那覇市内の一角にある壷屋は、３００年の伝統を今に伝える琉球陶業の窯場である。この町で焼き物一筋に師匠もなく、ひたすら自分の力で道をきりひらいてきた金城次郎さんの製作過程を追いその心を探る。素朴で躍動感あふれる、魚や海老模様を配した壷や皿の製作を続ける金城さんの焼き物には、沖縄の長い苦難の歴史を耐えぬいてきた庶民の力強さ、神々を恐れ神の声を聞こうとする庶民のくらしと心が息づいている。

伝統の秋田銀線細工を、単なる細工物から美術工芸品にまで高めた名匠高坂雄水さん（明４３．６．４．〜昭４７．３．１０）。銀の細い線をよりあわせ指先だけで組み合わせる、織細で見事な手法を紹介する。高坂さんは、秋田の貧しい農家に生まれ、銀線細工商のもとで鍛金の職人としての修業を積みながら、銀線細工の技術を習得した。秋田銀線細工が全国的に認められるようになったのは、昭和３０年日展初入選作（宝石箱）によるところが大きい。

宮崎市のアマチュア劇団・劇団トロアの演出として演劇に打ち込むサラリーマン矢野一誠さん。矢野さんの率いる劇団は、数あるアマチュア劇団の中でも、高く評価されてきた。劇団結成５周年を機に、客演として東京の文学座から女優・吉野由志子さんを呼び、記念公演を計画。演出家である矢野さんを中心に、本番に向けて稽古や広報、助成金確保、チケット販売に奔走する。そして遂に文学座から吉野さんが到着し、より一層稽古に熱が入る中、ある日、矢野さんに宮崎市外への異動の辞令が下されてしまう。アマチュア劇団の演出家が公演開幕へ向けて苦悩奮闘する姿を追う。◆放送番組センター協賛番組。

大名の権力のシンボルであった城と、そこで生活した歴史上の人物に、その土地の風土や環境を重ねて描く歴史ドキュメンタリー。（１９７０年７月１０日～１９７１年１月１日放送、全２６回）◆第２５回は、沖縄を訪ねる。沖縄に城（ぐすく）と呼ばれる遺跡は本島だけで百を超すといわれている。すべての城が城郭を意味するのではなく、信仰の場の遺跡も城と呼ばれる。沖縄は、太平洋戦争でアメリカ軍の砲火を浴び、首里城など多くの城や城址が破壊された。番組では、昭和１０年ごろに撮影された守礼門なども紹介する。【番組内に登場する地名、人名、役職名、引用資料等は制作当時のものです。現在とは異なっている場合があります】

社会のなかで生きる日本人を描いたヒューマンドキュメンタリーシリーズ。（１９６４年１１月１日～１９７１年４月３日）◆三重県四日市市海上保安部の保安官・田尻さんは、工場から流出する排水で海が汚染されていくことに危機感を抱く。取り締まりに対する行政の消極的な姿勢に業を煮やし、みずから調査して汚染の告発にこぎつけていく。公害のない海の復活を願って戦い、関係機関に積極的に働きかける姿を追う。

東京葛飾の下町で江戸小紋の伝統技術を受け継いでいる小宮康孝さんを紹介する。小宮さんの父・康助氏は化学染料による江戸小紋を研究開発し、小紋染の近代化に尽くした人間国宝。その遺志を継ぐ康孝さんは、粋な江戸の気品と風格ある小紋を、新しい時代感覚の着物に育てあげようと精進をつづける。また先人の遺した貴重な小紋型をすぐれた技術によって再現し、現代の染織工芸界に大きく寄与している。

長崎被爆２５年目の年、長崎医科大学第１１医療隊の原子爆弾救護報告が発見された。隊長は後に「原子野の聖者」と仰がれた永井隆氏である。被爆直後から２カ月間にわたる原爆患者救護活動の生々しい体験の中でまとめられた報告書は、被爆原点からの貴重な証言であり、原爆放射能障害についての最初の学術報告書である。そして被爆２５年、７０年代の繁栄の中に生きる我々にさまざまな問いをつきつける。

第二次大戦末期、北大西洋上のドイツ潜水艦Ｕ・２３４上で自決した２人の旧日本海軍将校の数奇な運命を、遺族や国内およびヨーロッパ関係者の証言をもとに描き、戦争と平和、世代の断絶、人間と科学などの問題を問いかける異色のドキュメンタリー。