戦乱なき江戸時代、人々が様々な形でつくりあげた生活文化は現代人の生き方にいろいろな示唆を与えてくれる。「花火」「朝顔」「大小絵巻」の３つの具体例をあげ江戸時代の持つ現代性について解説する。◆大空をカンバスに奔放に描き出される光の芸術・花火の一瞬の美しさ。その瞬間性はヨーロッパ芸術文化とは趣を異にする。また瞬間性の一方の雄は朝顔文化。早朝のひとときだけ花開く朝顔に江戸の趣味人は情熱を傾け、数多くの変種を創り出した。その過程で既にメンデルの法則さえ発見されていたという。講師は東京教育大学名誉教授で江戸町人研究会を主宰する西山松之助氏。

親の反対を押し切って高知を脱出、京都で浪人生活をおくる受験生の恋と友情の青春をさわやかに描く。◆大学受験に失敗した勉はペンフレンドのみゆきのいる京都で浪人生活をおくることにした。期待に胸ふくらませ京都での下宿生活が始まったものの第１日目からがっかり。お目当てのみゆきは以前送ってきた写真とは似ても似つかぬ別人だった。みゆきは友人の香織の写真を自分だと偽って送ってきていたのだ。

太宰府は外交だけでなく、外国に対し日本を防衛する重要任務を担っていた。そのために築かれた水城と大野城跡を訪ね、先人の知恵と技術の高さを学ぶ。◆６６３年、日本は百済を助けるため兵を送り、白村江で唐と新羅の連合軍と戦って大敗。翌年、彼らの来襲に備えて築いたのが水城である。水城は筑紫平野を区切る形で、すべて人の手で築かれた全長１．２キロメートルにわたる防塁（砦）と堀である。また太宰府政庁の裏にそびえる四王寺山には、自然の地形を利用し大野城が築城された。この城は尾根づたいに全長６．５キロメートルの土塁で囲まれ、中には７０棟以上の建物が置かれ、その多くには籠城用の食料が蓄えられていた。

監督業にも取り組んだ落ち目のポルノ女優が、思わぬ事件に巻き込まれるサスペンス。◆「ポルノ女優監督シリーズ」の企画でなんとか食いつないでいる小夜子（南條玲子）。マネージャーに呆れられながら、俳優にボディーペイントを施して得意になっていた。その撮影の様子を見ていた野添は、最近急成長した企業の社長だった。

古代から中世にかけて大陸・半島との交流の玄関口であった福井県若狭。この地方の仏教文化を代表する明通寺を、文芸評論家の川村湊さんが訪れ、交通の要所・若狭の民俗と信仰のかかわりを考える。◆明通寺の本堂と三重塔は、いずれも鎌倉時代の建立で、京都古代からの流れをくむ純和様の外観をもつ。しかし細かい装飾や本堂の内部は、時代の流行を取り入れた構成になっている。本尊は薬師如来であるが、従えているのは菩薩ではなく降三世明王と深沙大将という他に例のない組み合わせとなっている。「なぜこんな組み合わせになっているのか、ということに当時の信仰のあり方を解く鍵がある」と川村さんは語る。

障害者夫婦の５年間をつづるドキュメント。◆小児マヒで足が不自由な東俊祐さんは苦節１０年にして司法試験に合格、１９８９年４月、弁護士を開業した。またそれに先立ち３月には、同じく小児マヒで両足が動かない妻・優子さんが待望の長女を無事出産した。春、二重の喜びに包まれている二人を紹介する。

聖徳太子によって建立された法隆寺に、１３００年間守り伝えられてきた玉虫厨子を、美術史家の濱田隆さんが訪れる。◆長年仏教美術の研究にたずさわってきた濱田さんの出発点は法隆寺だという。新発見が尽きない法隆寺の芸術品の中でも、玉虫厨子は白鳳時代の建築・絵画・工芸の高い水準を今に伝える、日本美術の基点としてかけがえのない作品である。厨子の下部に描かれた仏教説話の「捨身飼虎図」。飢えた虎に自らの体を投げ与えるというこの図は、和を尊んだ太子の遺言を守り、蘇我氏に攻められても争わずに死を選んだという聖徳太子の一族の姿を思い起こさせる。

神秘と謎に満ちた小宇宙ともいえる人体の仕組みについて、現代の科学がとらえた最先端を解説する。（１９８９年９月１９日〜９月２１日放送、全３回）◆第３回のテーマは、免疫のメカニズムと遺伝子。さまざまな細胞やウイルスなど、体内に侵入してくる外敵を迎え撃つのが免疫細胞。その中心となるのが胸腺で生まれるＴ細胞という白血球の仲間。自己と自己以外（＝敵）とを識別するアンテナを持ち、遺伝子の組みかえで兆をも上回る京の単位で生命を守る。このＴ細胞を中心に、ガン、エイズ、老化現象のメカニズムにも迫る。