を紹介するドキュメンタリー。ビッグＨＩＰＳ特別編。

高度経済成長、ベトナム戦争、若者たちの反乱などに象徴される激動の時代・１９６０年代、「ウルトラセブン」を制作していた円谷プロを舞台に、脚本家、俳優、特撮現場のスタッフなど２０代の若者たちの作品にかける夢と情熱を描く。（全２回）◆１９６８年（昭和４３）夏、沖縄返還問題などを契機に巷では学生運動が激化していた。ウルトラセブンの撮影も大詰めを迎え、最終回は仙台ロケに決まった。ある夜、仲間と呑みに行ったゆり子（田村英里子）は主役・ダン（松村雄基）の元恋人・直子（日向薫）に会う。ロケ隊が仙台に行くと聞いた直子は、ベトナム戦争の脱走兵マイケルを一緒につれていってくれと頼む。根室から密航船が出るのだ。ゆり子はダンと協力してマイケルを助ける。

全国各地の自然を舞台に“外遊び”の多様な楽しみ方を紹介する「アウトドアＴＶマガジン」。レギュラー出演は中本賢、陣田耕二、玉利祥子、松井秀、ナレーターは松のちよみ。（１９９０年１０月３日～２００３年３月２９日放送、全５３４回）◆漂泊の俳人・松尾芭蕉が江戸からみちのく、越後、越前を経て大垣に辿る「奥の細道」の旅を終えたのは元禄二年（１６８９）のこと。旅を結んだ大垣には「奥の細道結びの地」の記念館がある。そのほとりを流れる水門川。かつては揖斐川を経由して東海道の宿場町、桑名へつながる重要な交通路だった。芭蕉は旅を終え、この水門川を下って「蛤のふたみにわかれいく秋ぞ」という句を残し、桑名から伊勢の二見へ向った。◆そこで、ドンキ隊は芭蕉にあやかってカヌーで水門川を下りながら俳句を詠んでみようと思い立った。時代は変わっても、水辺の風景はいまも田園風景が広がり、カモたちが飛び交い、風情はそれなりの情緒が広がっている。俳句など嗜んだことのないドンキ隊でもそろりとカヌーを漕ぎ出せば、意外や意外、実にいい句が次々と浮かんでくる。風情がそうさせたのか、あるいは芭蕉が喜んだのか。感性が自然と一体となって、また新しいアウトドアの遊び方を発見する。

「東海道中膝栗毛」と落語「東への道」に依りながら、江戸・大阪からの参宮の道すじをたどる。遷宮特別企画。総合司会は森本毅郎。◆第五回「伊勢参りへの道　東海道編」。かつて多くは、農村で講を組織しての集団代参だったので、豊作と繁栄を祈願して、途中と周辺の神社仏閣に参詣。伊勢神宮が終着点になった。「弥次喜多」の立ち寄らなかった道中の箱根神社や清見寺など、あまり知られていない神社や寺、関所、本陣の今の姿、食べもの、名産などを見ていく。◆大阪からは、若手落語家たちが滑稽な道中記を追体験する。

遺書を残すことすら許されなかったシベリアの収容所（ラーゲリ）。そこで亡くなった一人の抑留者の遺書を暗記して日本の遺族に伝える仲間達を描くドラマ。◆元満鉄社員の山本は現地で招集され、敗戦後はスパイ容疑で戦犯にされ、シベリアの収容所に送られた。寒さと飢え、重労働で、抑留者たちは次々と倒れていく。山本はロシア語の新聞から国際情勢を読み取り、元獣医少尉の野崎、農村出身の新田、土工だった森口らに帰国の希望を捨てるなと説き、句会を始めて仲間を励まし続ける。しかし昭和２９年、山本は病に倒れ、家族の名を呼びながら息を引き取る。