秘書連中にスミをすらせ揮ごうをふるう坂田英一農林大臣、大臣の肩書も今日限りと諦めた表情。同じ運命の永山忠則自治大臣は未練たっぷり。１９６６年７月３１日、佐藤内閣２度目の改造劇が始まり、万年候補の荒船清十郎氏にもやっと運輸大臣のイスが転がり込んだ。坂田氏の後任として、防衛庁長官だった松野氏が横滑りして就任。坂田氏はさえない顔で松野頼三氏にバトンタッチ。思えばはかない１年大臣、さようなら大臣のイス。自宅に帰ったとたん、張りつめていた気持ちが１度に抜けて行く思い。短い大臣生活だったが、「やるだけのことはやった」と坂田氏、次の機会に備えて農業の勉強に取り組んでいる。

師走の風が吹きはじめると、京都郊外の上賀茂の里ではまるまると太ったすぐきかぶらが顔を出す。独特の風味で全国に知られたすぐきかぶらのつけ込みは今が最盛期。大きな桶で１晩荒漬けされたすぐきかぶらは塩をどっさりまぶしてタルに漬け込む。てんびと呼ぶテコで重しを１週間かけ、かぶらの身を引き締める。こうしておいしい漬物が出来る頃、正月はもう目の前。

端午の節句を祝って埼玉県庄和町に、２５０年来伝わる大凧づくり。特製の和紙１５００枚を使い、縦１５横１１メートル、重さ８００キロという日本一の大凧だけに糸目も１２０本というマンモスぶり。１９６６年５月３日、大小１４の凧が町中を練り歩き千葉、埼玉の県境を流れる江戸川堤へ向かう。百畳敷もある大凧だけに、中々上がらない。やっと上がったと思ってもすぐ落ちてしまう。今度はうまくいったものの、風が強くて引きずられそう、１０００メートルの上げ糸も足りないほど。うまく上がって大喜びの人々、早速祝い酒で１０００メートルが上がる。ところがあいにくの雨で凧は大破れ。滞空記録わずか１時間足らずで日本一の大凧は無事、地上に戻った。

梅雨前線を刺激した台風４号は、関東地方に記録的な大雨を降らせた（１９６６年７月２８日）。特に２７０ミリという集中豪雨を浴びた横浜市では、１１９ヶ所にわたってがけ崩れが発生、死者２８名を出した。横浜市は危険な丘陵地帯がいっぱい、脆い地質の関東ローム層は大雨にあったらひとたまりもない。それでも土地会社は崖の下まで削り取って家を建てる。特に神奈川区三枚町で起きたがけ崩れは、ずさんな宅地造成の恐ろしさをまざまざと見せつけた。幅４０ｍ、長さ１５０ｍにわたる地滑りは、まだじりじりと崖下の家に押し寄せている。付近の２０世帯は家財道具を持ち出して避難を始めた。毎年台風のたびに起るこうした事故は、天災といっては済まされない宅地造成の悲劇という他はない。

日本で初めての「インディアナポリス・インターナショナル・チャンピオンレース」が、１９６６年１０月９日静岡県の富士スピードウェイで行われた。世界一流のドライバー２２人が参加、本命はスコットランドのジャッキー・スチュワート。５万の大観衆が見守る中、２２台いっせいにスタート。３００キロを越す猛スピードで、スタンド前を通過。４３番のスチュワートを追って各車激しい競り合いを展開、ファンを興奮に巻き込む。スリル満点のヘアピンカーブ、スチュワート、７０周でトップに立ちそのままゴールイン。初のチャンピオンとなった。

さあ！いよいよ今日から新学期。東京都台東区立東小学校では、全校生徒１４７０名が鉢植えの朝顔を持って登校した（１９６６年９月１日）。緑に恵まれぬ子供たちに潤いを与えようとの意図で、出された夏休みの宿題に、各自が１鉢ずつ育てた。みんなの努力が実って、校庭いっぱいに大輪の朝顔が咲きそろっている。こちらは鈴虫の学校として知られた群馬県桐生市立昭和中学校。今年は新学期までに２万匹育ち、校庭いっぱいに美しいコーラスが聞こえる。消防署や町の人から分けて欲しいと希望者が殺到、桐生は秋とともに虫の声につつまれて行く。

ふだん静かな首都アムステルダムで、休暇手当をめぐってデモをする建設労働者に無政府主義者が加わり警官隊と激しく衝突した。時が経つにつれ最初の目的であった労働問題はどこへやら、５０００名に上る若者は荒れ狂い続け、暴力につぐ暴力が市内を支配した。これに対しわずか５００名足らずの警官隊は初めて催涙ガスを使ったり、軍隊の出動を要請する始末、騒ぎは１週間にわたった。

歌で知られた水郷、潮来は今あやめの花盛り、日曜日にはどっと観光客が押し寄せて花より人の花盛り。潮来廻りの船着場も賑わって、女船頭さんの稼ぎ時。岸辺の茶屋も大繁盛。狭い水路は２００隻の船で超満員、お巡りさんもでる騒ぎ。船頭さんに任せておけないと、お客さんも竿さし、船をひき大奮闘。潮来出島の真菰の中で立ち往生とは情けなや。