平家物語から題材をとった世阿弥の作で、死に直面した武士の哀感を叙情的に描いた作品。◆妻の枕元に清経の亡霊が現れ、平家の悲運と神に見放されて自ら海に身を投げて果てた模様を語る。武道一辺倒でなかったナイーブな青年の心境は、人生経験の積み重ねで分かるもので、人間のふくらみが演技にも表れてくると友枝昭世は語る。◆副音声は英語

ヨーロッパを席巻した偉大なカール五世の後を継いだスペイン国王フェリーペ二世は、父へのコンプレックスから抜け切れず終生謎に満ちた生涯を送る。◆彼は官能美のティツィアーノ（１４７７〜１５７６）と怪奇幻想のボス（１４５０〜１５１６）という、対照的な２人の画家の絵を収集した。孤独で厳粛、一方ではひそかに官能の画に浸るという国王の二面性と、２人の画家の独特な芸術世界を見る。◆ヴィーナスとオルガン奏者、アダムとイブ、カール五世騎馬像、王妃イザベル像（ティツィアーノ作）、快楽の園、七つの大罪、三賢王の礼拝（ボス作）

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、作家の猪瀬直樹とピアニストの中村紘子。

２年前から日韓の学者が共同で両国の歴史教科書を見直し、改善しようとする試みを続けている。両国の歴史観の違いと相互理解の努力を、学者たちの論争を通してうきぼりにする。◆日本による韓国への侵略行為に対し、日韓両国では歴史認識に大きな隔たりがある。それが顕著なのが双方の歴史教科書の内容である。韓国では、植民地時代を「日帝３６年」と表現し、日本を糾弾する教育が行われている。一方、日本では「侵略」という言葉の使用が問題になるなど、両国の認識の差は広がったまま。過去３回開かれた研究会のもようを紹介し、歴史の溝が埋まるのかを検証していく。

新年の３日間、伝統芸能の中からめでたい演目を選んで紹介し、あわせて出演者の芸談を聞く。第１日は井上八千代さんによる京舞「菊」および中村富十郎さんほかによる舞踊劇「春日龍神」。◆「菊」は能の「猩々」から、菊酒に酔った猩々（酒好きな妖精）の舞「乱れ」をとりいれた舞。◆「春日龍神」は、唐へ渡って仏跡を巡ろうと思った明慧上人が春日の神にいとまごいに出かけるが、猿沢の龍神にいさめられて思い直す、というもの。龍神は上人をつけ狙っていた荒法師を追い払い、三笠の山に天竺を映しだして見せる。

日中国交正常化２０周年を記念し、ＮＨＫ、中国中央電視台、香港電視廣播有限公司の３者で共同制作したドラマ。１９３０年前後の日中を舞台に、真の愛と正義と平和を求めてやまない人々の不屈の生命力とヒューマニズムをうたいあげる。（全２回）◆第二部「遥かなる黄河」。上海事変が起きた。荒れる街で通信社記者の溝江遼（沢田研二）は、死んだと聞かされていた趙慧華（周海媚）に出会う。かつて結婚まで考えた慧華との再会に溝江は絶句するが、慧華は「昔の私は死んだともいえる」と叫んで砲撃の中を走り去る。

アメリカ、イギリス、イタリア、ポルトガル、ドイツ、スペイン、日本の７か国８放送局が、コロンブスの大航海５００周年を記念して共同制作した大型番組。（１９９２年５月４日〜６月１６日放送、全６回）◆コロンブスのアメリカ到達によって、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸が初めて出会い、その時から世界は大きく変化していった。スペイン人がアメリカ大陸に持ち込んだ牛や馬、サトウキビや黒人奴隷は先住民の暮らしや大陸の生態系を大きく変えた。一方アンデスの高地からヨーロッパに伝えられたジャガイモは人々の飢餓を救い、ヨーロッパの人口増につながったといわれる。また現在のアフリカ人の主食・トウモロコシやキャッサバは奴隷船往復の際にアメリカからもたらされた。

斎王とは、天皇に代わって伊勢神宮の神につかえる未婚の皇女のこと。７０人あまりを数える中から、３人の物語を紹介する。遷宮特別企画。総合司会は森本毅郎。◆第三回「斎王と神宮」。大来皇女は、弟の大津皇子が政権争いに敗れたことから斎王を解かれる。井上内親王は、退任後に皇后となるが、やはり政権争いで皇子とともに幽閉され、非業の死をとげて怨霊になった。また、恬子内親王は在原業平とのロマンスをうたわれる。◆番組では皇女が斎王に選ばれるところから、伊勢神宮への赴任、神祭りから退任までを、詳しく解説していく。