人間国宝・黒田辰秋さんは、木工芸家。京都の仕事場を訪ねて、作品が出来上がっていく様子を取材した。（当時７０歳、昭和５７年没）器から家具まで幅広い作品を生み出す黒田さんは、工芸材としては堅くて細工しづらいケヤキを好んで使っている。「木の性質をよく知った上で作業をすれば、思うように細工できる。木と仲間になれたら、手を握りあえたら理想的」と、日ごろの作業を振り返る。木目を生かしたざん新で力強い作風は、そこから生まれる。

人間国宝・平田郷陽さんは、この道５０年になる衣裳人形作家の第一人者。その仕事場を訪ねて、製作にいそしむ姿を紹介する。（当時７１歳、昭和５６年没）平田さんは１４歳で人形師の父について人形作りの手ほどきをうけ、２２歳で父を亡くしてからは独学で古来の技術を学び、独自の手法を創り出してきた。「腹を立てないように心がけている。気持ちを和やかにしていないと、作品もそうならない。人形には和やかな精神がなくては」と、静かに語る。

愛と美の女神・ヴィーナスは、他面「繁殖」のシンボルとして見られる。世界各地のヴィーナス像を、地母神信仰を見る。◆海の泡から生まれたエーゲ海の娘・『ミロのヴィーナス』、繁殖を象徴する女神としてリンゴを持ち花園を歩く、美と繁殖のヴィーナス。リンゴは東では稲に変わる。我々にはより具体的である。美女の代表ではなく、大地の生産力、女性の産む力の女神が地母神である。聖なる木の下の、樹下美人もまたヴィーナスである◆ミロのヴィーナス〔フランス〕、カプアのヴィーナス〔ギリシャ〕、バールベックのヴィーナス〔レバノン〕、マコンデ族のヴィーナス〔タンザニア〕、ヴィレンドルフのヴィーナス〔オーストリア〕

福井県一乗谷の朝倉氏遺跡に復元された、湯殿跡庭園、南陽寺跡庭園、諏訪館跡庭園を紹介し、室町末期につくられた庭の石組から往時の姿をしのぶ。居館跡から発掘された耳皿、腰をかけられる平らな石を交えた石組から、しばしば迎えた足利将軍家を曲水の宴でもてなしたことがわかる。戦国の世をよそに催された宴を、石組だけになった庭からうかがうと、栄枯の縮図を見る思いがする。日本庭園の演ずる視覚的ドラマ。◆放送番組センター協賛番組

資源問題を中心に、食糧、人口問題を取り上げ、それが明日の人類に及ぼす影響を考えるドキュメンタリー・シリーズ。（１９７５年１月５日～３月３０日放送、全１３回）◆第１０回は、人口６億を抱えるインドの農業と食糧問題について。インド農業は異常干ばつのため、大きな危機をむかえている。そして貧困と飢餓により、年間１００万人の子どもが栄養失調で死亡しているとされる。番組では、国の歴史や複雑な社会体制、農村の姿などを紹介しつつ、農業近代化と貧困解消を目指すインドの現状を伝える。

戦国動乱の時代を舞台に、稀代の智将といわれた真田幸村と個性豊かな十勇士の活躍を描く連続人形劇。ご存知・猿飛佐助物語を中心に、滅びゆく宿命を背負いながらも、自己に忠実に生きようとする若者たちの心意気を、波乱万丈の節立てで書きおろした。原作：柴田錬三郎。（１９７５年４月７日〜１９７７年３月２５日放送、全４４５回）

昭和半世紀の節目にちなみ、５０年間の記録フィルムと関係者の証言で時代を分析し、昭和を動かしたものは何かを考える。（１９７５年４月６日～１９７５年１２月２８日放送、全３９回）◆この回のテーマは、昭和２６年（１９５１）の対日講和条約。レポーターは麻生良方。

人間国宝・宮入行平さん。還暦を越えてなお力強く槌をふるう刀工を訪ねて、作品に注ぐ情熱を描いた。（当時６２歳、昭和５２年没）「仕事がスラスラ進むと、仕上がりもよい」。３代続いた鍛冶の家に生まれた宮入さんは、「鉄は生き物。鍛えている時の火加減が大事。炎の色を見極めて、炭の中から取り出さなくてはならない」と語る。彼は無心にふいごを動かし、鉄を鍛える。鍛えられた鉄は、次第に刀へと変身していく。