いじめ被害は子供時代だけの問題ではなない。札幌市郊外の民間病院には、成人後も幼い頃受けた心の傷に苦しむ患者達が通院している。多くはうつ病などが悪化し、リストカットや自殺未遂などを繰り返した。Ｔさんは３０歳代の女性。小学校時代のいじめ被害から自分に自信を無くし、服薬自殺未遂や度重なるリストカットの果てに入院してきた。この病院は内観療法で治療実績をあげてきた。Ｔさんも「自分ひとりで生きてきた訳ではない」と悟ったことをきっかけに回復してきた。病院はまた、デイケアや患者の共同住宅など様々な手立てで社会復帰を支援している。生きる気力を再び取り戻したＴさんは、ボランティア活動を通してお世話になった人たちに恩返しをしようと考えている。「命はひとつしかない。いじめは一生続かない。必ず幸せになれる」という彼女のことばは重い。Ｔさんを通して見えてくるのは、いじめ被害者の継続的な調査の必要性と社会復帰のための機会や施設の充実である。今後は行政側の取り組みが求められる。

詩人桜井哲夫さん（８３歳）は、１７歳の時ハンセン病と診断され、青森県鶴田町から群馬県草津町にあるハンセン病療養所に入所。これまで６冊の詩集を出版し、「らい文学の最後を告げる詩人の一人」と評されている。彼には心の孫がいる。在日コリアン三世の金正美（キム・チョンミ）さんだ。彼女は１９歳の時、学内掲示板で知った「らい療養所詩話会」に参加したのがきっかけで桜井さんに出会った。詩人桜井さんの魅力に惹かれていき、１９９６年２月、おじいさんと孫の約束をする詩「二人の条約」が誕生。「哲ちゃん」「ちょんみ」と呼び合う仲になり、韓国や津軽などへ二人三脚の旅が始まり、この年（２００７年）２月、哲ちゃんの長年の夢だったローマ法王との謁見が叶った。療養所生活の軌跡と、法王との謁見の意味を探る。

２００３年の鹿児島県議選挙を巡り、志布志市懐集落で現金買収の会合が開かれたとされた「志布志事件」。わずか７世帯の集落から突然逮捕者が続出した。起訴された１３人のうち６人が容疑を自白。しかし皆口々に「ひどい取り調べで自白を強要された」と訴えた。裁判は３年７ヶ月に及んだが、鹿児島地裁は「ありもしない事実が自白させられている」として全員無罪を言い渡し、判決は確定した。でたらめな事件の背景にあった杜撰な暴走捜査の実態が明らかになっても、捜査当局から元被告らへの直接の謝罪や説明はまだ一切ない。被告とされた住民達は、取り調べを録画・録音する取り調べの「可視化」の必要性を全国で訴えながら、人生と心に“空白”を作った事件の真相解明を求めて、国家賠償請求訴訟を起こす方針だ。

ヴォイストレーナー松原徹を通して、人の声の力を見つめる。◆岡山駅西口からほど近い岡山済生会ライフケアセンターの４階、カリスマヴォイストレーナー松原先生の歌の教室が始まる毎週月曜の夕方は、ここに入所している多くのお年寄りで埋まる。この日の課題曲は水森かおりの新曲「ひとり薩摩路」だ。お年寄りたちは耳で聞いて覚え、「もういっぺんいきましょう」を何度か繰り返しながら、やがて大きな歌声となっていく。お年寄りたちの瞳が輝き、表情が生き生きし、背筋が伸びる、と看護士たちは声をそろえる。ヴォイストレーニングの持つ力と、人間松原徹の魅力に迫る。

海と島を巡るシリーズ（全４回）。天売島の命あふれる夏を描く。◆北海道本土の羽幌からフェリーで海鳥の宝庫、天売島へ。島の人口は４００人。ミズダコ漁に出る佐藤さんが、かつて多数繁殖していたウミガラス（その鳴き声から「オロロン鳥」と呼ばれた）が、流し網漁の漁網にかかって激減してしまったと語る。今は絶滅の危機にある。島の南端の赤岩展望台はウトウ３０万羽の営巣地になっていて、夕方には巣穴に戻るウトウたちの不気味な羽音に包まれる。◆写真家の寺沢さんのガイドで森を散策。アオジ、ノゴマなど野鳥のさえずりを楽しむ。寺沢さんはオロロン鳥の保護にも尽力している。島には人々の暮らしもある。天売小中学校の運動会では、島民総出で声援を送る。翌日は天売厳島神社の例祭。神輿が担がれ、力強い唄が響く。

「ビートルズＴＯＰ１０」を毎週発表する番組。ランキングはビートルズ解散までに発表された２１３曲と、解散後に発表されたオリジナルソング２３曲の中から、リスナーの投票で決まる。基本的にビートルズの楽曲のみで構成し、パーソナリティのカンケと本間ちゃんがビートルズについてしゃべりつくす数々のコーナーも設けている。ビートルズをリアルタイムで体験した人も、ビートルズ初心者もマニアも楽しめる構成。（２００４年１０月放送開始）◆今回は、今週のランキングのほか、「邦題つけ放題！」の課題曲は「Ｔｈｅ　Ｎｉｇｈｔ　Ｂｅｆｏｒｅ」。日本語タイトルのついていない曲にリスナーからの投稿で番組オリジナルの邦題をつける。出演：カンケ、本間泰樹

美しい日本語の響きに言霊が宿ると信じられた時代に編まれた万葉集。文字で書き記すのではなく、声に出して歌うために作られた歌は、音で伝えてこそ心が伝わるのではないか。万葉学者で佛教大学教授の田中みどり氏の書き下ろした現代語訳万葉集は、まるで現代詩のような響きを持つ。田中氏による解説の後、白坂道子と深沢彩子が掛け合い形式で現代語訳と原文を朗読する。チェロの生演奏とともに紹介されるのは、山上憶良の「貧窮問答歌」、柿本人麻呂の長歌など２０首あまり。人が人知を超えたものに祈るとき、その言葉に宿る言霊を、現代の聴衆に届ける。

２００７年７月に起きた新潟県中越沖地震。新潟の復興の現状を、そして応援をもらった東京の方々へのお礼をと、１０月１３日、東京表参道の「新潟館ネスパス」（新潟県のアンテナショップ）に特設ステージを設けて公開生放送を行った。ＴＢＳラジオ「永六輔その新世界」と結び、泉田裕彦新潟県知事が永さんと対談。被災地の現況とさらなる支援を訴えた。新潟各地を訪れ、復興を支援してきた永さんは、「三波春夫さんがいたらどうされただろうと考えた」と語る。出演：近藤丈靖、石塚かおり、永六輔