雪深い新潟県の永林寺に数々の欄間彫刻の名品を残した幕末の彫刻師・石川雲蝶。江戸雑司ケ谷で生まれ、２０歳の時にはすでに彫刻師として名声を得ていた。「郷里の寺に欄間を彫って欲しい」という新潟・三条からきた金物屋の頼みに、“よい刃物”と“酒”の二つの条件を付けて応える。三条の寺の欄間は雲蝶の死後まもなく焼失したが、南魚沼郡堀之内町の「永林寺」にはその力量を存分に発揮したと思われる作品が多数残されている。『黒雲の中の白い蝶のように』と生きた雲蝶の作品を紹介しその真髄に迫る。◆永林寺・欄間彫刻、牡丹と孔雀、波に金鯉、天女、天ノ邪鬼香炉台、小夜の中山蛇身鳥物語「出発の図」「仙人の図」◆西福寺・天井彫刻、道元禅師猛虎調伏の図

近頃、横町に新規開店したうなぎ屋。主人が変わり者なら、雇われた板前も変わり者。その二人が喧嘩して、とうとう板前は店を飛び出してしまう。そこへ客が冷やかしにやって来た。

荻江節による「高尾」を新進の藤間豊太郎の舞で鑑賞する。吉原の名妓・高尾太夫の亡霊が廓の生活や地獄の責め苦を語る名作である。七代とも十一代いたとも云われる高尾太夫は、新吉原の花魁の象徴的な存在であり、江戸の庶民や文人墨客の関心を集めた。世に高尾ものという種々の作品について、渡辺保が考証する。番組後半は、文化庁の舞台創作芸術特別賞を受賞した、沢井比可流の創作邦楽の演奏を聞く。ロックの世界から、両親が携わる箏の魅力に気づき、創作に着手した作品。

１９９２年８月に放送して好評を得た、武田鉄矢の自伝エッセイを原作にしたドラマ・第一部の総集編。昭和３６年の九州・博多を舞台に、たばこ屋を営む岩田家の人間模様、鉄矢少年の成長を明るく楽しく描く。（前後編、２夜連続）◆後編。飲んだくれの父・克元（近藤正臣）が失踪した。捜してくれた友人によると、飲み屋の女と一緒に温泉にいるという。母・キク（桃井かおり）は憤然と旅館に踏み込んだ。その時は毅然としていたキクも、だれもいない家に帰ると思わず涙がこぼれ、離婚も考える。一方、鉄矢（阪本浩之）も初恋の人には去られ、友達と作った隠れ家も無残に壊されてしまう。

日本文学の名作を、日本を代表する演出家がテレビドラマ化するシリーズ。（前後編）◆母が離婚して家を出て以来、主婦と母親の２役を務めてきた娘に縁談がまとまり、父子家庭に波紋がひろがる。そこへ突然の破談。娘の心は揺れる。◆破談が納得できず悶々とした日を送るしず子に叔父の素香が両親の隠された過去を話す。むつ子は、女学校を出てすぐに妊娠したが、恋人の大学生が急死。義平はすべてを承知でむつ子と結婚し、生まれてきたしず子をわが子として育ててきたのだ。しず子の誤解が解けた矢先、義平が持病の発作で倒れる。

琉球舞踊四題を沖縄から紹介する。琉球舞踊には首里王府で育まれた”古典舞踊”と、明治以後、一般民衆の生活のエネルギーを舞台にのせた”雑踊”（ぞーおどり）の二種類がある。「本花風」（むとぅはなふう）は愛する人を見送る別離の踊りで、女がかざす棕櫚団扇の優雅な動きが見どころ。「麾」（ぜい）は五穀豊穣を祈る男踊り、雑踊の傑作「加那よー天川」は相思相愛の男女の愛情を軽妙に表現したもの、また古典舞踊の「諸屯」（しゅどぅん）は極端に抑制された動作が特徴的である。

作家・吉村昭の「桜田門外ノ変」を原作に、ドラマと史料で幕末の激動の時代を映像化した歴史ドキュメンタリー。◆１８５６年ハリス来航。開国か攘夷か、幕府としての判断を迫られた大老・井伊直弼（長門裕之）は、水戸藩・徳川斉昭（佐藤慶）の攘夷論を押さえて謹慎を申し付け、開国に踏み出す。水戸藩の有志は江戸へ出奔し、井伊暗殺を図る。その一人・関鉄之介（川谷拓三）の事件前後の詳細な日記を縦糸に、開国・倒幕へと動きだす時代のうねりを描く。

多くの名作ドラマやドキュメンタリーの演出で知られる今野勉が、炭坑夫だった父からきいた不思議な伝承の生まれた背景を探る、自伝的ドキュメンタリー。◆死んだはずの坑夫が命を落としそうになった坑夫を助けに現れたという物語や、ガス爆発で火傷を追った坑夫の家を見舞い客に化けた狐が訪れ、かさぶたを食べさせて殺してしまったという物語など、炭坑には生死にまつわる不思議な話が多く語り継がれてきた。知人やかつての同級生を訪ね、多くの証言と資料あつめてたどりついたのは、１９６８年の夕張市平和鉱事故の悲しいエピソードだった。かつての日本を支えた人々の死を語り継ぐ鎮魂歌。