福岡にある２つの劇団が共同制作した舞台を基にしたラジオドラマ。◆主人公の栄二郎は、特攻出撃直前に終戦を迎え故郷・博多に戻ってきた。焼け野原となった博多で友人とともに得た仕事は、進駐軍が主導する検閲の仕事だった。配達前の手紙を読んで英訳し、禁止項目に触れていないか検閲する。栄二郎は、「他人の手紙を奪うこと」に罪悪感を抱きながらも、長崎に疎開している家族と再会するため、その仕事を続けるのだが…。戦争を境に変わってしまった価値観、人生。愚かな戦争は、終わった後も人々を苦しめる。それでも力強く一歩をふみ出す栄二郎は、長崎へと向かう。◆平成２８年度文化庁芸術祭参加作品

船浮は、沖縄県の西表島という自然豊かな離島の中にあるシマ（集落）だ。西表島の中心地からは、陸路でたどり着けず、船で海を渡るしかない。人口わずか４４人。行き来に不便で、祭りを催すにはどう考えても不利な場所だ。そんな船浮で、年に一度開催される「船浮音まつり」は、今年で１０回目。交通の便が悪い小さな集落で６００人余の観客が訪れる祭りが１０年も続いているのだ。その立役者は、船浮出身のミュージシャン池田卓さん。かつては沖縄本島で音楽活動をしていたが、今では活動拠点を故郷の船浮に移し、毎年４月に催される「船浮音まつり」では、たくさんの観客を湧かせる。船浮で生まれ育った人の多くが、シマを離れて暮らしている中、小さなシマで生きることを選んだ池田さんは、シマの子どもたち、そして私たちに、自らの生き方を通して「豊かに生きる意味」を教えてくれる。

平日朝の情報生ワイド番組。「Ｐ・Ｏ・Ｎ」は、Ｐｅｏｐｌｅ（人々）、Ｏｐｉｎｉｏｎ（意見）、Ｎｅｗｓ（ニュース）を意味している。（１９９９年４月放送開始）◆５月２６、２７日に三重県で伊勢志摩サミットが行われるが、これに先駆けて昨年、伊勢志摩に世界の注目が集まった。三重県水産研究所が、人工ふ化した稚エビを国内で初めて試験放流したのだ。伊勢えびの生態には謎も多く、世界中で研究対象となっている。今回の試験放流は、安定的な漁獲に向けても新たな一歩となった。日本人にとっては古くからめでたい席に欠かせない食材であり、今回のサミットの宴でも首脳陣が舌鼓を打つであろう伊勢えび。なぜ伊勢以外で獲れても伊勢えびなのか、水産試験所はどのように稚エビを飼育しているのだろうか。「伊勢えびサミット」と題して、伊勢えびの生態から伊勢えびにまつわる歴史文化、そして伊勢志摩サミットの情報など盛りだくさんでお送りする。

中国・四国の８局が持ち回りでそれぞれのエリアの様々な情報を発信する「中四国ライブネット」。今回は高知放送の制作。◆高知県香南市赤岡町にある、絵金蔵からの放送。江戸時代末期、高知に一人の優れた絵師がいた。土佐藩家老、桐間家の御用を務めていた狩野派の絵師、金蔵、通称「絵金」である。彼は贋作の疑いをかけられ御用絵師の職を解かれた後、親戚を頼って現在の高知県香南市赤岡町へたどり着いた。そして、ここで庶民の注文に応じて絵をかく「町絵師」として活躍した。絵金の作品「芝居屏風絵」は、おどろおどろしい雰囲気が特徴で、現在も赤岡町に数多く残され、街の人が大切に守り続けている。金蔵と作品、そして作品を守り続ける町の思いを伝えると共に、放送翌週に赤岡町で行われるイベント「冬の夏祭り」についても紹介する。

作家の五木寛之さんが独自の視点で昭和の名曲を振り返るシリーズ。今回は今年（２０１６年）７月に亡くなった永六輔さんの作品を、「お互いに旅好きで、旅先でばったり出会ったこともある」という五木寛之さんが、エピソードと共に振り返る。永さん自身がいちばん好きだったという「黄昏のビギン」、今なお多くの歌手にカバーされている「遠くへ行きたい」、さだまさしさんとの合作「ふ」や、「女ひとり」、「上を向いて歩こう」などを紹介する。

東日本大震災から５年に際して、被災地に思いを寄せる人々へのインタビューを特集する。５日目の今回は、家族・親族を震災で失いながらも地元漁業の復活に尽力する佐藤清吾さん。◆漁協の組合長を務めていた佐藤清吾さんは、震災当時に妻と孫を避難させ浜の様子を見ていた。避難させた実家は津波に飲まれ、妻と孫を亡くしてしまう。組合長という立場から、漁業で生活する組合員たちを守るため奔走していた佐藤さんは、自身の辛い気持ちを封殺して忙しい日々を過ごしたことで救われることもあったと話す。津波によって生活の基盤を失った組合員たちのために、漁業を再開できるよう各所に声をかけて回り準備を進めた佐藤さん。その行動源となった強い思いを聞く。

絵本作家の五味太郎さんの２回シリーズのインタビュー。五味さんは２８歳で絵本作家としてデビューし、以来４００冊を超える絵本を手掛けてきた。２回目のテーマは「子ども」。五味さんは絵本の世界に飛び込んで、子どもとは何か、大人とは何か、という問題に向き合うことになったという。「改訂版　勉強しなければ大丈夫」を出版した五味さんが、絵本と児童書、子どもや学校についての考えや思いを語る。

東日本大震災から５年が経つが、一歩前へと歩み出した人、いまだ歩み出せずにいる人、震災復興への取り組みは、地域や人によって様々だ。被災地沿岸部を走る国道４５号線と６号線をピックアップ。そのルートをたどる旅を通して、宮城・東北の今を伝える。旅人が宮城県南端の山元町から北端の気仙沼市までの各地を訪れ、地元の食や文化、復興への取り組みを紹介していく。旅をするのは、震災後塩釜市を拠点に支援活動を継続している、Ｄｒａｇｏｎ　ＡｓｈのダンサーＡＴＳＵＳＨＩ。外部の人間ならでは気づく、地域の魅力やささやかな発見をリスナーとシェアして、発信していく。ナレーションは気仙沼在住のシンガー・ソングライター、熊谷育美。旅物語として、東北の新たなる旅立ちを描く。（２０１６年３月７日～１０日放送、７２分の編集版を公開）