いま、サイゴンはテト（正月）前後の奇妙にはなやかな活力がみなぎっている。盛装をしてお寺参りをする女たち、花市を行く娘たちの笑顔…。表面的には戦争の影はない。が、一見はなやかで平和な人生のかげに、歴史の大きな流れの中にいるサイゴン民衆の人生の重さがひそんでいる。番組はサイゴンの何人かの人生記録をオムニバス風にまとめ、それらを歴史的な記録フィルムによって裏うちしていく。

人形をミニカーでひき殺す遊びをくりかえす少女と、テスト・ドライバーの青年との交流を中心に現代人の心のひずみを描いたドラマ。◆自動車会社所属のテストドライバー小田はアフリカラリー出場を狙っている。代表は１人。仲間を蹴落としてもと考える彼にとっては、恋も邪魔。ライバルの事故にも内心ほくそえむ。そんなドライな彼にも心の痛むことがある。建設中の団地で遊ぶ少女・圭子の姿だ。少女の両親は共稼ぎ。ミニカーで人形をひく彼女の異様な心理と行動が彼の心につきささる。

社会のなかで生きる日本人を描いたヒューマンドキュメンタリーシリーズ。（１９６４年１１月１日～１９７１年４月３日放送）◆岩手の中学を卒業して、集団就職で京浜工業地帯の大企業に旋盤工として就職した若者。彼は夜間の工業高校に通いながら、技能オリンピックに出場する。心が揺れ動きながら２０歳を迎えるまでを見つめる。

１８年半、７９４本にわたって続いた長寿紀行番組。地域に根ざして生きる人々を描いた紀行ドキュメンタリーのスタイルを確立した。（１９６３年１０月７日～１９８２年３月１０日）◆１８１９メートルの磐梯山麓。この山と強いかかわりを持つ山麓の人々の生活、ことに桧原湖のほとりにある山の分校の子どもたちとその地域の生活をじっくりと見つめる。

長崎県南高来郡小浜町南本町に「石膏工場」とよばれる小さな工場がある。終戦後、傷痍軍人のひとりが自立更正のために作ったこの工場は、不慣れな事業に失敗を重ねながらも毎年の干支動物を作り続けた。今では県下の美術教育の縁の下の力もちとして、美術教室にブロンズ像を納入している。国や県から補助も受けず、身障者をいつでも受け入れ、自立の工場運営を続けている。弱者の味方、不屈の人間像をつづる。

資産家の未亡人に自分の夫を寝取られたと知った女房が、「人のもん、ただで使うことあらへんやろ、５０万で買うておくなはれ」とねじ込む。２人の女が消耗品扱いの男を売ったり買ったりするうちに展開される奇想天外な人間喜劇。原作：岸宏子「ある開花」（１９６９年７月２日〜１９６９年９月２４日放送、全１３回）◆伊賀上野で５００年続く名家・神代家の宴会に、運搬係の山内杉雄（フランキー堺）が何故か呼ばれた。神代家の当主で未亡人の里子（草笛光子）のわがままに、周りは振り回されてばかりだ。一方、山内の妻・なつ枝（浜木綿子）は貧しい家計のやりくりや、姑の嫁イビリに疲れ果てていた。◆製作：読売テレビ、東宝

零下４０度の北極圏内ラップランドを舞台に、厳しい自然環境と戦いながらトナカイとともに遊牧するラップ人の生活を、ある青年を中心に描く。（自然シリーズ）

美しいが厳しい自然と戦いながら暮らしてきた人々の間で歌い継がれてきたふるさとの歌、民謡を、その土地の風景とともに紹介する。◆１年を海で暮らす牟岐町の海士。八幡神社の秋祭りで歌われる舟唄を、漁の風景とともに送る。◆五月になると草を刈って田に入れる、その労働歌だったかしき刈り歌。◆由岐港、旧暦十月の亥の日の夜に子どもたちが歌ったいの子唄。◆子守り娘がいなくなったいまは消えかかっている志和岐の子守唄。◆巡礼の鈴の音が春を告げた鳴門の馬子唄ばやし。◆秘境といわれた祖谷は唄の宝庫。山で働く人たちの木挽唄と木負唄を紹介。