この番組は、１９５３年（昭２８）１１月５日に徳島市で起きたラジオ商殺し事件で、夫殺しの汚名を負わされた内縁の妻・冨士茂子さんが、懲役１３年の刑を受け、出所したあと無実を主張して第５次の再審請求を進める運動の記録。番組は、事件を振り返り、裁判に関係した人たちの声をもう一度聞くことから始まる。当時の２人の住み込み店員の「目撃証言」が犯人宣告の決め手になったのだが、その一人がこの番組の中で「検察に強制されて偽証した」ことを認める。茂子さんは１９７９年（昭５４）１１月１５日病死するが、日本の刑事裁判史上初の「死後再審」が確定し、徳島地方裁判所のやりなおし裁判で１９８５年（昭６０）７月９日、無罪判決が出た。番組が放送されて７年後のことである。

アメリカ国防総省戦史室に東京大空襲に関する綿密にして膨大な作戦計画書類と空襲時に撮影した映像記録が保存されている。その記録によると、大空襲は残すものと焼きつくすべきものとを計算しつくして緻密に練り上げ実行されたものだったことがわかる。日本焦土作戦全体を貫くアメリカの戦争遂行の思惑を解きあかす。

英語で「ポンドスケーター」（ｐｏｎｄｓｋａｔｅｒ）と呼ばれるアメンボは、細く長い足で水面に浮き、水面を歩く。この番組は、水をはじく肢先と水の表面張力を利用したアメンボの歩行術をレーザー光線による観察によって解明したものである。洗剤などで水が汚れると表面張力がなくなるため、浮いていられない。アメンボは、水の汚れを知る一指標でもある。

旅の写真屋をしていた両親を急な病気で失った少女ペリーヌの、長い旅と誠実な働きが報われるまでを描く。原作：エクトル・マロ「アン・ファミーユ」。カルピスファミリー劇場（世界名作劇場）。（１９７８年１月１日〜１２月３１日放送、全５３回）◆旅の写真屋だった父エドモンを病気で亡くしたペリーヌ。インド生まれでヨーロッパには不慣れな母親マリを励まして、国際結婚に反対して父を勘当した祖父ビルフランを訪ねろという父の遺言に従って、フランス・マロクールへ向けて旅立つ。旅費づくりのために写真屋を続けようとするが、不慣れなペリーヌの口上では客が集まらない。

「童謡『赤い靴』に歌われている女の子は、会ったことのない父親違いの姉・きみです」という、新聞に掲載された実の妹の告白を発端として、童謡に歌われた女の子と母親の足跡を追う。◆「赤い靴」（作詞：野口雨情、作曲：本居長世）に歌われた女の子は、名前をきみといい、１９０２年（明治３５）、静岡県不二見村（現、清水市）で生まれた。父親の名前は明かせない私生児ということから母子に対する世間の風当たりは強く、母・かよは幼子を連れて北海道に渡った。かよは函館で平民社の流れをくむ鈴木志郎と出会って結婚し、留寿都村の平民社農場で開拓に携わることを決めたが、子連れの開拓は厳しく、やむなく、きみをアメリカ人宣教師夫妻の養女として託した。その後、宣教師夫妻は帰国することになり、きみも一緒に渡米したはずだったが…。◆ＨＴＢ開局１０周年記念番組

亀鶴山八幡神社の秋祭り第１日目、毎年１０月１０日には、伝統行事、神儀（神祇とも表す）が行われる。「シンギ」とは総勢百数十人からなる行列を言い、油木町を甲乙２区に分け、毎年交代して神社へ奉納する行事である。◆各区に８組あり、世話役、師匠役、神儀打ち等２０人から成る体制を１神儀組と呼び、８組全体では１５０～１６０人に及ぶ大行列となる。行列は大頭取や師匠役、獅子舞、猿田彦などを先頭に、神儀打ち３２人が大太鼓を、鉦２０数人は大鉦を打ち、「馬場掛り」「宮巡り」「曲舞」などの曲を奏しつつ、本殿と御旅所とを往復する。頭に尾長鶏の羽飾りを被り、布製鎧に鉢巻き姿、黒脚絆、草履履きで、大きく舞い踊り、鉦太鼓を韻々と轟かせながら打ち奏でる様は、勇壮華麗である。江戸時代中期から続くというこの神儀は、町を挙げての祭りであり、先祖代々引き継がれてきた大事な行事であって、他郷に出ていた人も帰省して祭りに加わる。昭和３５年、広島県の無形民俗文化財に指定された。

南国沖縄の自然を舞台に舞うオオゴマダラ。オオゴマダラは羽を広げると２０センチ以上にもなる日本で一番大きなチョウである。色あざやかな幼虫から、黄金のさなぎへ、そして秘密の色を秘めた白と黒の羽。この日本最大のチョウ、オオゴマダラの一生には、自らを護る巧みな自然の知恵がかくされていることを解く。

広島管絃祭と呼ばれる住吉神社の夏祭は、旧暦大潮の６月１４、１５日に行われる。「住吉さん」は、「とうかさん」「えべっさん」と並ぶ広島市の三大祭りであり、広島を代表する夏祭りである。◆その目玉となる行事は、初日に漕伝馬（こぎでんま）に引かれ川に漕ぎ出す御座船の巡幸。御神体を遷した御座船は元安川の明治橋傍を出発し、約１キロ上流の空鞘神社まで漕ぎ上がる。そして水上で「お里帰り」神事の後、Ｕターンして本川を下り、住吉神社へ還御される。空鞘神社前まで逆上るのは、昔住吉神社が空鞘神社の摂社であった関係からきている。この御座船を引くことを「漕伝馬」と言い、元気な氏子若衆の漕ぎ手１４人、それに水先案内、音頭取り、太鼓打ち、笛吹き、采振りなどが乗り込む。采振りは１６歳の男子が勤め、舳大樽上に立ち、五色の御幣を振って調子を取る。１４丁の櫂で漕ぐ漕伝馬は舟足が早く、浅野藩のお墨付きで海上取締りを受け持ったと言われ、高く揚げた御用提灯が藩お抱えの水主衆の伝統と心意気を物語る。