２００６年に愛媛県宇和島市で起きた臓器売買事件から発覚した病気腎臓の移植問題は、移植医療の現場に大きな波紋を広げた。日本移植学会など関係４学会が倫理的な観点から病気腎移植を全面的に否定する一方で、万波誠医師の行っていた病気腎移植を支持する声も多く、病気腎移植の道を残すために活動する団体も出てきている。そこで南海放送は２０日間に渡って「家族に腎臓を提供できるか？」「人工透析になったときに病気の腎臓を望むかどうか？」「万波医師と日本移植学会どちらを支持するか」などを問うアンケート調査を行い、３８９４人の県民の声が寄せられた。万波誠医師へのインタビューやアンケートの結果を交えながら、生放送で「病気腎移植問題」を考える。ゲストの腎移植の経験者からは体験談を、「腎移植最前線」の著者青山淳平氏には取材から得た日本の移植医療の問題点などを語ってもらう。

東尋坊を望む福井県三国町安島地区に伝わる民謡「なんぼや踊り唄」と、唄を伝える人々を描く。◆「なんぼや」とは江戸時代、南部地方（青森県東部と岩手県北部）から北前船によって伝わったことから、「南部や」が「なんぼや」になったという。男たちが船員としてが出稼ぎに出た間、留守を守り、子どもを育ててきた海女たちによって伝えられてきた。中には夫や恋人の帰りを待つ女心を唄った恋歌も収められている。一時は途絶えたが、保存会と小学校の協力で再び歌い継がれている。◆『録音風物誌』平成１９年８月～平成２０年７月放送分の全国最優秀賞。

大阪を直撃し、後に防災の原点となった昭和９年（１９３４）の室戸台風の実態を、浪曲「吉岡先生」と当時の体験者の証言で描く。◆この浪曲は、豊能郡豊津村（現在の吹田市江坂）を舞台に、実在の吉岡藤子先生を題材にした物語。教育に情熱と愛情を持つ吉岡先生は、児童の親が発した「命をかけて児童を守れるか」という問いに悩む。そしてある日、室戸岬に上陸した巨大台風が、無警戒の大阪府民を襲う。風速は急激に６０メートルまで強まり、煙突は倒れ瓦は紙のように飛んだと言う。そして１９００人以上が死亡。被害者に児童が多かった。必死で子供を守ろうとした吉岡先生も校舎の下敷きとなり死亡。しかし先生が身をもってかばった５人の子供たちは奇跡的に助かった。◆語り：松本恵治、浪曲：菊地まどか

岩国市在住のヴァレンシアさんは、米軍横田基地で生まれた。父は黒人アメリカ海兵隊員、母は日本人。しかし、彼女が生まれてすぐに両親は離婚し、母の実家のある広島市で育てられた。父に似た縮れ毛と大きな目。小さな頃は「お人形さんのよう」と言われたそのルックスにコンプレックスを持ち続けた。基地で出生届を出したから国籍はアメリカだが、英語は全く話せない。学生時代には「あなたは何人？」と言われ傷つき、自暴自棄になったこともあった。自分の居場所を求め続けてきた彼女は、４年前、岩国市の米軍基地近くにバーを開いた。店には若いアメリカ兵達が連日訪れる。その一方で、夢だったゴスペルシンガーとしての活動も始めた。彼女は今、自分のルーツと向き合おうとしている。

稗田阿礼が語り、太安万侶が記録した「古事記」。この日本人のルーツに迫る最古の歴史書誕生にまつわる物語。「神代篇」「まほろば篇」に続く完結編。（全２回）◆阿礼の昔語りは、神話の時代から、王権をめぐる謀略と殺戮が繰り広げられる世界へと進む。オホサザキノミコトが別の女性と恋におちるたびに、嫉妬の炎を燃え上がらせる皇后の物語や、カルノオオミコとカルノオホイラツメ兄妹の許されぬ悲恋などが語られる。だが、阿礼と安万侶の作業を快く思わない右大臣の不比等は、このような内容は国史にふさわしくない、と別の国史を作ろうと企てるのだった。作：市川森一、音楽：小六禮次郎。語り：加賀美幸子、出演：石坂浩二、戸田恵子、江守徹、ほか

大阪の地方デパート「なにわデパート」食品催事課では、定年を迎えた物産展のカリスマ、船場和子の送り出しパーティーが開かれようとしていた。しかし、予定の時間を遙かに過ぎても船場は姿を現さない。代わりに会場に届けられたのは、彼女からの不可解なメッセージだった。定年を迎えても、なお会社に執着し采配を振るい続ける船場と、後任となった中堅社員・清水由紀。２つの世代、２人の女性による物産展を巡る熱い戦いが始まる。◆平成１９年度文化庁芸術祭参加作品。作：吉村ゆう。出演：和泉敬子、久野麻子、蟷螂襲ほか

庄原市の男性は、２０００年にすい臓がんを再発し、余命５ヶ月と宣告されたが、東京の医師の元で抗がん剤「ジェムザール」による治療を受け、２１世紀を迎えることができた。この抗がん剤は、世界のすい臓がん標準治療となっていたが、当時の日本では未承認で、患者達は標準治療を受けることなく亡くなっていた。彼は、誰もがこの治療を保険診療で受けられるようにと患者会を結成し、抗がん剤の早期認可を厚生労働省に求める署名活動を始めるが、仲間も彼自身も志半ばで病に倒れていく。しかし、彼の思いは日本のがん治療を変えたいと運動するメンバーに引き継がれ、やがて国を動かし、「がん対策基本法」の成立に向かう。

福岡Ｊ・アンクラスは、セーラー服を日本で最初に制服に採用した学校として知られるミッション・スクール、福岡女学院を拠点とする女子サッカークラブだ。いわゆるお嬢さん学校だが、保護者の強い抵抗の中、２０年前に女子サッカー部ができた。今では九州では敵なしといわれる強豪に成長。２００６年には日本女子サッカーリーグ（なでしこリーグ）の二部に、福岡Ｊ・アンクラスのチーム名で初参加した。選手は福岡女学院に通う高校生、大学生、社会人、元なでしこリーグ一部チームの選手と様々だが、夢はひとつ。１年で一部に昇格することだ。その夢の実現へ一丸となって向かう監督と選手達の１年を描く。