琉球舞踊四題を沖縄から紹介する。琉球舞踊には首里王府で育まれた”古典舞踊”と、明治以後、一般民衆の生活のエネルギーを舞台にのせた”雑踊”（ぞーおどり）の二種類がある。「本花風」（むとぅはなふう）は愛する人を見送る別離の踊りで、女がかざす棕櫚団扇の優雅な動きが見どころ。「麾」（ぜい）は五穀豊穣を祈る男踊り、雑踊の傑作「加那よー天川」は相思相愛の男女の愛情を軽妙に表現したもの、また古典舞踊の「諸屯」（しゅどぅん）は極端に抑制された動作が特徴的である。

江戸に武家の娘・お露と浪人・新三郎がいた。２人はある事件を通じて恋仲になるが、お露は殺されてしまう。それでも恋路を遂げたいお露は、幽霊となって新三郎の前に現れる。死とエロティズムが漂う物語。◆旗本・飯島家にはお露（宮沢りえ）という美しい娘がいた。彼女の周りには浪人の新三郎（豊川悦司）や考古学者の泥星（六平直政）、役者修業中の風馬（和泉元彌）らが出入りしている。しかし新三郎は浮世絵師の贋作事件に巻き込まれ、濡れ衣を着せられて投獄された。お露は新三郎に恋心を持っていたが、彼に横恋慕する左源太（篠井英介）に殺されてしまう。牢から出てきた新三郎はお露が死んだとも知らず、幽霊となって会いに来たお露との恋に夢中になる。だが、幽霊と生身の人間の恋は人の身を滅ぼす。お露は新三郎だけは生きてほしいと願い、別れを選ぶ。

１９４６年に９日間でＧＨＱが作りあげた日本国憲法草案。２５人のメンバーの中で、人権を担当したベアテ・シロタ女史が１９９３年４月に来日した。その訪日を機に、彼女が書いた草案の内容を紹介する。◆リストの再来といわれた名ピアニスト、レオ・シロタの娘でウィーン生まれの彼女は、１９２９年山田耕筰の招きで一家で来日。５歳から１５歳までを東京で過ごしていた。その時に日本女性の悲しい立場を知っていたシロタ女史は、２２歳の若さで人権条項という重要な部門を担当すると決まってただちに世界各国の憲法を研究、膨大な草案を書きあげたがその多くは生かされなかった。若い女性が憲法草案を書いたということが改憲の口実にされることを恐れ、彼女は友人にもそれを語らなかった。

豊かな自然と各地に暮らす人々の風景を、美しい映像と人間味豊かな内容で伝える紀行番組。◆神奈川県内の相模湖は、昭和２２年、相模ダムの建設で誕生した人造湖である。美しい湖畔の中に、昔の養蚕地帯の面影を訪ねる。湖ができる以前この一帯は、日本の絹を支えた大養蚕地帯であり、今も古い機織りなどが暮らしの中に息づいている。ゆかりの場所や昔を知る人々の話、そして身近なリゾート地となった現代の湖畔の様子を紹介する。

日本の伝統芸能・工芸技術から実用技術・工作まで、現代に生きる“ワザ”を紹介するドキュメンタリー。（１９９３年４月４日〜１９９６年３月３１日放送、全１４０回）◆伝統芸能・歌舞伎の華やかな舞台を影で支える「黒子」。文字通り黒い衣装に身を包み、舞台の役者を支える。普段は見られない黒子の仕事にスポットをあて、その知られざる素顔と市川猿之助・スーパー歌舞伎の魅力を紹介する。

１９９２年５月、新潟県長岡市に誕生した日本初の仏教ホスピス「ビハーラ病棟」。ここで暮らす４人の末期ガン患者を１年に亙って取材、ふるさとの懐かしい風景と家族に囲まれて過ごす日々を見つめる。◆ビハーラとはサンスクリット語で「やすらぎの場所」の意味。苦しみを伴う延命治療はせず、医師や看護婦、僧侶が絶えずそばにいて、身体の痛みや死への不安に手を差し伸べる看取りの場がこのホスピスの理想である。

１９９２年８月２２日に札幌市内の病院で静かに息を引取った、ドイツ人音楽家、オットー・ビット。北海道放送では、４年前からビットさんに密着取材し、ビットさんの波乱に満ちた人生を描いたドキュメンタリーを制作した。世界的バンドネオン奏者オットー・ビット氏に捧げる追悼特別番組。◆１９１８年ドイツに生まれたビットさんは、幼少時から手にした楽器バンドネオンの奏者として、若くして頭角を現す。ドイツ国内はナチスが台頭し、全体主義に突き進む“暗黒の時代”であった。ビットさんも戦線に招集され楽器を銃に持ち替えざるを得なかった。ドイツ第三帝国が崩壊し、彼の音楽家としての才能は一気に開花する。クラシックそしてアメリカ音楽。彼は貪欲に様々な音楽を吸収し、沢山の曲を作曲した。５９歳の時に日本人女性と結婚し、今は札幌で静かに暮らしている。重い病気を患い楽器を演奏できなくなった老いた彼の夢は、妻の故郷・札幌で再びバンドネオンの素晴らしい音楽を提供することだった。１９９１年１１月、夢は実現した。札幌交響楽団の協力で８０名のオーケストラ編成でタンゴ演奏会を開催したのだ。ビットさんと指揮者・南安雄による入念なオーケストレーションのチェック。コンサート当日、ビットさんと南指揮のミュージシャンシップが実を結び、また、ビットさんがこの日のためにと補筆した譜面にならい、美しいタンゴが甦った。

江戸初期の名画として国の重要文化財に指定されている「芦雁図」という六曲一双の屏風。その作者はなんと剣豪・宮本武蔵である。彼が画や書をたしなんだことは知られているが、単なる手慰みの域をはるかに超えている。剣豪と画家、どちらが武蔵の本当の顔なのか。武蔵の確かな記録は「五輪書」のほかには最晩年のものしかなく、多くの人が持つイメージは小説によるもの。それ以前には親の仇・佐々木小次郎を討つ仇討の講談で、そこでの小次郎はひげ面の悪党であったりした。足跡と遺品、そして作品から、武蔵の実像を追う。◆【重要文化財】芦雁図【その他】枯山水、枯れ木百舌、宮本武蔵肖像、唐草模様鍔、無銘金重