大安吉日の１９６６年１１月１３日、羽田空港は新婚旅行へ旅立つ人で華やかなムードに溢れていた。それから１０時間後、全日空オリンピア号が松山沖で墜落の知らせに空港は重苦しい空気に包まれた。遭難した５０人の中には、１２組の新婚夫婦が含まれている。ＹＳ−１１は戦後初の国産旅客機で、安定した性能と短い滑走距離は高く評価され、アメリカから７３機の注文を受けたばかり。遭難現場では空と海から大規模な捜索が続けられているが、時化のためはかどらず、２９体がいまだに冷たい水の底に沈んでいる。

第１４回カナダカップ争奪ゴルフ世界選手権大会最終日（１９６６年１１月１３日）。世界最高のアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウスを揃えたアメリカは、後を追う南ア連邦のゲーリー・プレーヤー、日本の杉本英世、河野を押さえ、２８アンダーパーの驚異的な新記録で８度目の優勝を遂げた。個人はカナダのナドソン、杉本が優勝決定戦の末、ナドソンの初優勝。

実りの秋を迎えた愛知県岡崎市の郊外。数万羽のすずめが竹ヤブを根城に、毎日米を食い荒す。この田圃のギャングを退治しようと留守の間に網を仕掛ける。日暮れ時、腹いっぱい稲の汁を吸ったすずめの大群が、ねぐらに帰ってきた。やがてぐっすり寝込んだ頃大捕物が始まる。寝込みを襲われたすずめは、寝ぼけまなこで大あわて、網は次第に絞られて気が付いたときは一網打尽。この日の戦果は３千羽、１羽１２円といういいお値段でヤキトリ屋に売られる。一仕事すんで早速ヤキトリ、この味がまたこたえられない。

オホーツク海に面した最果ての町、網走。中川イセさん６６歳はこの町の名物女、１３の時から働き始め、水商売の世界に身を沈めた事もある。あぐらをかいて気さくに人の相談にのる所から、あぐら婆さんという名で親しまれている。不幸な人の味方をもって任じ、市会議員として２０年間活躍してきたかたわら、法務省の人権擁護委員も務め、法務局、警察、家庭訪問と忙しい毎日だ。世話好きな婆さんは仲人もよく頼まれる。今日は５１組目の結婚式。こうした忙しい婆さんの楽しみは、１日の仕事を終えてたしなむ１杯の晩酌だ。男どもに負けられないと始めた護身術は、いつか３段の腕前となった。北海名物あぐら婆さんは今年、その長年の功績が報いられて藍綬褒章を贈られる。

栃木県の塩谷町にある発明クラブの発表会。忙しい仕事の合間を縫って農家の人達が集まってきた。猫の手も借りたい農繁期に少しでも人出不足を解消しようといろんなアイディアがとびだす。一輪車を利用した下肥運搬車、忍者屋敷さながら壁から飛び出す腰掛け、囲炉裏の上のセンをひねれば水が出て来る、耕運機に使用した油も捨てないで囲炉裏にひいて使う。せっかく沸かしたお湯がこぼれるのはもったいない話。そこでお湯をくみあげてためておく装置を考案した。暇さえあれば村のかじ屋に集まって新しいアイディアの相談、苦心の果てに完成したのは耕運機利用の小型ブルトーザー。また耕運機に常用装置を取り付けて、子守しながら仕事が出来る仕組みも出来あがった。さまざまなアイディアがひらめく発明村の農繁期。（町から村から）

東京世田谷にこの程デラックスなワンワンホテルがオープンした。一家揃って旅行する愛犬家が留守中、その世話を頼みにやって来る。先ずバスルームへご案内。ベッドも備えたスペシャルルームでワンチャンは風呂上がりの味を満喫。ただし１泊５０００円也とは人間さまよりぐっとデラックスだ。こちらは京都市の郊外にある通称「犬の山」。ここは２百匹近い野良犬の天国。この山の主、清水さんは７年前に犬１００匹とネコ２０匹を連れて入山した。麓の村にも犬好きの母子がいて、毎日エサを持ってきてくれるので大助かり。捨て犬を見ると思わず拾ってしまうという清水さん、人間離れしたこのおばあちゃんと一緒に野良犬たちは自由を楽しんでいる。

全国３７ヶ所に出来た老人福祉センター。３０円で１日が楽しめるというので朝から賑わっている。このセンターには健康相談室があり検査や治療も無料サービス、衰えた手足を鍛える運動器具もあり、若返りに一役買っている。この日は敬老の日、東京都小金井市では乙姫さまや浦島太郎に扮したおじいさん、おばあさんたちが学芸会を開いた。これ以上年をとらないように玉手箱は決して開けないことになっている。こうして老人達は初めて祭日になった敬老の日を楽しく過ごした（１９６６年９月１５日）。

日本女子体操界に彗星の如くホープがあらわれた。１８歳の高校生、田島幸子さん。彼女を育てたのは山形県米沢商業高校。いま１０人の部員たちは暮れも正月も返上して、高橋一夫先生のきびしい指導の下にトレーニングに励んでいる。小さなミスにも高橋先生の激しい声が容赦なく選手たちに飛ぶ。練習が済むと８ミリでソビエトのクチンスカヤの競技を検討する。１日１回練習しないと気がすまないという田島さんは昼間を練習時間に当て、夜間部で勉強するほど体操に熱を入れている。体操部が出来て今年で１０年、田島選手に続けと若いホープたちは黙々とわが道をひた走る。（今日の群像）