１９９０年代前半、アセアン各国は奇跡的経済成長を遂げて世界経済の希望の星とまでいわれていた。アセアン諸国をリードしていたタイとマレーシアの首都バンコクとクアラルンプールの光と影をそれぞれに描く。◆バンコクでは、クロントイ・スラムや麻薬捜査官の日常を紹介しながら、一局集中が進む大都市が抱えるひずみを浮彫りにする。クアラルンプールでは日系企業２社を舞台に、マレーシア系・中国系・インド系の入り乱れる多民族国家の問題、戒律の厳しいイスラム国家であることからくる問題への対応を考察する。

　渡良瀬川の畔に、幕末から維新の時代を自由奔放に生き抜いた画人、田崎草雲の美術館がある。草雲は２０歳の時、画の道に志して脱藩、江戸に出て赤貧の中で糟糠の妻を失う。妻の死後、足利に戻った草雲は、剣術に長け、大酒呑み、喧嘩草雲といわれながらも、絵師として重きをなした。維新の動乱には、領内の治安を守り、足利学校の蔵書の散逸を防ぐなど、武士らしい働きもした。豪放かつ繊細な画業を見る。（足利市）

内戦の続く旧ユーゴ沖、アドリア海に浮かぶラジオ船「言論の自由」号は、どの勢力にも属さない中立の海上ラジオ局「ブロド」の本拠。その活動と船内生活を伝える。◆ユーゴ分裂で内戦が起こり、各勢力は味方に都合の良い一方的な報道を流してきた。和平を願うジャーナリストたちがＥＵの資金援助を得、公平中立な報道を目指して設立したのが「ブロド」。船内の記者はセルビア人あり、クロアチア人ありで旧ユーゴの縮図だが、各勢力のメディアが悪意に満ちた情報を流して起こる悪循環を断ち切ろうと中立に徹する。

真言八祖・弘法大師空海ゆかりの寺、四国讃岐の善通寺。讃岐に生まれ、四国の山野で修行した空海は、中国で師・恵果に密教の教えをことごとく伝授され、帰国後日本における真言密教の基礎を確立した。その空海が建立した善通寺は、土地の豪族だった父・佐伯善通の名を寺名とした。偉大な宗教家・空海は、一方では四国満濃池などの治水を行い、また京都の綜芸種智院創設など庶民の学問普及にも力を尽くした。弘法大師の聖地・善通寺を中心に、その足跡をたどり理想を探る。◆【国宝】金銅錫杖頭（善通寺）、一字一仏法華経序品（善通寺）、聾瞽指帰（金剛峰寺）、弘法大師請来目録（東寺）【重要文化財】弘法大師行状絵詞（延暦寺）

京都と奈良を結ぶ街道に沿う要所として栄えた井手町は、豊かな自然に恵まれた町である。多くの歌人にも愛され、『蜻蛉日記』や『更科日記』にも歌われている。郷土史家の古川章さんとともに、玉川下流から始まるハイキングコースを歩く。

昭和初期から現在までの日本の経済の実態を分析し、未公開資料証言を交えて“日本株式会社”の成立過程を紹介する４夜連続シリーズ。◆第２回は、太平洋戦争をはさんで官僚主導で構築されていった今日の日本型システムの理念と成立過程を明らかにする。太平洋戦争の遂行のために発足した企画院は、金融統制、株主の排除、雇用の長期化などの改革案を次々に実行に移した。戦後の財閥解体を進めたＧＨＱや経済安定本部の改革も、この延長線上にあった。データ分析によって“日本株式会社”の発達過程とその舞台裏を描く。

京都市上京区にある日蓮宗本山・本法寺は、室町時代に日親上人によって開山された。本阿弥光悦の曾祖父が日親に帰依したことから日蓮宗は財力のある有力町衆を後ろ楯として多くの法華信者を集めた。能登・七尾の本法寺末寺の信者・長谷川等伯はその縁を頼って上京し、狩野派の強い勢力の中にあって画業に専念、やがて天下人の絵師となる。本法寺に登場した等伯・光悦という二人の大芸術家の偉業と桃山文化、その源となった町衆と法華文化の軌跡をたどる。◆【国宝】智積院障壁画【重要文化財】仏涅槃図（長谷川等伯筆）、日通上人像（等伯筆）、華唐草文螺鈿経箱（本阿弥光悦作）、妙説修行抄（光悦筆）

金沢の風土・文化・伝統・産業に大きな影響を与えてきた二つの川、犀川と浅野川を、それぞれを愛し見つめつづけてきた人たちの目を通して描く。◆洋画家の大滝由季生さんは犀川にこだわり描き続けてきた。カメラマン詩丘武司さんは変わりゆく浅野川の表情をフィルムに収め続けてきた。それぞれの川をこよなく愛してきた二人の目を通して、金沢が最も金沢らしい表情を見せる晩秋から冬への情景を描く映像詩。