植物状態になった妻とともに特別養護老人ホームに収容された老人と、過労のためホームを辞めて在宅訪問看護の仕事に移った女性の姿を通して、老人問題を人間にとっての“家”という視点から描く。◆脳卒中で倒れた妻の介護を続け、共倒れになりかけてホームに入った男性は、植物状態の妻に１日３度声をかけるのを日課にしている。底抜けに明るく妻思いの彼は喜びを「朝が来たごとある」と表現した。取材中、彼は８８歳で、妻は８９歳で亡くなる。二人の住まいを死後に訪れると、そこは野原になっていた。

ユダヤ難民のため、命令に背いて手書きのビザを発行し続けた杉原千畝氏。妻・幸子さんの手記「六千人の命のビザ」をもとにしたドキュメンタリードラマ。◆第２次世界大戦が勃発。リトアニアの領事代理に任命された杉原千畝（加藤剛）は、妻子を伴って赴任した。領事館にはナチスに追われたユダヤ難民がポーランドから押し寄せ、ビザ発行を嘆願した。アメリカへ逃げるには、ソ連から日本を通らなければならないのだ。杉原は本国の許可が得られぬまま、背任覚悟で独断によるビザ発行を始める。

海と川という大自然に向き合い、その恵みを食してきた人間。その英知のすばらしさと豊かさを世界各地の漁労民に探る。「人間は何を食べてきたか」シリーズ。（１９９２年１月１９日〜２８日放送、全４回）◆第３集「サンゴ礁の海人・ムトゥ」。赤道直下のパプアニューギニア・マンドック島の漁法を紹介する。直径わずか２５０メートルのサンゴ礁の島には小さな森とココナツの木があるだけで耕す土地はない。豊かな漁場である複雑なサンゴ礁の海こそが生活の場。海を自在に泳ぎ回る男たちは自らをムトゥ（海の人）と呼ぶ。獲物は大小１４０種、それぞれの魚の習性や動きにあわせた伝統漁法は３０種に及ぶ。

アジア各地を網の目のように結ぶ「海道」をたどりながら、歴史的、文化的な視点からアジアの現代を探るシリーズで、フィリピン、台湾、韓国、香港、タイの５か国を訪ねる。（１９９３年３月９日終了、全１１回）◆第２回はマゼランの世界一周旅行によって西欧に初めて知られたフィリピン・マクタン島。戦いで侵略者マゼランを殺した島の英雄・ラプラプ王の子孫たちは海辺で静かな暮らしを営んでいる。マゼランが下り立った浜辺を舞台に、西洋文明と出会った島の変貌ぶりを紹介する。

日露戦争の側面でひそかに、しかし大規模に遂行された陸軍武官によるスパイ活動を描くドキュメンタリードラマ。ＲＫＢ毎日放送とフィンランド国営放送の共同制作。◆１９０４年（明治３７）、日露戦争が勃発。北の大国ロシアと極東の小国との戦いの帰結は明らかなものに思われた。その際、ロシア帝国の内部崩壊を画策して革命派に資金を渡し、革命を扇動した日本の武官がいた。ヨーロッパ駐在陸軍武官・明石元二郎大佐は、フィンランドの革命家コンニ・シリアクスと組んでペテルブルグ武装蜂起計画を軸とする「明石工作」を進めた。当時の１００万円、現在の国家予算に換算して１２００億円の巨費を個人的に託された明石の人物、シリアクスとの友情、そして情報戦の怖さを描く。

名勝地「日光」は、古く８世紀後半、勝道上人が四本龍寺を建てたことによりその歴史が始まる。下って、江戸を京の都をしのぐ大都市にしようとした家康の命を受け、天海僧上は江戸のみならず関東全域を大江戸文化圏にすべく構想を立てた。そして江戸に近い日光の地を大観光地に仕上げた。東照宮をはじめ、徳川の財力を傾けて築き上げた華麗な社殿の数々。中でも大猷院（家光廟）は精ちと極彩の江戸装飾美の極地で、改めて驚異の目を見張る。◆【国宝】輪王寺大猷院霊廟◆【重要文化財】輪王寺本堂（三仏堂）、常行堂、法華堂、日光三所権現像〔輪王寺〕、三仏坐像、東照宮本地堂（薬師堂）

各界の著名人の“交遊録”を軸に、出会い、別れ、愛憎など、人と人との深い結びつきを描きだす。（１９９２年４月３日～９３年３月２６日）◆今回は、俳優の梅沢富美男と女優の岡まゆみ。

１９９０年に宇宙ステーション・ミールでの宇宙特派員を務めた秋山豊寛の発案による、史上初の熱気球でのベーリング海峡横断飛行の模様を伝える。◆日・露・米３国の人間が乗り組んで飛ぶ日本最大の熱気球「ＥＡＲＴＨ，ＷＥ　ＬＯＶＥ号」。機材が凍り付いて動かなくなったり、国境警備隊の射撃演習のために日程が決まらなかったり、風の具合がままならずフライトできなかったりとさまざまなトラブルを乗り越えて、気球は国境を越えて行く。