黄檗宗大本山・萬福寺は京都の南、宇治川沿いの山ろくに寺領を広げる中国建築の粋を集めた中国禅の禅寺。江戸前期に来日した明の名僧・隠元禅師（１５９２〜１６７３）によって開創された。全国に５００の末寺がある。寺の修行の１日を追い、中国風の音楽のような読経や、独特の音を拾う。異風な寺の雰囲気と黄檗山の大伽藍の構成から、晩年６３歳から８２歳まで日本の黄檗宗の普及に捧げた隠元禅師の真理追究の姿を追う。◆【重要文化財】萬福寺の大雄宝殿、法堂、天王殿、斎堂、禅堂、伽藍堂、鐘楼、三門、開山堂、鉄眼版一切経版木〔宝蔵院〕◆【その他】隠元禅師像（范道生作）〔萬福寺〕

新春の３日間、人間国宝をはじめとする邦楽界の第一人者による演奏や舞踊を紹介するシリーズ。第３日は、荻江節と義太夫の演奏及び清元の舞踊を紹介する。◆「今様須磨写絵」は、上下二段からなる清元の大作舞踊劇である。須磨へ流されていた在原行平が許されて都へ帰ることになる。行平は松風・村雨の姉妹に帽子・狩衣と和歌一首を残して立ち去る…。歌舞伎舞踊の多様な技巧とともに、行平と荒っぽい此兵衛の二役を一人で演じ分けるのを特色としている。ほかに荻江節「水仙丹前」、義太夫「廓文章」。

アジアの人々が“何をどのように食べてきたか”を各地の食生活と風土の中に探り、食べものがいかに民族の精神を形づくり、文明に影響してきたかを紹介するシリーズ。（１９９０年１月５日〜１０日放送、全５回）◆第５集「醤油（しょうゆ）」。日本人の味覚・しょうゆのルーツをアジアの風土の中に探る。アジアを代表する調味料“しょうゆ”。これと同じ美味成分を持ち、しょうゆより古い調味料が東南アジアに存在する。魚で作るしょうゆ・魚醤である。これはタイ東北部ノンカイ地方がルーツとされる。ここの大地は岩塩を含むため米の育ちが悪く、乾期である冬はメコン河が干上がって魚が捕れない。そこで魚を塩漬けして保存し、貴重な食料とする知恵が魚醤を生んだ。東アジアの人々はその後、大豆を使って穀醤を生む。

大都会・東京の中で、息づき、走り、考え、泣き、笑い、生きてゆく個人としての「あなた」に焦点をあて、毎日のように展開されるドラマをレポートする。◆築地の魚河岸へ急ぐ人達、渋谷の交差点を通る人達、終電車を乗り換えるサラリーマンなど東京の街を“走る”人の１日を追跡。渋谷の理髪店の開店を待つ男性。オフィス街ランチタイムの行列、小田急線のあかずの踏切、深夜のタクシー乗り場で“並ぶ”人達など東京で暮らす人々のさまざまな顔をウオッチングする。

日本経済新聞紙上で１９５７年３月に始まった「私の履歴書」テレビ版の新シリーズ。一時代を築いた人物が出演し、自らについて語る。（１９８８年１０月５日〜１９９１年３月２６日放送、全１２７回）◆中村乃武夫：服飾デザイナー。１９２４年東京生まれ。１９６０年日本人デザイナーとして初めてパリでショーを開催した。１９６２年には日本ユニフォームセンターの設立に参加。

北緯６６度３３分の緯線、またはそれ以北を「北極圏」と呼ぶ。アジア・アメリカ・ヨーロッパを最短距離で結べる交通ルートとして、また資源の宝庫として注目されるこの地域を取材、北極圏の姿を伝える。（１９８９年４月３０日・１９９０年３月２５日、全１２回）◆第１０回は、海底に眠る資源を得るために続けられている試みを追う。北極海の海底には膨大な量の原油や天然ガスが埋蔵されている。氷上から海底下４５００メートルのボーリング探査を続けるカナダや、権利保護のため採算度外視で掘削を続けるソ連、新油田を求めるノルウェーなど、北極海沿岸の国々が入り乱れて開発に挑む。

毎年夏大発生するアオコによって汚染された諏訪湖を浄化しようとする市民運動が、湖の浄化に成功した西ドイツの成功例を参考に「泳げる湖」の復活に取り組んでいる。運動の推移を紹介、新たな対策を提案する。◆アオコの発生は昭和４０年ごろに始まった。ヨシの撤去作業や湖底のしゅんせつ、下水道の整備や周辺企業の浄化設備の導入など様々な対策が取られ水質は回復し始めたが、もとの諏訪湖には戻らない。同じように汚染に悩まされたが自然を回復した西ドイツに学ぼうと専門家を招いてセミナーが開かれたのをきっかけに、「諏訪環境まちづくり懇談会」が結成された。治水機能と水辺環境の保全を両立する護岸工法などその実例を学びに西ドイツを訪問する。

人の心の中にある恐れ、おびえ。それらが形になって現われた闇の住人、妖怪。やがてそれは幽霊などに変化する。◆日本人は世界にまれなほど多くの妖怪画を残している。仏教思想と結び付いた六道絵、百鬼夜行の図柄。各地に残る妖怪絵巻や浮世絵師によって描かれた化物たちの、怪奇にしてユーモラスな姿態・行動の数々を探る。そしてこれらを時代の変わり目や世相の混迷が投影された風俗、また人類の思想史として考える。◆【国宝】六道絵〔聖衆来迎寺〕◆【重要文化財】大江山絵詞〔逸翁美術館〕、土蜘蛛草紙〔東京国立博物館〕、百鬼夜行絵巻〔大徳寺〕、百鬼夜行絵巻〔松井文庫〕