アナウンサーが文学作品を朗読し、ゲストに作家や作品にまつわる興味深い話を聞く、正月三が日恒例の番組。この年は、明治から昭和にかけて多くの作品を生み出し、日本人の精神にも大きな影響を与えた夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介の作品世界を味わう。◆第二夜は森鴎外。彼は留学経験の中で生み出した作品に加えて、歴史小説にも独自の境地を開いた。その精緻な文体を鑑賞する。ゲストは作家の森まゆみ氏。朗読する作品は、「青年」「雁」「舞姫」「高瀬舟」。聞き手：伊藤文樹、朗読：谷地健吾、草柳隆三、阿部陽子

広島の被爆と復興の経験をカンボジアの復興に役立てようと奔走する女性の活動を描く。◆２００６年１１月、広島市の被爆者が建設を呼びかけた「ひろしまハウス」がカンボジアの首都プノンペンに完成した。建設に尽力したのが、３歳の時に被爆した國近さんだった。彼女は１９９４年の広島アジア大会でカンボジアの選手を応援するプロジェクトでカンボジアを訪れ、瓦礫の中で遊ぶ子供たちの姿に自分の子供時代を重ね合わせた。また、広島の痛みを共有してくれた選手に感銘を受け、カンボジア復興のために文化センターを作ろうと決意した。ひろしまハウスが果たす役割、國近さんの思い、現地の人々に現れた変化を伝える。

第二次世界大戦中の硫黄島の激戦を描いた映画「硫黄島からの手紙」が大きな話題となった。硫黄島からの生還者、遺族に話を聞き、平和への思いを訴える。◆日米合わせて５万人が死傷した硫黄島。奇跡的に生還した男性は壮絶な経験を語る。この闘いを指揮した司令官・栗林忠道は、長野県長野市松代町の出身である。栗林の生家は今も残り、現在の当主が遺品を大切に保管している。この年５月、親族の家から、栗林がアメリカ留学の際に購入したというレコードが発見された。遺品から彼の実像に迫る。また、映画をきっかけに学習を始めた高校生の心の変化を追う。

青森県の民謡に大きな貢献をしてきた有名無名の先達たちに光を当て、伝統文化の継承の大切さを伝える、生ワイド番組内のコーナー。今回は、津軽民謡の名手の一人で、生前は青森県無形文化財「嘉瀬の奴踊り」の保存会会長でもあった鎌田稲一を紹介する。鎌田は歌手・吉幾三の実父である。吉が歌謡界で脚光を浴びてきたのとは逆に、父・鎌田稲一を知る人は、一般に青森県内でも少ない。実力がありながら民謡家としては不遇だった鎌田に光を当て、吉幾三の存在も紛れもなく鎌田家の芸の系譜の中にあることを、様々な音源、証言から浮き彫りにする。

第７５回全国盲学校弁論大会の全国大会で、「悔いのない今日を生きる」と題してスピーチした岡山県立岡山盲学校高等部普通科２年の竹本登久子さんが優勝した。これまでで最高齢、７４歳での優勝だ。戦中・戦後に育った竹本さんは、自立への道として琴を選んだ。当時、視覚障害者が学問を続けるのは難しかったのだ。師匠として６０年近く琴一筋で仕事をしてきた。だが学問への憧れをずっと胸に抱き、７０歳を過ぎて一度は諦めた盲学校高等部に入学した。そして十代の若者と共に学びながら、さらに大学で音楽を学ぶことを目指している。今こそ青春と語る竹本さんの日常と、将来にかける思いを伝える。

明治５年（１８７２）年１１月９日、明治政府はそれまでの太陰暦（旧暦）をやめて太陽暦（新暦）を採用するという詔書を布告した。１２月３日を明治６年１月１日とするのだ。理不尽な改暦で大損害をこうむった暦問屋一家や御一新の際に新政府に裏切られた赤報隊の生き残りらが、歌舞伎作家の河竹新七（後の河竹黙阿弥）に率いられ、改暦の張本人、太政官参議の大隈重信に一泡吹かせようと一夜だけの歌舞伎を仕組む。題して「御改暦開化の暗闇・大川端勢揃いの場」。お上に都合が良い改革が断行され、そのしわ寄せを食いながらも憤りの矛先が見えない弱者の怒りと抵抗を、下座音楽に乗せた歌舞伎の趣向たっぷりに描く。作：山本むつみ。出演：嵐広也、嵐圭史、河原崎國太郎ほか

「目の不自由な方へ“通りやんせ基金”を！」との呼びかけで１９７８年にスタートした「ＩＢＣラジオチャリティミュージックソン」。毎年クリスマスの１２月２４日正午から２４時間の生放送で、この年３０回目を迎えた。今回は岩手の、そして日本の盲唖教育の魁となった柴内魁三にスポットを当てる。彼を知る人は少ないが、「自分のことは自分でやれ、天を仰いで歩け」という言葉に象徴される彼の教えは、正に現代ノーマライゼーション社会に通じるものがある。今、岩手県立盲学校に学ぶ生徒たちにこそ必要とされる教えであった。メインパーソナリティ：大塚富夫、語り：水越かおる、朗読：加藤久智、出演：村上弘明

３０歳のともえは突然、母親から死んだ父が帰ってきたと知らされた。実家に行くと、そこには８年前、５９歳で死んだはずの父がいた。ありえない、これは現実だろうか、それとも家族で見る幻だろうか。奇妙な出来事をきっかけに、夫の浮気への疑い、母や兄夫婦への感情など、日常生活に潜む感情があらわになる。人生の儚さと、変わりなく過ぎ行く現実の無常さの中で、束の間の喜びと「生」への愛おしい思いを描くヒューマンドラマ。原作：藤野千夜、脚色：小松與志子、出演：西尾まり、天野鎮雄、梅沢昌代、ほか。