日本の高度経済成長を支えた陰の主役の一つは、全国に８７万軒以上あるといわれる中小の下請け製造業者である。いま、それらの町工場に何が起こっているのか。３５年間旋盤工として働くかたわら作家活動を続ける小関智弘さんが東京都内にある町工場を訪ね、そこに生きる人々の意見と生活を３日間にわたってリポートする。（１９８７年５月１４日終了、全３回）◆第１回目は、工場の中でも特に、機械加工、メッキ、溶接のそれぞれを行う工場の人々に話をきく。

１６歳で刀剣研磨の世界に入り、以来６０年、研ぎ一筋に生きた小野光敬。幼いころに見た一振りの日本刀が彼の運命を決めた。鉄は宝石より美しいと、その凛として崇高な輝きに魅せられた。◆正倉院宝物の１７０振りの刀剣を、２５年の歳月をかけてよみがえらせたのは顕著な功績。「研ぎと鑑識は研師の両輪」という、下地研ぎから地艶砥、金肌拭いまでの研磨技術の奥義を見る。

自らの人生のスタート点となり、思考の原点となった郷里と母校。各界の第一線で活躍する人々がその母校の教壇に立ち、後輩たちに自らの培ってきた“知識”を伝えようとするとき、そこにはどんな授業が展開されるのであろうか。その姿を追いながら、知ることの楽しさ、学ぶことのすばらしさを伝える。全３回。◆第２回は、瀬戸内の人口４千人ほどの広島県生口島で生まれ育った日本画家・平山郁夫さん。小学校時代に絵心にめざめた平山さんが描いた、当時の瀬戸内の島々の絵はいまも手元に残してあるという。こうした絵を使いながら、広島県豊田郡瀬戸田町立瀬戸田小学校の子どもたちに図画の授業を行う。

ふるさとのことばに大きな誇りと強いこだわりをもつ多彩なゲストによって「方言」の復権を目指す公開スタジオショー。◆盛岡弁で宮沢賢治の詩を朗読する女優・長岡輝子さん。「チャグチャグ馬っこ」や「雨ニモマケズ」の祈るような響きと美しさ。津軽の言葉に対する愛着と自信にあふれる伊奈かっぺいさんの話芸には、共通語に対する鋭い批判もある。文字では書き表わせない方言の豊かな世界を紹介する。◆地域スペシャル　東北アワー特集

確たる物的証拠もなく、一貫して否認を通しているにもかかわらず、山中事件の犯人として１・２審で死刑判決を受け、最高裁へ上告中の霜上則男被告の無実の訴えを検証する。◆１９７２年７月、石川県山中町の林道でタクシー運転手が他殺死体で発見され、ある青年の自供から霜上被告が主犯として逮捕された。事件から１５年を経て行われた現地調査や支援の人たちによる救援運動、鑑定書の検証、両親の心情などを通して“凶器なき殺人事件”といわれる山中事件の捜査と裁判の問題点を探る。（その後、１９８９年６月の上告審で死刑判決は破棄され、審理やり直しが命じられた。１９９０年差し戻し審で無罪確定。）

日本に近代西洋医学をもたらしたオランダ人医師とその弟子たちの情熱的な取り組みを描くドキュメンタリー。◆１８５７年（安政４年）１１月１２日、長崎奉行所西役所の一室で講義が行われた。長崎大学医学部の誕生ともいえるこの講義の講師は、遥かなオランダから長崎を訪れた２８歳の青年医師、ポンペ・Ｆ・メーデルフォルト。弟子たちは諸国から集まった俊才、松本良順ら１２名であった。

円高をきっかけに大きな転換点に立たされた日本経済。暮らしは、企業は、そして国はどうなるのか。経済の問題を私たちの暮らしとの関係でメスを入れ、わかりやすい解析を試みたシリーズ。（１９８７年７月２１日開始、全３回）◆第三夜は、日本の住宅・土地事情について考える。個人住宅より産業の振興に力を注いだ戦後政策のため、一軒家は一生の夢となった。働き過ぎと批判され続けている日本だが、労働に対する意識は世代ごとに変化しつつある。これからの日本のあるべき姿を探る。

現在、教育界はさまざまな問題を抱えている。学校の１００年をふり返り、学校とは何かを探る３夜連続のシリーズ。（１９８７年１２月１５日〜１７日、全３回）◆学校において子供ともっとも身近であり、人間的成長に影響を与えるのは何といっても教師である。第２回は、長野県の保科百助、赤羽五郎、岩手県の吉田六太郎の３教師の事績を通して教師像のあり方を探る。実物教育を実践し、工業立県を唱えた保科、白樺派の影響を受け、教師自身を子どもに近づけることを主唱した赤羽。吉田はいまも存命し、子どもたちを戦地へ送ったことに悩みつづけている。