能面師の源五郎は、名人気質の上に大酒飲み。家計はいつも火の車である。年の瀬、女房に促されて注文の鬼女の面を彫り上げ、観世太夫の屋敷に届けさせた。酒乱気味の太夫は「金欲しさの一夜仕事だ」と面を割り、息子の源の助を追い返す。恥じた源五郎はその夜自害して果てる。後年、名人と評判の立った源の助は観世太夫に鬼女の面を依頼され、代金は要らぬと舞を所望した。

１９４６年に９日間でＧＨＱが作りあげた日本国憲法草案。２５人のメンバーの中で、人権を担当したベアテ・シロタ女史が１９９３年４月に来日した。その訪日を機に、彼女が書いた草案の内容を紹介する。◆リストの再来といわれた名ピアニスト、レオ・シロタの娘でウィーン生まれの彼女は、１９２９年山田耕筰の招きで一家で来日。５歳から１５歳までを東京で過ごしていた。その時に日本女性の悲しい立場を知っていたシロタ女史は、２２歳の若さで人権条項という重要な部門を担当すると決まってただちに世界各国の憲法を研究、膨大な草案を書きあげたがその多くは生かされなかった。若い女性が憲法草案を書いたということが改憲の口実にされることを恐れ、彼女は友人にもそれを語らなかった。

青森県域の風土や産業、人々の暮らしなどを記録したドキュメンタリー番組。（１９９２年４月５日～１９９４年３月２７日放送、全３６回）◆青森県大鰐町のはずれに存在する独立王国「ひばの国」を紹介する。ひばのくにには、豊かな自然に囲まれた地域が自信と誇りを持って光輝いていくためのヒントがある。

日本各地の特色ある小さな美術館を、豊かな自然と美術館の空間イメージの映像をふくめて紹介し、芸術家たちの作品の魅力とその楽しみかたを伝える。◆セゾン現代美術館は、故堤康次郎氏の収集品を保存し一般に公開してきた高輪美術館の収納、展示活動を継承している。昭和５６年に長野県軽井沢町に開館、日本の伝統美術を紹介してきた高輪美術館の方針にくわえ、新たな方針として現代美術の収集展示をはじめた。２０世紀の美術の流れをあとづけ、現代美術史上欠くことのできない国内・海外の作家の作品を系統的に収集することを基本理念としている。

長唄が歌舞伎の伴奏から離れて独自の音楽として発展し、演奏会用に作曲されたものの代表的作品である。◆四季折々の江戸名所を朝から晩にかけて詠み込んだ名曲で、四世杵屋六三郎の作曲である。八景とあるように江戸名所を８つ取り上げ、場所により曲の表情を変えている。江戸の美意識が伝わってくる曲で、お座敷長唄の代表曲である。◆「吾妻八景」唄杵屋佐登代（重要無形文化財保持者）、杵屋佐美奈、杵屋佐臣、三味線今藤綾子（重要無形文化財保持者）、今藤郁子、上調子今藤長十郎。◆副音声は英語

四国霊場第五十一番札所の石手寺は、古代から名を残す松山の道後温泉と深く関わり、弘法大師によって救われたという伝説の人・衛門三郎とも縁が深い。昔、安養寺といった寺名が衛門三郎伝説によって石手寺と改名されたいきさつや、道後温泉の由来記、遍路信仰などを織り混ぜて、古来伊予の国の風土が産んだ古刹の石手寺の全貌を解き明かす。現代も絶えることのないお遍路さんの八十八ヶ所めぐりの原形を追い、篤い信仰の源をさぐる。◆【国宝】石手寺二王門、石手寺金剛力士像【重要文化財】石手寺本堂・三重塔・鐘楼・訶梨帝母天堂、石手寺護摩堂、石手寺銅鐘、松山城戸無門・天守閣

日本文学の名作を当代一流の演出家が競作する２回連続のテレビドラマシリーズ。この回は平凡な生活に退屈し、許されぬ恋いに溺れていく上流夫人を描く三島由紀夫の「美徳のよろめき」を脇阪時三が演出する。（１９９３年６月２８日・７月５日放送、全２回）◆節子（藤谷美和子）と土屋（阿部寛）は密会を重ね、そのうちに土屋の子を身籠った節子は中絶手術を受ける。見舞いに来た親友の与志子から土屋の浮気を知らせられ夫との生活に戻ろうとするが、夫や子供に後ろめたい気持ちを抱きながらも土屋との愛に溺れる自分を止めることができない。

地域に根差した発想と舞台で、ＮＨＫ地方局が制作するドラマシリーズ。第２回はＮＨＫ福岡。数多くのミュージシャンを生んだ博多を舞台に、音楽に打ち込む５人の若者の夢と葛藤を描く。◆福岡のアマチュアバンド「ナイトフライト」は、東京進出を前に博多最後のライブ“ラストパーティー”を企画していた。しかし当日になって東京の音楽事務所から、バンド５人全員でのデビューは難しいと連絡が入る。選ばれた２人と残される３人、ライブ目前でメンバーたちは口論を始める。