鳥取県の中央に位置する三徳山。海抜９００メートルの全山を寺領とする三仏寺の堂塔が、峨々たる原始の森の中に点在して現存している。修験道の始祖・役行者が、断がいの岩窟に堂を投げ入れたという『投入堂』。人を寄せつけぬ絶壁の中空に、奇跡のように今も美麗な姿を見せている。目もくらむような急坂をよじ登り、鋭い仰角でしか全容のわからぬ三仏寺にカメラを運び、その昔いかにして絶壁の岩場に堂を建てたか、自然と人工の妙を探る。◆【国宝】三仏寺奥院（投入堂）◆【重要文化財】三仏寺納経堂、地蔵堂、文殊堂、蔵王権現立像〔三仏寺〕、聖観音立像

１９世紀半ば、イギリスのロイヤル・アカデミーの保守性に反発した画家の集団・ラファエル前派（Ｐ．Ｒ．Ｂ．）の、若いグループの軌跡を追う。リーダーであるロセッティの女性探究の遍歴を中心に、個性あるそれぞれの人生の岐路を跡づける。神話を題材に女性を表現したロセッティの絵は、当時留学中であった夏目漱石をもとりこにした。ロセッティの芸術性のほか、思い思いの道を歩んだメンバーの、若き情熱と人生の処し方の違いや軌跡を比べる。◆ダンテ・ガブリエル・ロセッティ（１８２８〜１８８２）「聖母マリアの少女時代」「我は主の婢女なり」「プロセルピーナ」「ベアタ・ベアトリクス」「ロンセロット卿の幻想」「七塔の調べ」「白日夢」最終作

アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９３年３月９日終了、全１１回）◆第２回はマゼランの世界一周旅行によって西欧に初めて知られたフィリピン・マクタン島。戦いで侵略者マゼランを殺した島の英雄・ラプラプ王の子孫たちは海辺で静かな暮らしを営んでいる。マゼランが下り立った浜辺を舞台に、西洋文明と出会った島の変貌ぶりを紹介する。

寛政年間に彗星の如く登場し、１０カ月で１４０数枚の役者絵を描いて、江戸の街を一陣の風のように通り過ぎていった天才浮世絵師、東洲斎写楽。短い活動期間の後は歴史の流れの中へと沈んでしまったが、一人のドイツ人によって世界の三大肖像画家と評価され、逆輸入の形で日本の代表的絵師として再登場する。旧来の様式的浮世絵から脱皮し、役者の人生を読みとり、役者絵の向こうにある人間そのものの本質を描こうとした絵師だった。◆東洲斎写楽（？浮世絵などを１７９４．５から１０カ月間制作）「四世若井半四郎の乳人重の井」「役者大首絵」「三世佐野川市松の祇園町の白人おなよ」「三世瀬川菊之丞の田辺文蔵妻おしづ」

東京に嫁いだ名古屋の娘の離婚、妊娠発覚、そしてもう一度同じ相手との再婚までの泣き笑いを”名古屋流”につづる。「名古屋嫁入り物語」シリーズの第４作。◆伊藤昭平（植木等）は校長を定年で辞め、今は名古屋市の人生相談室長。３年前東京の獣医に嫁いだ一人娘の名津（大場久美子）が突然戻ってきて、離婚すると言い出す。他の大都会と比較して離婚率の低い名古屋。離婚は家や一族の恥、名古屋の嫁は辛抱が美徳、離婚は許さぬと、昭平はしぶる名津を連れて謝りに上京。が、たちまち姑の東京風と対立、大げんかとなる。

竹本住大夫さんと鶴澤燕三さんの義太夫「生写朝顔話・宿屋の段」を鑑賞する。◆「生写朝顔話」は「朝顔日記」ともいい、芝居や歌舞伎のファンにはお馴染みの江戸時代版『君の名は』。この「宿屋の段」は、別れ別れになっていた主人公の男女が宿屋で思いもよらぬ再会を果たすというくだり。◆住大夫さんは「主人公・深雪の可愛らしさをどう表現するか」。燕三さんは「失明した深雪の悲しさを秘め、しかも音曲として楽しめる演奏」と、この作品を演ずる難しさを語っている。

人の心のゆらめきを小さな虫たちの一生に重ねて、６つの短編連作でつづる愛の物語。◆昆虫が大好きな小学校３年生の亮太は、祖母の節子と関東北部の海辺の町で暮らしている。母親の百合子は亮太が幼いころ離婚し、東京で働いているので、亮太はずっと百合子の実家に預けられて祖母に育てられてきた。夏休みのある日、めったに姿を見せなかった百合子がやってきた。東京へ連れて帰ると言われて初めは単純に喜ぶ亮太だったが、やがて大人の勝手な思惑を感じ取り、母を拒んでしまう。

柿本人麻呂の歌にも詠まれたかぎろひの里・阿騎野。この地で生まれ育ち、阿騎野を撮り続けた写真家の作品とともに、秋の山里を散策する。