かつては水量豊かで、人や物資の水運路であった太田川。木材を流した筏師たちが歌った流し唄を紹介する。◆戸河内町から可部に至る太田川本流の流域には森林が広がり、産出される木材は筏流しによって運ばれた。大正時代には川舟が３５０艘上下し、筏は１日平均１０組が下る賑わいであった。源流に近い奥地で切り出された材木は「筏場」や「筏浜」と呼ばれる箇所に集められ、筏に組み上げられて、広島へ向かった。筏流し唄は急流や早瀬では棹使いに忙しく歌う暇も無いが、流れが緩やかになると自然に口を突いて出た訳である。戸河内の唄に比べ、それより下の加計あたりの唄が更に緩調子なのも面白い。

豊臣秀吉の死から徳川幕府の確立まで、天下分け目の関ケ原を延べ７時間で描く。ＴＢＳ東京放送創立３０周年特別番組。原作：司馬遼太郎。（１９８１年１月２日〜１月４日、全３回）◆第一夜は、秀吉の死によって次期政権を狙う人々の思惑が動きはじめる時期を描く。自分の天下がくるとほくそ笑む徳川家康、その行く手を阻むための準備を始める石田三成。秀吉の側室であった淀君はひたすら三成を頼り、妻であった北政所は、天下が家康に傾いていくのをあえて見過ごした。淀君と北政所の対立によって、豊臣政権は内部から崩れていった。

熊本の民謡の中で「おてもやん」ほど全国に知られた民謡はない。しかし誰が作り、いつ頃から歌われ出したのか定説はない。熊本の女子大生４人がその「おてもやん」に興味を抱いて由来を調べる。幕末の勤皇志士の忍び歌、１８７７年（明１０）西南の役で熊本士族をやゆした歌、実在した「おても」と「彦一」をはやしたてた歌と、諸説あってはっきりしない。そこで４人は、資料が残っているという実在説を追ってみたが…。

病いに冒されながらもひたむきに生きる夢千代と、それぞれ暗い過去を背負いつつもしたたかに生きる芸者たちの姿を、山陰という独特の風土の中で描くドラマ。（１９８１年３月１５日終了、全５回）◆夢千代こと永井佐千子（吉永小百合）は、被爆２世。母のあとを継いだ春屋という芸者置屋を細々と営んでいる温泉芸者。自分の病状をつぶさに日記につけている。春屋には、なぜかユニークな芸者ばかりが集まってくる。

正岡子規の墓碑銘を手がかりに、彼の人間的魅力を浮び上がらせていく人物伝。◆正岡子規は、死の４年前にあたる１９０８年（明４１）７月、友人の河東銓あてに手紙を送り、自らの手で書いた墓碑銘を同封した。「月給４０円」で終わる墓碑銘を分析しながら、子規の亡き父に対する思慕と、彼の金銭感覚をさぐっていく。◆ＮＨＫ松山放送局開局４０周年記念番組・えひめ教養講座

“ポプコン”こと、ポピュラーソングコンテスト本選会に３度目の挑戦で出場を果たした国鉄富山車掌区の伊藤敏博さんは、自作自演の「サヨナラ模様」でみごと日本一のグランプリを獲得した。番組では、国鉄の車掌をつとめながら音楽に青春を賭ける伊藤君の生活ぶりをつぶさに取材し、彼が生まれ育った親不知の風土や家族、音楽仲間とのかかわりあいの中から、彼の音楽的感性がどのように培われたかを描く。

素朴で底抜けに明るい村人たちと駐在所の警察官夫婦のふれあいをユーモラスに、そしてしみじみと描くシリーズ。北海道石狩郡厚田村。村に１軒の寿司屋がある。村の人たちのために「心の日」なる奉仕デーを設け、恵まれない老人には秘かに寿司を届けている。人のよい兄妹が営む、小さな寿司屋である。粉雪の舞う厚田の浜は今、タコ漁で賑わう季節だ。

文学作品のゆかりの地を訪ね、風景やそこに暮らす人、その作品に影響を与えた人にふれることで、文学作品のもつ「もうひとつの世界」を探る、文学紀行番組の新シリーズ。第２集まで制作・放送された。（第１集／１９８１年１０月４日～１９８２年３月２８日放送、全２６回）◆第８回は、金沢市に生まれた泉鏡花の「高野聖」（１９００年）を取り上げる。「泉鏡花」というペンネームは、それ自体が作品なのではないか。人形師の辻村ジュサブロー氏と、評論家・作家の松永伍一氏の解説で、「泉」、「鏡」、「花」それぞれの文字が象徴するものを読み解いていく。また、「高野聖」で描かれる女性像、鏡花の世界観を明らかにしていく。