山野井昌子さんは生後間もなく脳性マヒにかかり、両手両足マヒのまま寝たきりの生活を続けている。１８歳の頃から短歌をはじめ、障害者としての心の内を、そして自らの生の証を３１文字に託してきた。六畳一間の借家に年老いた両親と３人暮らし。昌子さんの身の回りの世話は母が行っている。残された機能は首から上だけ、唇でページをめくりながら本を読む。

野崎信一（愛川欽也）は永年勤めた商社を辞め、小学生の娘と二人で京都へ向う。少年の頃から憧れていたアラカンの鞍馬天狗の映画を作るために。嵐寛寿郎を説得し、撮影が始まった。スタッフは彼ひとりである。妻にはこの夫の奇妙な行動が分からない。白馬でさっそうと駆けていた鞍馬天狗が落馬、骨折、入院。信一は自ら鞍馬天狗の扮装で撮影を続ける。

フクロウやミミズクの仲間は、わが国には１０数種類が生息している。北海道東部の厳寒の原野に住むシロフクロウ、コミミズク、エゾフクロウ、野ネズミを捕食するオオコノハズク。春の石狩平野の防風林に巣づくりし、ヒナを育てるトラフズク、エゾフクロウなど、昼と夜、活動するさまざまなフクロウの生態を紹介。

広島県は日本の縮図とも言われる。北の山地部は多雪地帯、中部から沿岸にかけては盆地、台地、平野がつづき、これを縫って流れる川が注ぐ所は、多くの島を抱く内海。こうした自然と風土の中に、中国自動車道、瀬戸内の大橋、鉄鋼団地、造船ドック、住宅団地などが近代的な装いを見せる。

稲田騒動とも呼ばれる庚午事変は明治維新時、徳島藩士と徳島藩からの分離を望んだ淡路州本城稲田氏家臣団との間で起きた殺傷事件。主犯の徳島藩士らは切腹・流罪に処せられ、稲田家は北海道開拓を命じられた。両者の子孫たちが残された怨念を知った上で、それを乗り越えてゆこうとする姿を描くドキュメンタリードラマ。四国放送開局２５周年記念番組。◆第２部。北海道静内町の大学生・猛は、徳島の新聞記者・平瀬に、自らのルーツでもある稲田騒動について話を聞かされた。親戚に話を聞こうとすると、いやなことだから思い出したくないと言われる。百年を経ても子孫の間に残る負の感情。悲劇の根本を知ることが重要だと平瀬は言う。

２人の漁師がサケ・マス漁の北洋船に乗りアラスカへと向かう。操業時の怪我でアラスカの病院に収容された２人はアラスカを放浪、彼らがアラスカで出会ったのは、日本の過剰な商業主義と漁師たちの自然、海への愛であった。

美土里君は大学の聴講生。生後間もなく筋無力症と診断され、１９年間その病苦と闘ってきた。彼の夢は、パリで美術館を見学、本場のオーケストラを聞くこと。父はその夢をかなえてやるために退職金を前借りして、親子３人でヨーロッパに旅立つ。ロンドンのコンサートホール。一日、一月、一年を大切に生きてきた家族の記録と想いが、オーケストラの音楽にのって再現されていく。

漆芸の人間国宝・赤地友哉さんを横浜の仕事場に訪ねて製作の様子を取材。作品に込める気持ちとみごとな技を紹介する。（当時７１歳、昭和５９年没）＜曲輪造＞は、ヒノキの輪を同心円状にすき間なく幾重にも重ね合わせ、器を形造っていく技法。形が整うと表面に漆を塗るが、赤地さんは磨きをかけず塗ったままの光沢を生かす＜塗立て塗＞を得意とする。漆塗りの大敵はチリやホコリ。塗り終えた面を丹念に調べ、刷毛でチリを取り払っていく赤地さんを、カメラは静かに追いかけていく。