１９６４年８月２２日、オリンピアからアテネに到着した聖火は安川第五郎組織委会長に渡され、いよいよ１万６千キロに及ぶ聖火リレーがスタートした。２３日、第１の訪問地トルコに到着。アジアに第１歩を記した聖火は首都イスタンブールで第１夜を迎えた。レバノンの首都ベイルートでは沿道の市民の歓迎を受け、イランのテヘランではチャドル姿の婦人や市民の熱狂的歓迎を受けた。パキスタンの首都ラホールでは全市が美しいイルミネーションで飾られ、夜遅くまで市民は喜びにわきたった。５番目の訪問地インドのニューデリーは出迎えの群衆でいっぱい、初の女性ランナーも登場した。こうしてアジア１１ヵ国を経て東京へ向かう聖火リレーは半ばを過ぎた。

１９６４年５月２７日、ネール首相死去の知らせに東京のインド大使館には在日インド人が詰めかけ父とあおいだ指導者の冥福を祈った。池田勇人首相も大使館を弔問、政府代表として大平正芳外務大臣は葬儀に参列するため急きょインドへ向かった。インド独立に生涯を捧げたガンジー翁の後継者として若くして独立運動に身を投じたネール首相。１９４７年の独立以来、１７年の長きにわたり首相をつとめ、国民の信頼を集めた。一方、中立外交をとなえて国際舞台にも活躍、米・ソの橋渡し役として国際緊張の緩和に努めた功績は高く評価されている。１９５７年（昭和３２）には日本を訪問、熱狂的な歓迎を受け、子供たちの希望にこたえて贈った象のインディラと８年ぶりに対面した。アジア・アフリカの新興勢力を背景にしたネール外交は、中国・パキスタンとの紛争が未解決のまま。ネルー首相は在任途中で７２歳の波乱に富んだ生涯を終えた。

自民党総裁選挙の前日、池田支持派は２９１票が確保されたと票読み。しかし念には念を入れようと池田さん自ら派閥を巡った。赤坂の料亭に河野派を訪ね、亡き親分の前に結集する大野派に手をうち、三木派にも票固めをして自信満々の構えだ。明けて決戦の日、ホテルに陣取って気勢を上げる佐藤・藤山の反池田連合。池田勇人、佐藤栄作、藤山愛一郎のいずれが勝つか、自民党大会の場内は緊張した空気に包まれた。結局、池田氏が２４２票を獲得し、三たび総裁に選ばれた。佐藤・藤山両氏の合計とは、わずか１０票の差。意外の接戦に勝った方も気勢が上がらない。破れたとはいえ反池田連合の善戦は今後の池田政権の行く末に微妙な影を落としている。

東京オリンピックのハイライト、マラソンの代表選手を決める第１９回毎日マラソンが１９６４年４月１２日、五輪コースの甲州街道で行われた。この日並行して５０キロ競歩の選手選考会も開かれ、広い道路いっぱい熱戦が繰り広げられた。３４キロを過ぎて君原健二が寺沢徹、土谷和夫、マラソン出場２回目の円谷幸吉らの懸命な追走をかわして独走態勢、故障を乗り越えて快走を続け、２時間１７分１１秒４の大会新記録でゴールイン、２位円谷、３位寺沢であった。選考の結果、君原、円谷、寺沢の３人が晴れの代表に選ばれた。

東京オリンピックまであとわずか。佐藤栄作・オリンピック大臣は建設中の競技場の視察に出かける。朝霞の陸上自衛隊では強化合宿中のフェンシングとボクシングチームを訪ねて選手を激励、日の丸が上がる自信を持ったと満足そう。忙しい合間に静かな茶室で一時を過ごす佐藤五輪相。１２年前に始めた茶道は免許皆伝の腕前。政局の動きも忘れ、さびの境地を夫人とともに楽しんでいる。

池田勇人首相からの親書を携えた吉田茂氏は、１９６４年２月２４日、台湾の蒋介石総統を訪問した。周鴻慶事件以来悪化した日本と国府（中華民国政府）との関係をめぐる会談に、その成果が注目されている。（週間話題）

毎日新聞東京本社の新社屋、パレスサイドビルの起工式が千代田区竹平町の敷地で行われた。クワ入れをするトンプソン会長、上田常隆毎日新聞社長。昭和４１年秋には緑の皇居の北側に地上９階、地下５階というマスコミの殿堂に相応しい日本一のマンモスビルが完成の予定だ。（週間話題）

１９６４年１月４日朝、東京・立川駅で暴走してきたタンク車が停滞中の青梅行電車に衝突、電車４両が全焼した。おりから仕事始めの満員の乗客を乗せた通勤電車は駅員の機転であやうく難を逃れたが、ガソリンの火の海は近くの商店街にまで溢れ１０棟が焼け落ちた。原因は、隣の西立川駅構内で入れ替え中のタンク車が、転轍手のブレーキのかけ忘れと信号掛のミスが重なって暴走した不手際によるもの。