世情が混沌としたときに突如歴史の表舞台に現われ、そして消えていく桜の名所・吉野。後醍醐天皇、源義経・静御前、楠木正行など吉野山中で繰り広げられた悲劇を物語る遺物が、今も随所に静かに眠っている。古今、“吉野”を歌い“吉野”を描き“吉野”を訪れた人の数はおびただしい。遠く、天皇の離宮があった清流の宮滝など、吉野にまつわる古事をさぐり、残された社寺や仏像の由来から吉野の「魔性」に迫り、歴史の数々を遍歴する【国宝】金峯山寺蔵王堂【重要文化財】金剛蔵王権現立像（金峯山寺）、吉水神社書院、吉野水分神社社殿、役行者像（桜本房）、金剛蔵王権現立像（如意輪寺）

賑やかに常磐津「靭猿」が登場する。女大名が弓の矢を入れる靭に皮を貼るため、猿回しの曳く小猿に目をつけるが、愛らしい芸に免じて命を助けるという筋で、滑稽味溢れる振りが客席の笑いを誘う。渡辺保は、歌舞伎には、能狂言を原作とする出し物が数多く、「松羽目もの」というが、出雲阿国以来、歌舞伎は能狂言の江戸時代的展開とも言えると指摘する。江戸庶民の人情に合致するように、また時世に合わせ、見得を切る所作や物語の展開などを、歌舞伎風に取り込んでいった。

娘と２つ違いの女と再婚した作家と娘との微妙な関係を描く。◆昭和３７年（１９６２）、田島柾二郎は３年前に妻を亡くし、一人娘のみこと鎌倉に住んでいる。みこは戦争中の女学生時代に学徒動員で、肝臓と脚をすっかり悪くしていた。柾二郎はひそかにつき合っていたさとが夫と別れて再婚できるようになり大喜びする。だがさとは２歳しか年の違わぬみこを気遣って、鎌倉には一緒に住まぬという。仕方なく柾二郎は昼間はさとの家で仕事をし、夜は終電で鎌倉に帰るという生活を余儀なくされる。

円覚寺は、かつて鎌倉五山第二位の寺格を有した巨刹・臨済宗円覚寺派の大本山である。文永の役、弘安の役と二度にわたる蒙古襲来を乗り切った時の執権・北条時宗が戦に没した敵味方の霊を慰めるため弘安５年に創建した。この時代、心のよりどころとして生死を越えて生きる智恵を学ぶ禅が求められた。時宗も禅を心の支えとし、中国から無学祖元を招いてこの寺を開いた。禅宗様式の建築を今に遺した鎌倉武士の心と遺構をつぶさに見る。◆【国宝】円覚寺舎利殿、梵鐘【重要文化財】円覚寺領尾張国富田荘図（円覚寺）、仏光国師坐像（円覚寺）、北条時宗書状（円覚寺）、無学祖元書状（円覚寺）

１９４５年、終戦の年の秋。６０歳を越えてから、日中戦争に対して静かで強固な反戦活動を行った老日本語教師が孤独な死を迎えた。彼の名は松本亀次郎。彼の最後の教え子２人が、彼に縁の深い土地を訪ね歩きながら、現代に通じる思いを探るとともに、彼に憧れて日本に留学している学生の生活を紹介しながら、現代に通じる彼の思いを伝える。

長年の夢をかなえたい、このコンプレックスを何とかしたいなど、さまざまな想いを抱えた人たちの駆け込み寺「野望山・馳参寺」。住職（筒井康隆）は彼ら「迷い人」の野望や願いをかなえるため「ナビゲーション坊主」を派遣、その道の「高僧」（ゲスト）とともに野望達成の過程をレポートする。◆第１回の野望は「美人演歌歌手になりたい！」。演歌歌手志望の二人の少女にスポットを当てる。

一家の主婦が、事故で脳に損傷を受け、家族の顔も見分けられない障害を負った。家族の苦悩の中で、家族の意味を問い直すとともに、障害者のいる家族にとって周囲の協力がいかに不可欠かということもあわせて描く。◆中学校教師の石岡耕平（橋爪功）は妻の由紀子（樋口可南子）、娘の祐子と３人暮らし。ある日、由紀子が交通事故に遭い、一命は取りとめたものの障害を負ってしまう。納得できるケアをしてくれる病院も見つからない。それまでは仕事一筋だった耕平だが、回復の見込みのない妻のために仕事を辞め、介護に専念することを決意した。◆解説副音声と字幕表示あり

人類の科学文明はさらに発展を遂げたが、その代償に凶悪な科学犯罪も後を絶たなかった。事件が発生するとどこからともなく現れ、事件を解決すると風のように去っていく謎のロボット・ジャンパーソン。ジャンパーソンは愛と炎の電脳で悪に立ち向かう。メタルヒーローシリーズ第１２作。（１９９３年１月３１日～１９９４年１月２３日放送、全５０回）◆最終回。最大最強の敵、魔王ビルゴルディとの決戦が始まった。スパイとして帯刀コンツェルンに潜り込んだ三枝かおる（川嶋朋子）は洗脳システム・ハイパーサブリミナルの無効化を試みるが、正体がばれてしまう。ジャンパーソンが願うロボットと人間の共存は叶うのか。