東京深川の木場で江戸時代から２５０年の伝統を誇る角乗りが、１９６６年１０月１０日に公開された。長さ５ｍ、幅３０センチの角材に飛び乗って次々と名人芸が飛び出す。はらはらさせる駒げた乗り、肩車で乗るかわせみの妙技。スリル満点のハシゴ乗りは男度胸の見せどころ。カゴに揺られて水の上、しかし安全運転とまでは行かなかったようだ。

奈良の東大寺では自衛消防団が参加して文化財防火デー（１９６６年１月２６日）の消防演習。しかし、奈良市で自衛消防団を持つ寺はほんの数えるほど。はしご車も市に１台あるだけ。世界最古の木造建築で名高い法隆寺は昭和２４年に金堂から出火、かけがえのない壁画を焼いたのに懲りて、防火構造の宝蔵物殿やドレンチャー、不燃性ガス発生装置を作った。こうした近代的設備は他に元興寺極楽坊にあるだけで、唐招提寺薬師寺など百余の文化財は無防備に近い状態である。観光コースから外れ、収入の少ない新薬師寺では、やりくり算段で携帯消化器を備えるのが精いっぱい。お粗末な防火設備とかけがえのない国の宝。仏さまお守り下さい。

２０年に１度の伊勢神宮の遷宮ご造営に使われる用材のお木ひきが、戦後初めて復活した。１９６６年４月１２日、木曽の国有林から切り出された大木は、木遣り音頭にあわせてのどかに五十鈴川をさかのぼり、めでたく内宮に運び込まれた。翌日は勇壮な陸びき行事。古式豊かなお木ひき車に木を積んで、旧参宮街道を外宮に向かう。綱を引くもの５０００人。沿道を通るお木ひき車は威勢のいいかけ声にのって、次々と外宮正面に勢ぞろい。この行事は５月まで続き、伊勢の町はお木ひきムードに沸き立っている。

日本原子力研究所が発足してから１０年。１９６６年６月１５日には科学技術界の関係者を集め、盛大に祝賀会が行われた。茨城県東海村の原子力研究所、ここに働く人たちは放射能の危険から身を守るため、フィルムバッチと万年筆型の測定器をつけるなど防御体制がとられている。今では最初の原子の火がともった１号炉から国産炉を含めて４基が完成。ラジオアイソトープの国産も軌道に乗った。また原子燃料など各方面の平和利用の研究も行われている。日本最初の原子力発電にも成功、夜には一般家庭にも送られている。近くの大洗町には材料試験炉の建設が急がれ４３年完成の予定。一方海に捨てられる廃液からの海水汚染を調べる観測も定期的に行われている。日本に原子の火がともって１０年。原子力の開発は基礎段階を終り、いよいよ実用化の時代に入ろうとしている。

ゴールデンウィークがやって来た。子供にせがまれ遊園地に出かけたが、電車賃も値上がりして足代だけでもバカにならない。遊園地に着いたら入場料の高いこと。広い園内は乗り物がいっぱい、子供たちを夢の国に誘い込む。少しでも安くあげようと回数券を買ってはみたが、これが見る間に消えて行く。ママの顔もしぶくなる一方、しかし乗りかかった船だとあきらめて行けるところまで行く。今度はラクダやロバ、僕も乗りたいとせがまれ１０分間で１２０円。とうとうサイフは空っケツ。人の気も知らないで小さな王様は大はしゃぎ。親は骨までしゃぶられて完全にノックダウン。ああ、くたばれ！ゴールデンウィーク！

１９６６年６月３日、世界最高の室内オーケストラと言われるモスクワ室内管弦楽団の一行２６名が毎日新聞の招きで来日、バルシャイさんの指揮でみごとな演奏を披露した。初の日ソ合作映画「小さな逃亡者」の配役が決定、ボチャロフ、衣笠貞之助監督のもと、ニクリーンさん、稲吉君はじめ多彩な顔ぶれ。父親を尋ねる少年の勇気を描くこの映画は日本での撮影の後、３か月にわたるソビエト・ロケに出かける。

世界青年会議第６回、東京大会は「青年−世界の開発に挑むもの」というスローガンで１９６６年８月１１日開かれ、９７ヵ国、５００人の若人が華やかな民族衣装で参加した。官邸で開かれたレセプションで、若い人たちに囲まれた佐藤栄作首相は「２１世紀は君たちのもの」と愛嬌を振りまいた。お互いの理解を深めようと開かれた「日本の夕べ」には遠来の客も浮かれて、仲間入り。しかしミコシの重いのには閉口していた。

長い間地震に振り回されていた松代では、１９６６年９月１７日、ついに牧内地区で地滑りが起きた。逃げだした住民はただ呆然とするばかり。しかし死傷者がなかった事は不幸中の幸いだった。山腹にはせき止められた地下水がため池を作り、鉄砲水の恐れがあると自衛隊が出動、住民は次々と避難して行く。地震と地滑りの恐怖で松代の人たちは深刻な表情。