１９４５年、国内で唯一の地上戦となった沖縄では、戦前の豊かな芸術も歩みを止めるしかなかった。だが１９４９年、終戦直後で物資も乏しく貧しさに打ちひしがれていた沖縄で開催された美術展「第１回沖展」に、２日間で１万５千人が訪れた。なぜ多くの人が美術展に足を運んだのか、紐解いていく。◆戦後沖縄美術の始まりは「ニシムイ」だと言われている。ニシムイは那覇市首里にあった美術村で、戦火を逃れ、命を繋いだ芸術家が集い、お互いの暮らしを助け合いながらも制作活動を行っていた。彼らは米軍施政権下で葛藤しながらも絵筆を持ち続ける。ニシムイの画家たちは制作をすることで自らの人生を想い、沖縄の復興を願い、沖縄美術の再興、発展を願った。そんな彼らの思いこそが、第１回沖展に多くの人が足を運んだ理由だった。◆戦後７０年、依然続く沖縄ブームの中で沖縄らしさが安易に語られる日常に向けて、アンチテーゼがニシムイの画家たちの生き方から見えてくる。

横浜市にかつて存在した根岸競馬場は、横浜開港から間もない１８６６年に建設され、１９４３年まで約８０年間、日本初の本格的な洋式競馬場として一時代を築いた。現在は根岸森林公園として整備され、一等馬見所のみが当時の面影を残す建物として残る。「もしも今、この横浜で競馬が行われたら」という思いを胸に、横浜出身で競馬を愛する倉持明日香が、その願いを音だけのラジオで叶えようと、様々な人と出会いながら、当時の根岸競馬場の歴史を紐解いていく。横浜根岸にゆかりのある人、根岸競馬に関わってきた人々、地元出身の競馬騎手、そして大好きな馬たちに夢を描く競馬ファン。それぞれの思いを胸に、そして事前に出走馬を選ぶリスナー投票も行い、音だけで再現される架空のレース「横濱記念」を開催する。

後世に残しておきたい、「時代を創った」声優たちにインタビューするシリーズ。これまでに歩んできた道のりや、「声」に対する思いを聞く。◆野村道子さんは『ドラえもん』のしずかちゃんを２６年、『サザエさん』のワカメちゃんを２９年演じてきたが後進に譲り、同じく声優だった夫の故・内海賢二さんが設立したプロダクションの経営に携わりながら、若手の育成に取り組んでいる。長く演じた二つの役の思い出、お天気お姉さんを経てアフレコ中心の世界へと進んだ半生、声優業界の変遷、内海賢二さんとの思い出などを語る。

福岡県に住む高橋さんは現在８８歳。「女でもお国のために働きたい」と１９４２年に１４歳で満州に渡ったが、ソ連軍の侵攻で帰国できなくなった。高橋さんは中国人男性に助けられそのまま中国に留まった。その後、夫との死別、再婚を繰り返し、新聞も来ない農村で暮らしていたが、買い物を包んでいた新聞紙の見出しで日中国交正常化を知る。ようやく日本に帰国できたのは、終戦から３６年後のことだった。子供４人とその家族を連れて帰ってきた高橋さんへの国からの支援は決して手厚いものではなく、生活苦の中、８０歳まで働いた。一方、中国で生まれ育ち親について日本に来た二世たちも、言葉の壁や文化の違いに直面し、苦労していた。◆戦後７０年余り、日中関係が悪化する中、日本と中国の間で揺れ動いてきた帰国者とその家族たちの思いを、日本の放送局で働く中国人記者の視点で解き明かしていく。◆平成２８年度文化庁芸術祭参加作品、ＲＫＢラジオドキュメンタリー

後世に残しておきたい、「時代を創った」声優たちにインタビューするシリーズ。これまでに歩んできた道のりや、「声」に対する思いを聞く。◆玄田哲章さん（６７歳）は、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンの吹き替えをはじめ、数々のアニメやゲームにも出演してきた。この道に進んだきっかけ、様々な作品の思い出、ようやく果たしたシュワルツェネッガーとの対面などについて語る。

大晦日の午後１０時から、年をまたいで３時間の生放送。今年のテーマは「大事な人にありがとう」。事前に寄せられたものに加えて、リアルタイムで寄せられる「ありがとうメッセージ」と「ありがとう」の曲を紹介していく。メッセージを伝えるのは、新人女子アナウンサーの３人。約９０の「ありがとう」の宛名は、パートナーや、家族、他界した親や伴侶と様々だ。メッセージに込められた一つ一つの思いを、涙あり、笑いあり、ときには自分の境遇と重ねながら、新人らしい感性で背伸びせず伝えていく。また岡山県で最も参拝客を集める最上稲荷神社からの中継も盛り込み、賑やかな年越しの瞬間も届ける。

岩手のイクメンを紹介しつつ、男性の育児への関わり方を考える。東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市で、育児にも積極的に参加する男性がいる。歯科医の吉田重之さんは、２児の父親。取材した日も子供が病気になり、保育園と家を往復。子育ては思い通りには進まない。吉田さんは育児に携わることで、子供の虫歯率が県内ワースト１の陸前高田市を何とかしたいという思いが芽生えた。吉田さんの「パパ友」で、九州から移住してきた山本健太さんは、パパサークルをつくった。育児に封建的な考えの父親を、仲間に入れたいと思っている。そして「イクボス」にも注目。父親が父親であることを楽しめるよう支援活動をしている、ＮＰＯ法人ファザーリングジャパン東北支部理事で、岩手県代表の後藤太平さんに、岩手のイクメンの状況、ファザーリングジャパンが提唱する「イクボス」について聞く。男性の育児が社会に浸透するには、何が必要なのだろうか。

古事記編纂１３００年の年に、古事記を題材に制作したラジオドラマ。◆時は天武天皇の治世。国の始まりを伝える上古の物語を正しくまとめて後の世に伝えるべく、これらを誦習するよう、優秀な一人の若者に詔が下された。宮中に仕える舎人、稗田阿礼（ひえだのあれ）である。抜群の記憶力の持ち主と評判で、「目と耳に触れたものは心に留めて忘れることはない」と人々から噂されるほどだった。ところが実際の阿礼はいたって普通の若者。前人未到の大仕事を命じられ、夜な夜な人知れず誦習の稽古に励むのだった。ある晩、不意に睡魔に襲われた阿礼は、不思議な夢を見る。