この夏の内閣改造で、運輸大臣の椅子が転がり込んだ荒船清十郎氏は夢かとばかり喜んだ。しかし、余りの嬉しさに「ひとつ位はええじゃないか」と深谷に急行を停車させたのがひとつ位では済まされず、上野駅の地下食堂拡張問題や田中彰治との黒い噂、日韓経済閣僚会議に民間業者を連れて行ったことも暴露されてしまい、ついに更迭と決まった。荒船氏は同じ川島派の藤枝泉介氏に、大臣の椅子を明け渡した（１９６６年１０月１１日）。わずか７２日にして荒船氏は、大臣落第生となった。桐一葉落ちて天下の秋を知る。佐藤内閣への風当りはこのままでは収まりそうもない。

北アフリカを振り出しに世界一周の旅に出たドゴール大統領は、カンボジアを訪問、シアヌーク元首らの出迎えを受けた。プノンペンの国立競技場では１０万人が参加して、歓迎国民大会が開かれた。この席上、大統領は「米軍の撤退がベトナム問題解決の基本条件である」と注目すべき提案をした。次の訪問地は南太平洋のタヒチ島。この平和な島を基地としてフランスの核実験が行われた。カンボジアでドゴール外交の基調である「平和と独立」をふりかざし、１転してこちらでは大統領立会いのもとでの強化原爆実験（１９６６年９月１１日）でフランスの力を世界に誇示するとはまったく皮肉な現象だ。

スペインの音楽映画「マリソルの初恋」の封切りを前に主演女優のマリソルが来日した情熱の国スペインのセニョリータからキス第１号を受けた勝新太郎、さすがの座頭市もまいったといったところ。デパートに買物にきたマリソル、花嫁衣装がすっかりお気に召したようだ。（週間話題）

雪にうずもれた松代町に年１度の松代相撲がある。相撲と言っても裸になって勝負を決めるのでなく、大相撲初場所の勝ち力士を当てるゲームである。勧進元で出題された１０番の取組を１６部屋、４００人の力士が勝敗を予想する。勧進元では結果を採点、１５日間の成績を集計して横綱から序の口までの番付を決める。千秋楽には全力士が雪の花道を踏んで村の国技館に勢ぞろい。役力士の土俵入りが行われる。この行事は年々盛んになり、娯楽のない山間僻地の人々にとって楽しい冬のレクリエーションとなった。（町から村から）

基地の町横須賀は、アメリカの原子力潜水艦入港をめぐって騒然としてきた。革新団体は１９６６年５月２９日に、６０００人の抗議集会を開きその後デモ行進にうつった。１９６６年５月３０日、アメリカ原子力潜水艦スヌーク号は小雨の中を横須賀港に入港、「日米親善横須賀市民協議会」の出迎えを受けた。同じ時、基地の外では前夜に引続き革新団体のデモ隊が、「原潜入港反対」のシュプレヒコールも激しく抗議。日本の玄関への初の入港とあって横須賀市は複雑な表情であった。

１３３人の命をのんだ無情の海、東京湾。まだ上がらぬ遺体を求めて潜水夫たちは休みの無い毎日だ。２０メートル下の海底はヘドロでおおわれ、１メートル先も見えない。日に４回が潜りの限度、だが待ちわびる遺族の事を考えると無理を承知で７、８回潜る。疲れきった体に栄養剤を流し込み、火鉢でかじかんだ手足を暖める。誰の顔にも疲労とあせりの色が濃い。しかし２０メートルの風が海上に吹き荒れて作業は中止、遺族の待つ岸壁にも日が暮れた。沖では潜水夫たちが明日に備えて深夜まで打ち合せを続ける。朝、昨日の風と波はうそのよう。遺体捜索と平行して機体の引き揚げも本格的に始まり、まず中央の第２エンジンが続いて胴体中央部、さらに機首が引き揚げられた。現場を訪れた遺族たちはあまりのむごたらしさに思わず息をのむ。まだ３０の遺体が海の底に眠っている。

世界マラソン史上最高の４２５人を集めた、第７０回ボストン・マラソン。気温１０度、快晴のマラソン日和に、寺沢ら４人の日本選手はスタートから勢いよく飛び出した。はげしい先頭争いも後半に移り、日本の４選手はピッチをあげ、ついに独走態勢。ゴール前８百メートルで君原健二がスパート。そのまま逃げきって２時間１７分１１秒のタイムでゴールイン、２位はマラソン出場はこれが２度目の新人佐々木精一郎。３位は寺沢徹、４位岡部宏和と日本が上位を独占、昨年に続いて２連勝を飾った。

オホーツク海に面した最果ての町、網走。中川イセさん６６歳はこの町の名物女、１３の時から働き始め、水商売の世界に身を沈めた事もある。あぐらをかいて気さくに人の相談にのる所から、あぐら婆さんという名で親しまれている。不幸な人の味方をもって任じ、市会議員として２０年間活躍してきたかたわら、法務省の人権擁護委員も務め、法務局、警察、家庭訪問と忙しい毎日だ。世話好きな婆さんは仲人もよく頼まれる。今日は５１組目の結婚式。こうした忙しい婆さんの楽しみは、１日の仕事を終えてたしなむ１杯の晩酌だ。男どもに負けられないと始めた護身術は、いつか３段の腕前となった。北海名物あぐら婆さんは今年、その長年の功績が報いられて藍綬褒章を贈られる。