名古屋郊外のある私鉄の駅。一人の女性（池内淳子）が乗り込んだ列車の窓を、青年（高橋長英）がこぶしで叩き割った。驚いた乗客たちは、二人の関係をそれぞれ勝手に想像しはじめる。◆身持ちの悪いスナックの女にだまされた青年が怒りでガラスを割ったのだと思った者。女は遊び好きのデパートガールで、青年が勇気のあるところを示したかったんだと思った者。またある男性は、故郷の村はずれにいる飲み屋のおかみの身の上を思い出していた。

三重県志摩を舞台に、海女一家の日常生活を通じて、男女間、世代間、人生観の衝突を描く。

今もその姿を残すアウシュビッツ収容所を紹介しながら、そこでの凄惨な収容所生活を体験した人たちにインタビューし、平和の尊さと今も根深く残る戦争の悲劇を描く。◆夫と父親をドイツの親衛隊に銃殺された母親。収容所の苛酷な体験で子供が産めなくなった女性。その女性が「敵は一つでした。それはファシズムだった。」とつぶやく。

東北の風土や生活の中から生まれた民芸品を紹介するシリーズ。放送番組センター協賛番組。（１９７０年４月～７月放送）◆宮城県の白石鷹巣に住む遠藤忠雄さんは、紙すき農家の８代目。昔から伝わる白石和紙の手すき技法を守り続けている。丈夫で破れにくい白石和紙はかつて着物や武士の汗取り用下着、裃、わらじや火薬入れなど様々な用途で使われていた。江戸時代には一千戸の農家が紙すきを行っていた白石だが、明治に入ってからはパルプと機械に押され、この撮影時にはわずか３戸にまで減っていた。番組では、遠藤さんの和紙作り、原材料のこうぞの刈り取りから和紙ができるまでの過程を追うとともに、紙すきを廃業しても白石和紙を愛する地元の人々の思い溢れる光景を描く。

山形県尾花沢市は、花笠音頭に「雪をながむる尾花沢」と歌われている日本でも有数の豪雪地帯。そんな尾花沢市に、道路の雪を融かしながら走る秘密兵器がお目見えした。長さ１２メートル、幅３メートル、重さ２６トンという超大型の除雪機は“スノーメルター”と呼ばれている。除雪機を動かすのは、建設省（放送当時）尾花沢除雪センターの１４人の男たち。日本に４台しかないという“スノーメルター”を駆使し、雪と戦うたくましい男たちの姿を描く。◆放送番組センター協賛番組。「ニッポン列島探検　雪と日本人シリーズ」。（保存テープに起因する映像・音声ノイズと、聞きづらい部分があります。ご了承下さい。）

大名の権力のシンボルであった城と、そこで生活した歴史上の人物に、その土地の風土や環境を重ねて描く歴史ドキュメンタリー。（１９７０年７月１０日～１９７１年１月１日放送、全２６回）◆第２５回は、沖縄を訪ねる。沖縄に城（ぐすく）と呼ばれる遺跡は本島だけで百を超すといわれている。すべての城が城郭を意味するのではなく、信仰の場の遺跡も城と呼ばれる。沖縄は、太平洋戦争でアメリカ軍の砲火を浴び、首里城など多くの城や城址が破壊された。番組では、昭和１０年ごろに撮影された守礼門なども紹介する。【番組内に登場する地名、人名、役職名、引用資料等は制作当時のものです。現在とは異なっている場合があります】

世界各地を訪ね、衣食住、産業、文化など毎回ひとつのテーマを取り上げ、社会的風土や風俗を織り込みながら“本物”に迫る、海外取材ドキュメンタリー。放送番組センター協賛番組。（１９６９年１０月５日～１９７０年３月２９日放送、全２６回）◆今回は、自家用飛行機をはじめとする小型飛行機の魅力を紹介する。アメリカでは、レジャーやビジネスのために自ら操縦かんを握って飛ぶ自家用飛行機が流行している。免許を取るためには、フライトスクールで教官とともに実習飛行し、技能を習得する。既製の航空機に手が届かない人には、部品を組み立てて自分だけの飛行機を作るホームビルトという選択肢もある。その自作の機体を披露するイベント、フライインの様子などを取材した。

旧制広島高等学校の教授で、アララギ派の歌人でもあった中島光風（てるかぜ）さんは、爆心地近くの自宅で被爆、８月３１日に亡くなった。妻も行方不明。二人の遺児は光風氏の遺言により、中学生の男の子は親戚に、小学生の女の子は友人に引き取られた。彼と光風氏は五高・東大を通じての親友で、二人が交わした百数十通の手紙には、戦争という時代に生きた人間の姿がさまざま浮彫りにされている。