岐阜県郡上市の小川地区は、小川峠の先、四方を山に囲まれた小さな集落だ。地区唯一の小川小学校には６名の児童が通っている。この学校では、上級生が下級生の世話をすることが慣わしとなっていて、たった１人の６年生しのさんも下級生５人の面倒を見ている。小川小学校は花壇作りに力を入れ、県の花壇コンクールで最優秀賞を度々受賞している。今年（２０１５年）はしのさんが、取り壊しが決まっている木造校舎へ感謝の気持ちを込めて花壇をデザインした。花壇作りには、子供たちはもちろん地域の大人たちも参加する。この集落では、大人が積極的に様々な行事に参加し、子供が自分の地区に誇りを持てる様に教育している。運動会、スケートリンク作り、卒業式。小川小学校の１年を語るのは、集落を６０年間見守ってきた木造校舎。役目を終え、姿を消す思い出の校舎が、小さな集落に昔から受け継がれる地域の絆、過疎の集落に残すべき様々な魅力を優しく語りかける。（文化庁芸術祭参加版。）

１９９６年、「沖縄の痛みを分かち合う」という方針のもと、沖縄駐留アメリカ海兵隊の実弾射撃訓練が大分県の日出生台演習場に移転した。移転決定から２０年、演習場に隣接する玖珠町小野原地区には「防衛省」と書かれた赤い支柱が立ち並び、地域では「赤い墓標」とも呼ばれている。国に買い取られた民有地だ。移転補償制度で多くの住民が故郷を去り、過疎化が一層進む。玖珠町には訓練受け入れに対する国の見返りで、これまでに２６億円以上のＳＡＣＯ交付金（特定防衛施設周辺整備調整交付金）が投じられ、道路整備などまちづくりなどにも使われてきた。一方、演習場から直線でわずか２００メートルの小野原分校。射撃訓練の轟音と教室を隔てるのは、古びた二重窓だけだ。体育館やプールもなく、訓練受け入れの恩恵はない。地域の人たちが汗を流して分校を支えている。かつて小野原の人々の暮らしがあった演習場内には、サクラソウが群生している。アメリカ海兵隊実弾射撃訓練移転決定から２０年。分校の１年を追いながら、訓練が地区にもたらした影響や問題を問う。

中国・四国の８局が持ち回りでそれぞれのエリアの様々な情報を発信する「中四国ライブネット」。今回は四国放送の制作。◆徳島が全国に誇る伝統芸能、阿波人形浄瑠の入門番組。三味線の伴奏による浄瑠璃と人形劇を融合した阿波人形浄瑠璃は、１６１５年に淡路島から徳島に伝わったとされ、一体の人形を三人の人形遣いが操るのも特徴だ。人気の演目は『傾城阿波の鳴門（けいせいあわのなると）巡礼歌の段』。ただ、語られる言葉は江戸時代から変わらず、初心者には敷居が高いのが現実だ。そこで、おなじみ『傾城阿波の鳴門　巡礼歌の段』の名場面をやさしく解説した後、スタジオで実際に上演する。また、物語を語る太夫、背景や心情を奏でる浄瑠璃三味線、そして人形遣いにもスポットを当てる。後半では伝統を受け継ぐ人たちの思いや、次代を担う子どもたちの活動、人形浄瑠璃普及の思いも込めた『オレオレ詐欺啓発浄瑠璃・警醒電話鳴ると（けいせいでんわなると）』を紹介する。

平日夕方の生ワイド番組。この日は２０１６年４月１６日の熊本地震本震の後、多くの人が避難する状況で、最初のレギュラー番組放送回である。通常とは番組内容を変えて地震関連情報中心の構成にしたが、非日常の事態で少しでも平常心を取り戻してもらえるよう、いつもの時間に、いつもの番組、いつもの声を届けるべく、しかし避難所や車中で初めて聴くリスナーがいることも意識して「ゆっくり丁寧に」を心掛けた。出演は、メインパーソナリティのかなぶんやに加えて、いつもはロアッソ熊本情報を伝えている風戸直子。余震が続く中、ライフライン、交通、店舗の営業状況など、逐一地震関連情報を伝えた。また楽曲もその状況に合うものか留意した。デマなどで情報が錯綜する中、正確な情報を伝えるというラジオの使命を全うするため、多くのスタッフが関わった。あるリスナーからは、「緊張の糸が張り詰めていたが、ラジオから流れてくるいつもの声に自然と涙がでた。心が落ち着いた。」というメッセージも寄せられた。

