減反政策以後、ポスト「米」をめざして、国・県・農協が一丸となって推し進めてきた畜産振興政策のもとで、多額の負債を抱え、多数の農家が苦しんでいる実態を、岩手県農協中央会の負債対策室を軸に綴った報告。◆金融の自由化の中で農協が金融機関として生き残るためには、固定化負債の解消が至上命令。農協は農家から貸付金を回収するため、各農家の家計管理を徹底して行い、回収できないと判断したときは農地の切売りや、さらには離農をも推し進めている。岩手県内でこうした負債が原因で破産し、離農した農家は、１〜２年で千戸にのぼるという。

ユージン・スミスが撮影した写真「ＴｏｍｏｋｏａｎｄＭｏｔｈｅｒ」について、アイリーン夫人と石牟礼道子さんが対話を重ねていく。◆スミス夫妻が地元・水俣の人々との間に築いた信頼とは何か。そして“被写体”の痛みを共有するためにどのような苦悩があったのか。被写体となった胎児性水俣病患者のひとりに「普通の人、とても話しやすい人」と言わしめた彼の人柄をしのび、ジャーナリストのあり方をさぐる。

作家の村松友視さんが尾形光琳（１６５８〜１７１６）筆の紅白梅図を鑑賞、その美を探る◆尾形光琳は江戸時代元禄期の代表的画家、工芸家である。呉服物商・雁金屋の次男として京都に生まれた。富裕な町人の子としてぜいたくな生活のうちに育ち、一時は奔放な生活を送ったが、俵屋宗達に付いてその装飾的画風を受け継いで以後、非凡な才能によって画家光琳として名声を博するに至った。◆「紅白梅図」のような草花図屏風は光琳の最も得意としたもので、自然の一断片をとらえてこれを大胆かつ装飾的に表現しているところに特色がある。

半世紀ぶりに発見された詩人・金子みすゞの作品と、その人生を通して、現代人が失いつつある「やさしさ」をもう一度考えるドキュメンタリー。◆金子みすずは、１９０３年（明３６）山口県長門市に生まれ、２０歳から雑誌「童話」を中心に童謡を発表。その作品は西条八十に高く評価され、「若い童謡詩人中の巨星」とよばれた。しかし不幸な結婚にやぶれ２６歳で自殺。それから半世紀、彼女の童謡のすべてを記した３冊の手帳が弟の手もとにあることがわかり、みすゞの詩は一気によみがえった。彼女の短い生涯を、みすゞを発掘した童謡詩人・矢崎節夫、１人娘のふさえ、弟の雅輔の各氏の証言を柱に再構成する。

落語家・桂米朝が昔の大阪を歩いて、上方町人の暮らしぶりを紹介してゆく番組。◆第１回は「船場」について語る。船場とはどこを言うのか、船場の商人の暮らしぶりを探り、現在の大阪と比べる。

ロシア人が母なる川と呼んだボルガ川を、源流から河口に至るまで５３日間の取材を通して紹介する。◆ボルガの源は、モスクワの北西２８０キロにある海抜３００メートルのバルダイ丘陵。白樺やモミに囲まれた湿原にわき出した水が深い森をめぐり、いくつかの支流を集めてやがて大河となって世界最大の湖・カスピ海にそそぐ。古来重要な交通路としての役割を担ってきたボルガは幾度も戦場となった。その沿岸の豊かな自然と苛酷な歴史、そして様々な民族の営みに出あう旅である。

古代より“宝石の島”として知られるスリランカを作家の開高健氏が訪ね、宝石はなぜ人を魅了するのか、その根源を探る。◆スリランカとは“輝く島”の意味。島のいたるところか様々な宝石の原石が掘り出される。サファイア、クリソベリル、スピネルといった原石に入念な研磨とカットが施され、色も輝きもさまざまな宝石となる。◆住民のほとんどはインド大陸から移住してきた人々。首都コロンボの市場の雑踏と水上寺院、古代仏教の都市アヌラダプーラにあるスリランカでもっとも美しい塔といわれるルヴァンベリセアなど、この島のたどった歴史と栄華のあとを訪ねる。

若山牧水の生誕１００年を記念して、牧水の半生を描く。リポーターが牧水の知人や旅した所を訪ね、牧水の人となり、作品などを広く紹介する。◆１８８５年（明１８）、宮崎県に生まれた若山牧水は、歌集「別離」（明４３）で自然主義的傾向の新しい歌人として注目された。この年より詩歌雑誌「創作」を編集、酒と旅を愛した歌人として親しまれ、その歌は今も広く愛誦されている。