長崎県五島列島に、人里離れて住む老夫婦の自然に溶けこんだような淡々とした毎日を追い、現代では忘れられてしまった心のふるさとを描く。◆五島列島の福江島に住む小畑さん夫婦の家には、電気も電話もひかれていない。古い漁船のエンジンをまわして電球をともし、水はせせらぎから引く。シケの日には漁を休んで家の中で凪ぐのを待つ。自然に逆らわずに生活する老夫婦のもとへ、正月には子供たちの家族が集まり賑わう。皆が帰ったあとは、また静かな日々が過ぎる。

島根県の中海と宍道湖の二つの汽水湖を干拓し淡水化を図って、そこから農業用水を引く事業が国により巨費を投じて進められてきた。しかし今、水門の開閉を前に反対の声がうずまいている。汚染に悩まされる茨城県霞ヶ浦の現状を伝えながら淡水化問題を考える。◆この事業は米の増産政策の一環として始められ、工事は７６パーセントが終了している。霞ヶ浦ではアオコの大発生により一面緑色となり、魚介類は死滅して悪臭を放ち一帯の生態系は著しく変化した。米も減反政策がとられ工事の必要性も減少した環境の中で、地元民たちは霞ヶ浦の二の舞は演じたくないと中止を訴える。

作曲家・中山晋平の生誕１００年の年に、晋平ゆかりの人々による回顧録と視聴者から募った「私と晋平」の便りをもとにした歌とでつづる記念番組。◆１８８７年（明治２０）長野県日野村（現中野市）に生まれた中山晋平は、１９１４年（大正３）の“カチューシャの唄”の大ヒットで作曲の道を歩みはじめ、１９５２年（昭和２７）に亡くなるまで流行歌、童謡、新民謡など幅広い分野で数多くの名作を残した。東京音楽学校を出ながらも、大衆を離れた芸術はあり得ないという信念をもち世人に口ずさまれる歌いやすい曲を作り続けていた。

昭和６年３月、東京浅草。早乙女翠（若村麻由美）は東京女子高を卒業したが、就職口が見つからない。日本は不況のどん底で「大学はでたけれど」が流行語になるほどの就職難なのだ。一つだけ教師の口を紹介されたが、大阪にある男だけの中学校とあっては両親が許してくれるわけはない。ところが、その中学校の校長が翠の家へやって来て、翠の父・辰吉に直談判を始める。多くの障害を乗りこえて理想の教育を追いもとめる、元気いっぱいの女性教師を描く。作：高橋正圀。ＮＨＫ連続テレビ小説第３９作。（１９８７年１０月５日〜１９８８年４月２日放送、全１５０回）

いぶし銀ののどに年齢はない。親子三代で舞台を共演する清元志津太夫の人となりを見る。◆歌舞伎の出語り（舞台へ出て役者の所作や心情を語る）では役者との心の間合いが大切である。こんな縁で、清元志津太夫が舞台を退こうとした時にそれを止めたのは猿翁であった。芸は力であると同時に心でもあるという逸話である。

１９５５年（明治２８）、ヨーロッパの伯爵家に嫁いだ女性・青山光子の数奇な生涯を描き、現代の視点から“国際人”と“世界の中の日本”のもつ問題を考えるドキュメンタリーシリーズ。リポーターの吉永小百合が１５年前に光子役を演じたドラマの映像と、新たに撮影した映像とを交錯させながら構成する。（１９８７年５月４日〜６月１日放送、全５回）◆吹き荒れるファシズムの嵐、引き続いて起こった第２次世界大戦は、光子の一家を散りぢりにしていく。子供たちは悲劇に巻き込まれ、光子は出家するように髪を切って山荘にこもっていた。日米開戦を間近に控えた１９４１年８月、夫の横に埋葬してくださいとの遺書を残してひっそりと生涯を閉じる。

終戦直後、祖国と関東軍とに満州開拓国（現在の中国東北部）に置き去りにされた婦人たちの中国での生活、日本への帰国の様子を追い、いまも深く残る戦争の傷跡を浮彫りにする。◆祖国を遠く離れて、いまも中国黒竜江省に生きる残留婦人は４０００人余り。孤児に比べてあまり知られていないが、彼女たちは既に７０歳前後になった。昭和６１年１２月、７人の残留婦人が念願叶って日本の土を踏んだ。戦争を知らない世代が大半を占めるようになった日本へのはるかな旅は、あらためて４３年あまりの歳月を感じさせるものとなった。

世界有数の長大橋を含む、本四架橋の建設計画が進みつつある。日本の長大橋の時代を迎え、世界の長大橋に秘められた歴史やドラマを通して橋の時代を考える。◆本州−四国間は三つのルート、１０数本の世界最大クラスの橋によって結ばれることになる。なかでも明石大橋は、完成するとイギリスのハンバー橋を抜いて世界一となる。