農業と出稼ぎで生計を立てながら奥能登で生活する老夫婦を描くドキュメンタリー。◆石川県珠洲市の山あいに住む奥さん夫妻。農閑期の出稼ぎで家や田畑を守ってきたが、今は妻だけが滋賀県へ能登杜氏の賄いに出て、農業の赤字を埋める。７０歳になっても働きつづける妻を、夫は短歌を詠みながら待ち、妻の存在を「愛を越えた愛」と語る。妻は働きすぎて曲がってしまった指で大根をおろしながら「もう帰りたい」と涙し、２８歳から続いた出稼ぎを終えた。初めて二人で過ごす２０００年の冬、「もう減反してほしい」と言う妻に、夫は「農業は喜びが実るもの、それが農魂」と田んぼとともに生きてきた人生を語る。春、老夫婦はいつもと同じように田を耕す。「父母のお墓と田畑山林のありてここより行くところなし」。

沖縄県名護市にあるハンセン病療養所、沖縄愛楽園。軍政下に置かれ、本土の施設よりさらに過酷な戦後をたどったその歴史に光を当て、今なお残る差別や偏見と戦う元患者たちの姿を追う。◆沖縄愛楽園には元ハンセン病患者患者４百人余りが暮らす。ドイツ出身の占領軍医ロルフ・フォン・スコアブランド博士は、病気と貧困と差別で悲惨な生活を送り、生きる希望を失っていた愛楽園入所者らに物心両面で援助の手を差し伸べ、さらに、祖国ドイツの人々の協力を得て、生きていく上での希望の象徴として「希望と自信の鐘」を贈った。博士が他界して１０年余、沖縄サミット開催が決まり、愛楽園の人々はドイツ国民に感謝の意を伝えようと、ドイツ首相を園に招聘する運動を始めた。

北方圏の国々を訪ね、寒冷多雪地域に生きる知恵や楽しさ、北に生きる素晴らしさを伝えるシリーズ。（２０００年１０月１２日～１２月２１日、全１１回）◆「雪かきって本当に大変！」。雪との闘いは北国の住人の永遠のテーマ。雪を捨てる、融かすなど、各国のアイデアを集めた。カナダのモントリオールでは、昔の石切場を利用して、除雪車が数十メートルの高さから雪をドカーンと捨てている。アメリカのミネアポリスには、世界でたった一台しかないというハイテクを駆使した除雪車がある。また、年間５メートルの雪が降る札幌では、札幌駅地下の巨大な融雪槽が活躍する。融雪槽を発明したのは札幌の小さな板金屋さんだった。「融雪槽１号機を見たい」というリポーターの近藤と市毛に、店の主人はスコップを差し出す。

福祉という言葉もない時代に岡山孤児院を設立し、孤児の救済に一生を捧げた社会福祉家・石井十次の功績を、彼の撮影した映像を手掛かりに再検証する。◆石井十次は１８６５年、宮崎県南鍋町の下級武士の長男として生まれた。医師を目指し、岡山の医学校に進んだが、貧しい女性から子どもを預かったのをきっかけに岡山孤児院を開設し、孤児の救済を始めた。岡山孤児院は１２００人の子どもが生活する施設となり、１カ月の運営費に現在のお金で６千万円も要した。この寄付集めの手段として思いついたのが、当時まだ珍しかった活動写真の上映だった。十次は孤児院の子どもたちを撮影し、全国で映写会を開き、寄付を集めた。

奈良・唐招提寺の国宝、鑑真和上像は、天平宝宇７年（７６３）に作られた、我が国最古の肖像彫刻である。唐で律宗の最高位、授戒の大師であった鑑真は、当初、我が国の朝廷に厚く迎えられ、大僧都に遇された。だが厳しい戒律への反発から、僅か２年で任を解かれ、弟子たちと西の京の地に移ることになった。しかし、その後も鑑真の高い学識と徳を慕って集まる者が多く、今日の唐招提寺に発展した。鑑真の高い精神性を写し、日本彫刻史上、最高傑作とされる、この像の魅力を探究する。◆唐招提寺、鑑真和上坐像【国宝】、唐招提寺御影堂【重文】、薬師如来立像【重文】（唐招提寺蔵）

原爆投下直後の極限の状況で、家族や知り合いにあてて焼け跡の校舎の壁面に被爆者が書き残した伝言が、５５年後の２０００年によみがえった。わずかな望みを託し、最後の力を振り絞って書かれた伝言と、家族の記録を伝える。◆爆心地からわずか４５０メートルの地点にある広島市立袋町小学校（当時は国民学校）。鉄筋コンクリートの校舎はかろうじて全壊を免れ、被災者の救護所となっていた。小学校の関係者、収容された被災者、家族を探しに来た人たちが、焼けて真っ黒になった壁に伝言を書き残していった。その伝言は伝わったのか。書いた人・あてられた人、それぞれのその後を追う。

高機能自閉症の女性と、恋人を亡くした元精神科医の恋を描く。（２０００年４月１３日～６月２９日放送、全１２回）◆第１話。自分や他人の感情をいまひとつ認識できない雨宮繭子（ともさかりえ）は、天気の予知や記憶が得意で、弟の潤（藤原竜也）の手を借りて天気予報のホームページを開いていた。ある雨の日、繭子は散歩の途中で狭山慎一（上川隆也）と出会う。彼は精神科医だったが、自分が約束を破ったために事故で恋人を失い、ＰＴＳＤに苦しんでいた。今は潤の予備校の講師で、二人は潤を介して再会する。やがて繭子の天気予報がマスコミで話題になり、代議士の水島（宅麻伸）は後援会のパーティーに繭子を招く。水島は繭子を利用しようとしていた。

戦争によって翻弄されたある親子を通して家族の在り方、愛、絆を描く。◆２０００年、日本とドイツに別れて暮らす家族が再会した。宮城県に住む伊藤實さんとドイツに暮らす子どもたち。しかし、共通の言葉はロシア語しかない。サハリンにいた伊藤さんは戦後シベリアへ抑留。その後、カザフスタンに住むよう命じられ、そこで戦争で家族と引き裂かれたドイツ人女性と出会う。同じ境遇の二人は心を寄せ合い結婚して子どもをもうけたが、やがて妻は病死。ソ連崩壊で家族が困窮する中、伊藤さんの子や孫にドイツ移住の道が開ける。当時結婚届を出せなかったために移住資格のない伊藤さんは、悩む子どもたちの移住を後押しする。カザフで一人暮らしを決意した伊藤さんも永住帰国が実現し、半世紀ぶりに日本に帰った。