延暦寺を開いた最澄は、延暦寺本像と同じ材で彫ったもう１体の薬師如来を安置すべき聖地を求め諸国行脚をした。美濃山中でお告げを得、庵を結びそこに安置した。横蔵寺の起源である。延暦寺の消失により、その像は横蔵寺から延暦寺本像として持ち去られる運命となる。◆「美濃の正倉院」といわれ、希有の仏像・絵画・書蹟類が寺宝としてあまた残る。数奇な運命をたどった寺跡と日本文化の底深さを、美濃深山に見る。◆【国宝】延暦寺根本中堂◆【重要文化財】深沙大将立像、大日如来坐像、金剛力士立像、四天王立像、十二神将立像〔横蔵寺〕

日本人にとって日常生活に欠かせないもの、習慣となっているものなどを海外へ持っていき、そこでの反応などから改めて日本の文化を見直そうという番組。この回は“タクシーの自動ドア”をイギリス人が世界に誇るロンドンタクシーに売り込みに行く。◆リポーターの迫文代さんと自動ドア取り付け技術者の嶋田武夫さんはタクシーに乗り込んでは自動ドアの便利さ、安全性を身振り手ぶりでＰＲする。しかしなかなか理解されずようやく親子代々タクシードライバーをしているフィリップ・ウォーレンさんに自動ドアを取り付けたロンドンタクシーのテストドライバーを引き受けてもらう。

医療と福祉がドッキングしたヨーロッパ型の福祉制度が実践されている長野県泰阜村での取り組みを中心に、福祉先進国といわれるデンマーク、スウェーデンの実態も紹介して今老人福祉に何が求められているかを探る。◆現在日本には寝たきりの老人が６０万人いるといわれる。施設介護の拡充か在宅介護の見直しか、老人福祉の本質が問われてもいる。日本とは比べものにならないといわれたデンマークやスウェーデンの福祉行政も、公的施設への膨大な投資に対し再検討がなされ、本質論をめぐっての転換期にある。泰阜村の高齢化率は２７パーセント、超先進的な在宅ケアのシステムを導入の他にさきがけて実践している。

二酸化炭素による地球温暖化、熱帯雨林の破壊、酸性雨など環境問題はいまや国境を越えた取り組みを必要としている。１０カ国共同制作の第１部を受けて、第２部では豊かになったといわれる日本人の暮らしを環境問題に即して考える。（第１部は同日に放送）◆日本人の豊かな暮らしを支えてきた企業活動が、環境の面から問われている。環境問題を無視する企業は存続さえ危うくなるという世界の潮流を取材、また日本企業へのアンケートから日本企業の姿勢や取り組みを追う。

大都市を中心に高騰し続ける地価。歴代内閣の最大の課題といわれながら、有効な解決策は示されないままである。番組では「地価は下げられる」という前提に立ち、５夜連続・計１２時間の生放送でその方策を考えていく。テレビ世論調査を交え、現状リポートと討論により、解決への具体的な道筋を探る。（１９９０年１０月１０日〜１０月１４日放送）◆第５回。どの様な解決策を選択するのか、具体的な政策について、政府・各党・各界の代表、それに２００人の市民が参加して徹底討論を行う。２部構成で、第１部は「土地税制の改革」を中心にとりあげ、第２部は「有効な土地利用」を考える。出演は佐藤守良、加藤六月、伊藤茂、神崎武法、佐々木憲治、中野寛成、鈴木永二、山岸章の各氏ほか。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆小沢昭一：俳優。１９２９年東京生まれ。１９５０年俳優座養成所に入所し、１９５３年に劇団新人会を結成、１９５４年には映画デビューを果たす。そして１９７４年に演劇集団・芸能座を創立した。

野辺にあって人々に語りかける「微笑仏」。民芸家・柳宗悦によって見出され、そう呼称された木喰上人の仏像である。木喰行とは木の実を食し修行すること。◆木喰上人・五行（１７１８〜１８１０）は行を終え、貧しい民衆救済を志して全国を行脚した。北海道で円空仏と出合い、６３歳から仏像制作を始める。本願成就の後も精力的に全国行脚を続け、笑いこそ衆生を救う道と９３歳で死ぬまで微笑仏を彫り続ける。残された多くの仏像からその軌跡をたどる。◆如意輪観音、大黒天、行基菩薩〔小栗山観音堂〕、地蔵菩薩、木喰自刻像〔日本民藝館〕、薬師如来、子育地蔵、子安地蔵〔太田山霊場〕

日本の女流洋画家の草分け、三岸節子の波瀾に富んだ半生を描く。◆１９０５年（明治３８）愛知県尾西市に生れた三岸節子は洋画家になるため、親の反対を押し切って上京。三岸好太郎と結婚するが苦しい生活が続く。その好太郎も早逝し、１９４５年（昭和２１）に１年半ほど渡仏。つづいて１９６８年（昭和４３）に再びフランスに渡り制作を続ける。１９８９年（平成１）、２１年ぶりに帰国、母国への永住を決める。フランス・ブルゴーニュ地方の寒村ヴェロンでの生活、そして帰国後、神奈川県大磯に落ちつくまでを追う。