大分市在住のアマチュア漫才コンビ「おたふくまめ」は、結成１０年を迎えた。メンバーは、“ふくちゃん”こと河野サヨ子さん（６９歳）と、“まめちゃん”こと田淵慶子さん（６８歳）で、２人とも専業主婦。それぞれの生活の中で気づいたことや感じたことをネタにして、月数回のステージを披露し、主婦目線のお笑いがお客さんの共感を呼んでいる。これまで「Ｍ－１グランプリ」の福岡予選に４回出場した。全て１回戦敗退をしているが、若い芸人が直前まで真剣にネタあわせをする姿を見て、刺激を受けていると語る。二人はそれぞれ、家族の看病や介護、自身の病気や夫との死別を乗り越えてきた。「おたふくまめ」の１０年の歩みをインタビューで振り返りつつ、お笑いステージの模様も伝える。

自然環境とエコをテーマに、宮崎県内の様々な話題や取り組みを紹介する番組。パーソナリティは、宮崎の自然に親しみ、環境保護活動などを行ってきた木佐貫ひとみと初鹿野聡。◆今回は宮崎の“春の音”と“春心”がテーマ。木佐貫が県内各地を取材する「ナチュラルライフ」では、宮崎県最南端、串間市の都井岬に生息する野生馬の赤ちゃん“春駒”を取材。国の天然記念物であるこの御崎馬（みさきうま）と自然と人間の関わりをレポートする。後半「きになるきもち」は、初鹿野が長年ボランティア活動をする中で気になることを自身の言葉で伝えるコーナー。「中山間地盛り上げ隊」は、９年前から県内集落の祭りや行事などを支援している。継続的に関わってきた宮崎県諸塚村七ツ山立岩地区諸塚神社の春の例祭（春神楽）をレポート。これら二つのコーナーをメインに、夜のカフェ、エ・コ・コロカフェにておいしいお酒と共にゆったりとした時間を過ごす。

インパール作戦で知られる太平洋戦争の激戦地、ミャンマーには現在も４５０００柱の旧日本兵の遺骨がそのまま残されている。一日も早く帰還させようと独自で調査を続けているのは、福岡市出身の僧侶、井本勝幸さんだ。民間人でありながら調査できるのは、彼がこの地である貢献をして、「ゼロファイター」呼ばれるほど信頼を得ているからだ。地元住民の協力を得た井本さんは２０００柱の遺骨の埋葬地の情報を厚生労働省に提供し、３９年ぶりとなる国による遺骨調査収集へと動かした。２０１６年２月、井本さんは国の調査団をミャンマーの奥地へ案内した。国が動いたことでようやく、井本さんら民間人には許されていなかった遺骨の発掘、収容が始まった。戦没者遺骨収集推進法も成立した。しかし、すでの終戦から７１年が経ち、遺骨収集には困難が伴った。いち早い遺骨収拾に向けた課題を提起する。

千葉県内を走るローカル線にスポットを当て、鉄道会社が行っている取り組みや電車旅の魅力を紹介する特別番組。列車気分を盛り上げる音楽と共に、実際の列車の音や地元の声を届ける。◆いすみ鉄道の名物「ムーミン列車」。菜の花畑を走る列車にはムーミン谷の仲間たちが描かれ、途中通過する「ムーミン池」は人気の写真スポットだ。その他にも、大河ドラマ「真田丸」に登場する本田忠勝の城・大多喜城など見どころ満載。◆小湊鉄道は２０１７年に創立１００周年を迎えた。車窓から見える折々の風景もさることながら、なんと７７万年前の地層を見ることもできる貴重な列車だ。小湊鉄道の社長と共に、時速２０～３０キロで走行するオープンエアの里山トロッコ列車に乗車した旅の模様を伝える。◆「銚電」の愛称で親しまれる銚子電鉄。ぬれ煎餅の販売や列車修理代を募るクラウンドファンディングなど、幾度の経験難を銚電ファンとともにアイデアで乗り越えてきた。今回は、古い駅舎の修復のため地元高校生が立ち上げたクラウンドファンディングの取り組みを紹介する。