広島・長崎に原爆が投下されて５０年。加害者、被害者という立場を超え、被爆を大きな悲しみとして伝える朗読劇の上演が計画された。国籍を問わない呼びかけに応えたのは、日本のほか、アメリカ、中国、ドイツ、韓国、フィリピンなどの若者たち。戦争のことを学びながら、真摯に取り組む彼らの姿を通して「核」に対する世界の視線を伝える。また、国連における日本の核に対する対応の変遷や、核実験場となったフランス領タヒチの人々の思い、多くの人が放射線症に苦しむチェルノブイリの現状なども伝え、日本が世界で果たすべき役割について考える。

ＴＢＳの旧テレビ局舎を舞台に、３人の脚本家が競作したオムニバスドラマ。◆第１話、山田太一脚本「写真の裏」：ドキュメント番組のディレクター・日下部の元へ、久美と孫の民子、民子の夫の藤八の３人が押しかけてきた、以前に日下部の番組に貸した写真を返して欲しいと言う。写真は戦死した久美の夫を出征直前に撮ったもので、裏には妻への思いがつづられていたのだと言うのだが。◆第２話、市川森一脚本「あの人だあれ？」：ＴＢＳに一つの小包が届けられた。宛名は“マッちゃん様”。面倒見が良く、あらゆる番組の雑用を器用にこなすマッちゃんは局の誰からも愛される人気者だった。ところがどのセクションにも彼に該当する人物が見当たらない。警備の村井は上司からマッちゃんの正体を突き止めるよう命じられる。◆第３話、早坂暁脚本「猫坂の上の幽霊たち」：キャスターの筑紫と俳優の山崎は取り壊されかけたスタジオでトンネルを発見。不思議な音と共に、２人は昭和１１年（１９３６）にタイムスリップ。中橋中尉の号令の下、二・二六事件が起きたところだった。次にタイムスリップすると今度は勝海舟が現れる。

歌舞伎には人形浄瑠璃のために書かれた作品を移したものが多い。この回は歌舞伎と文楽の演出の違いを比較する。◆『絵本太功記』十段目から鼠引きの場面など５つの場面で比較する。歌舞伎と文楽は共に栄えた芸能であるが、文楽が構成された文章の力で観客をジワジワと引き寄せて感動させるのに対して、歌舞伎は花形の役者が演技で見せ場を作って楽しませる。◆「絵本太功記」十段目鼠引きの場面歌舞伎中村芝翫、文楽、三世吉田簑助。◆副音声は英語

１９９４年１１月、ポーランドの古都・クラクフにオープンした日本美術館には、浮世絵５０００点が収蔵されている。これらの絵を集めたのはポーランドの資産家、フェルクス・ヤシェンスキ。彼が破産に至るまで収集した浮世絵は今も往時の色彩をとどめている。同館開設には映画監督アンジェイ・ワイダ氏の尽力があった。日本の浮世絵のとりこになった一人のポーランド人の数奇な運命をたどる。

太平洋に面した漁業の町、宮城県志津川町の初夏の１日はうにカギ漁のための貴重な日。５メートルにも届く竹竿の先端の鉄の爪でひっかけてウニをとる。もうひとつ、箱めがねが漁には必要。遠藤さん一家はおじいさんの代に漁業を始め、今は孫が３代目を継ぐべく修行中。民宿を営む遠藤さんのこだわりは、自分の手でとった活きのいい魚やウニを自分の手で料理し、お客さんには志津川の空気を吸いながら食べてもらいたい、ということで、そのために一家全員が協力している。魚をとる人たちの守り神、荒沢神社の宮司は和紙でお飾りを作る。毎年、新しいお飾りを作って、２百人の氏子一人一人に手渡しするため、この季節から作り始める。

山また山、宮城県の端の栗駒町は森林が面積の７０パーセントを占める。標高１６２８メートルの栗駒山は５月から６月にかけて残雪が馬の形をつくる。地元の人たちは「駒姿」（こますがた）と呼び、その形によってその年の農作物の出来を占ったりしてきた。山麓は若葉の季節、ブナの原生林では葉が日光を透かして輝く。栗駒山から流れ出た清流が緑を縫うように山腹を伝って行く。三追川（さんのはざまがわ）は、イワナ釣りには絶好の渓流。二追川（にのはざまがわ）のほとりでは８６歳の千葉さんが昔ながらの藍染めをしている。染め上がった布をこの川で洗い、仕上げも昔のままのやり方だ。千葉さんの藍染めは「正藍染」と呼ばれている。自然にすべてを委ねた他に類を見ない手法は、昭和３０年の国の重要無形文化財に指定されている。深山牧場は５月中旬から半年間、農家の牛を預かって放牧する。世界谷地原生花園、栗駒山の中腹に広がる湿原で、高山植物が可憐な花をつけていく。

近代日本における宗教の役割を、宗教学者・山折哲雄と作家・司馬遼太郎両氏の対論により３夜連続で検証する。◆第一夜は「神仏を捨てた日本人」として、近代化百年の軌跡をたどる。明治以降の近代化の代償として、日本人はいかに多くのものを失ったか。「宗教不在」「明治維新」「国家神道の解体と政教分離」などをテーマに対論する。

創設５０周年を迎えた群馬交響楽団の足跡をたどる。◆昭和２０年（１９４５）「高崎市民オーケストラ」として産声をあげた群響。映画「ここに泉あり」でも紹介されたように、幾多の困難を乗り越えてきた。創設当時のメンバーを始め、群響をここまで育ててきた数多くの関係者にインタビューし、チェコやウィーンで演奏会を開くまでに成長した群響の歴史を追う。