長崎での被爆体験を綴った１５歳の少女の手記が、ＧＨＱによって「公安を乱す」として発禁処分にされた。一方で長崎軍政府の米軍人や長崎市民は懸命に本の出版を援助した。原爆検閲の実態と、それに関わった人々の思いを描く。◆アメリカ・メリーランド州立大学の図書館に「雅子たおれず」と題された仮綴りの手記が保存されている。著者・石田雅子さんの父・寿さんは、原爆の悲惨さをありのまま記した手記を出版することで、戦争を憎み、平和を願う思いを語り継ごうとした。しかしＧＨＱはこの文書によってアメリカへの敵意がかきたてられることを恐れて発禁とした。寿さんは懸命の出版交渉を続け、３年後にようやく処分が解かれる。

戦国時代、奥州から天下制覇の野望を持った武将・伊達政宗の波乱に満ちた生涯を描くドラマ。◆政宗は秀吉から小田原の北条攻めに加わるよう命じられ、いざというときは秀吉を刺す、と小田原行きを覚悟する。しかし義姫は、政宗が秀吉に殺され伊達家が潰されることを恐れ、小次郎に政宗殺しを命じる。だが小次郎は臆して討てず、義姫もまた毒殺に失敗。小次郎は切腹して政宗に詫び、義姫も山形へ去る。ついに政宗は小田原に行く。政宗は役に立つ男という前田利家の進言で秀吉は政宗殺害を思い止まるが、代わりに領地返上と正室愛姫を人質に出すよう命じる。

領国を堅固に治め、民心をつかんだ戦国時代の名将・武田信玄。武田流兵法書「甲陽軍鑑」には“人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、あだは敵なり”という歌が記されている。風林火山で有名な「孫子の旗」の勇将の顔と、夢窓国師・快川国師などを招く禅に帰依した教養人の顔をあわせもつ信玄。その命日４月１２日にちなみ、甲斐の国山梨県の４月はいまも武田信玄一色に染まる。誕生の地から菩提寺まで、ゆかりの場所をめぐって足跡をたどり、今日まで慕われる信玄の人物像を描く。◆【国宝】楯無鎧（菅田神社）【重要文化財】武田信虎画像（積翠寺）、四脚門（恵林寺）【その他】孫子の旗（快川国師揮豪・放光寺）、渡唐天神像（武田信玄筆・恵林寺）

江戸時代の床屋は町内の若い衆のたまり場で、多くの情報を交換して楽しんだ。そんな雑談のなかで一人の男が年増にモテた話をはじめる。おまえのような男がと冷やかすうちに、皆もだんだんと引き込まれてしまう。話が盛り上がって、女といよいよというところで声がかかって目を覚ましたというと、「誰だ、そんなところで起こす奴は」とオチがつく。

冷害で不作に見舞われた１９９３年秋、ほぼ例年なみの収穫をあげた「不耕起栽培」を取りあげ、取り組む農家の様子と収穫までの生育の様子を紹介する。◆１９９３年夏は冷夏となり米は不作、緊急輸入の騒動まで起こった。標高５００メートルの猪苗代町では通常の稲作では一粒も収穫できないほどだったのに、不耕起農家では６割の収穫を確保。全国的にも同様の結果を示した。「不耕起」とは、「耕す」「代かき」の作業を省く稲作で、千葉県の研究グループが１０年ほど前から実践していた。自然に近い生育のため台風や病気に強く、粒も大きく味もよいとの結果が出ている。

平安時代末期、根来寺を開いた真言宗中興の祖、覚鑁上人。幼いころ、尊敬していた地方官の父が国司に叱責されるのを目のあたりにして出家を志し、厳しい修業を積んで阿闍梨の位につく。その後鳥羽上皇の信任を得て高野山の座主となり、弘法大師以来の伝法会を再開するが、僧兵の反対にあい高野山を追われる。覚鑁は争いを嫌い、山をおりた。その覚鑁の教えが形となって残されているのが根来寺。真言密教の教義の象徴といえる根本大塔は当時のまま残り、木造最古の多宝塔として国宝の指定を受けている。◆【国宝】根来寺多宝塔【重要文化財】根来寺大師堂【その他】覚鑁上人像、錐鑚（きりもみ）不動明王像、妙海尼像

三浦半島の先端近く、相模湾側にある溺れ谷、つまりもとは陸地で谷だった地形がそのまま海へ沈んだもののうち最大のものが小網代湾。首都圏では唯一、ひとつの集水域が源流から河口の干潟までそっくり残っている。この集水域全域に生息するアカテガニ産卵と小網代の谷の生物たちの息吹を紹介する。

市川家に伝わる歌舞伎十八番、荒事の代表作である。スーパーマンの登場は江戸っ子の意気として大当たりを取った。◆悪公卿を前に、「しばらく」と声をかけて登場する主人公は独特の隈どり、かつら、衣装、大太刀などでスーパーマンを象徴する。市川家では“荒事は童の心でやれ”といわれているそうだが、見得も六方（東西南北天地を表す振り）も、無心の正義の強さを世界の隅々まで見せる勢いともいえる。◆副音声は英語